『文章を書く』ことの苦手を好きにかえる

「文章を書くことがストレスです」
「文章を書くことが苦手で……」
「文章を書くのに時間がかかります」

そんな「文章アレルギー」の人は多いのではないでしょうか? しかし、文章を書けるかどうかは、仕事の成果や周囲の評価に大きく関わります。

そんな文章に関する「困った」にやさしく応えてくれるのが、『そもそも文章ってどう書けばいいんですか?』を著書にもつ、山口拓朗さんです。

この連載では、これまでライターとして3000件以上の取材・インタビューを経験した中から導き出した、「書くことが嫌い」を「書くことが好き」へと変える、文章作成のコツを教えてもらいます。

著者プロフィール

山口拓朗(やまぐち・たくろう)

伝える力【話す・書く】研究所主宰。出版社で編集者・記者を務めたのちに独立。これまでライターとして3000件以上の取材・執筆歴を誇る。現在は執筆活動に加え、講演や研修を通じて、「書かずにうまくなる段取り文章術」「論理的に伝わる文章の書き方」「好意と信頼を獲得するメール文章術」「すらすら書ける文章テンプレート活用法」等、その日から使える実践的ノウハウを提供。また、2016年より中国の5大都市で「SuperWriter養成講座」を定期開催中。

著書に『そもそも文章ってどう書けばいいんですか?』『何を書けばいいかわからない人のための「うまく」「はやく」書ける文章術』(共に日本実業出版社)ほか多数。文章作成の本質をとらえたノウハウは言語の壁を超えて高く評価されており、中国、台湾、韓国など海外でも翻訳されている。

人間関係を壊してしまう!? 残念なメール2パターン

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2019/02/06 16:52

(photo by FineGraphics/photoAC)

一生モノのスキルになる! 『文章を書く』ことの苦手を好きにかえる方法<連載第12回>

伝える力【話す・書く】研究所を主宰し、「文章の書き方」に関する著書も多い山口拓朗さんに書き方のコツを教わります。今回はコミュニケーションツールとしての文章作成のコツについて。

相手の表情が見えないメールは誤解を招きやすい

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私たちは言葉(言語)だけでコミュニケーションを図っているわけではありません。意識する・しないにかかわらず、言葉以外の「非言語情報」を使いながら、相手との関係性を築いています。

通常、対面であれば、お互いの表情や態度、声色などを感じながら、コミュニケーションを図ります。誤解や行き違いが生じたと感じたら、その場で言い換えたり、補足情報を伝えたりすることで、誤解や行き違いを防ぐことができます。

一方、メールでのコミュニケーションの場合、お互いの表情をはじめとする「非言語情報」によるコミュニケーションが一切行えません。そうなると、文章を書く上で誤解を招かないよう、より細かい気遣いや心配りが必要となります。

メールを書く時に、このような“難しいコミュニケーション”であるという意識が抜け落ちてしまった場合、思いもよらぬディスコミュニケーション(相互不理解)が発生してしまい、人間関係を壊すことさえありえます。今回はそうした「残念なパターン」を2つご紹介します。

パターン1:素っ気ないメールで相手の心証を害する

ディスコミュニケーションを生むひとつめのパターンが「素っ気ないメール」です。メールの場合、書き手に悪気がなくても、文字情報のみのやり取りとなるため、どうしても「素っ気ない」と受け取られやすくなります。とくに「そんなのはダメです」のように、言い切り型の言葉を使いがちな人や、敬意を示すのが苦手な人は注意しましょう。

【×】 ○○は、まだですか?
【○】 ○○は、いかがでしょうか。

【×】 それは無理です。
【○】 ご希望に添えず、私どもも大変残念です。

【×】 必ず○○しておいてください。
【○】 ○○していただけると助かります。

【×】 ○○を忘れてました。
【○】 大変失礼いたしました。○○を失念しておりました。

このように、少し配慮するだけでも、文面の印象が大きく変わります。

なお、「まだですか?」と比較した「いかがでしょうか。」にはクエスチョンマーク(「?」)が入っていません。「?」を使うと、相手を責めるような、少し冷たい印象の文面になりがちです。相手が“納期破りの常習犯”であるなど、 相手をキツく問いただす意図がないときは、できる限り「?」の使用を控えましょう。

パターン2:感情任せのメールで相手の怒りを買う

仕事をしていると、ついカッとなってしまうこともあります。しかし、相手との信頼関係を壊したくないのであれば、たとえカッとなったときでも、感情的なメールを書いてはいけません。冷静に事実を伝えることに注力しましょう。

【×】 
>バナーのロゴが寂しい気がします。
>もう少し派手さを出していただけると助かります。

背景色が派手なので、ロゴを派手にしすぎると、見にくくなりますよ? 
それに、打ち合わせのときに「シンプル系」でいく旨はお伝えしたはずです。
今さら覆されても困ります。

【○】 
>バナーのロゴが寂しい気がします。
>もう少し派手さを出していただけると助かります。

ご意向に添えておらず、申し訳ございませんでした。
背景色とのメリハリを考えると、ほどよいバランスかと思いますが、
バナーの機能性を損ねない程度に、もう少し派手さを出してみます。
作り直しますので、16時までお時間いただけますか。
よろしくお願いいたします。

カッとなる気持ちはわかりますが、「×」の例文のように感情的なメールを送ってしまうと、相手との関係性が悪化する恐れがあります。人によっては「なんだ、この人の態度は。もう二度と頼まない」と思う人もいるかもしれません。

仕事のメールでは、よほどのことがない限りキレてはいけません。相手がお得意様(お客様やクライアント)であればなおのこと。もしも頭に血が上ったときは、すぐ返信するのではなく、頭が冷えるまで少し時間を置きましょう。

もちろん、「冷静に事実を伝えること」と「自分の意見を言わない」ことは似て非なるもの。完全服従型のやり取りもまたディスコミュニケーションです。社会人に求められるのは、自分の意見や主張、アイデア、助言などを、相手の気持ちを害さないよう、慎重かつ冷静に伝える能力です。

「メール=難しいコミュニケーションツール」という自覚をもとう

「○○さんて、ふだんはとても気さくでいい人なのに、メールになると、とたんに怖く(冷たく)感じられる」。そんな話をよく耳にします。多くの場合、そう思われてしまっている人に悪気はないのでしょう。メールでのやり取りが「非言語情報」を封じられた“難しいコミュニケーション”であることに気づいていないだけです(それが残念なことなのですが)。

逆にいえば、私たちがメールを書く側に立ったときには「非言語が使えない分、より慎重に言葉を紡ごう」という意識をもつ必要があります。素っ気ないメールや、感情任せのメールを書いて損をするのは、メールを書いた人自身であることを肝に銘じておきましょう。

もっとも、コミュニケーションは相手との関係性によって変化するものです。「とりあえず丁寧にしておけばいい」という考え方もまた危険です。コミュニケーション上手は仕事上手。とりわけメールは、現代ビジネスシーンにおいて重要なコミュニケーションツールです。

いつでも相手の立場や性格、現時点での自分との関係性などを意識しながら、その都度、最適な言葉や表現を選ぶようにしましょう。

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そもそも文章ってどう書けばいいんですか?

「文章を書くことがストレス」「書くのに時間がかかりすぎる」「そもそも頭のなかにあることを文章にできない」……本書はそうした「文章アレルギー」のある人たちに、マンガを織り交ぜながら、わかりやすく文章の書き方をレクチャーしていきます。

著者:山口拓朗

価格:¥1,400-(税別)

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