『文章を書く』ことの苦手を好きにかえる

「文章を書くことがストレスです」
「文章を書くことが苦手で……」
「文章を書くのに時間がかかります」

そんな「文章アレルギー」の人は多いのではないでしょうか? しかし、文章を書けるかどうかは、仕事の成果や周囲の評価に大きく関わります。

そんな文章に関する「困った」にやさしく応えてくれるのが、『そもそも文章ってどう書けばいいんですか?』を著書にもつ、山口拓朗さんです。

この連載では、これまでライターとして3000件以上の取材・インタビューを経験した中から導き出した、「書くことが嫌い」を「書くことが好き」へと変える、文章作成のコツを教えてもらいます。

著者プロフィール

山口拓朗(やまぐち・たくろう)

伝える力【話す・書く】研究所主宰。出版社で編集者・記者を務めたのちに独立。これまでライターとして3000件以上の取材・執筆歴を誇る。現在は執筆活動に加え、講演や研修を通じて、「書かずにうまくなる段取り文章術」「論理的に伝わる文章の書き方」「好意と信頼を獲得するメール文章術」「すらすら書ける文章テンプレート活用法」等、その日から使える実践的ノウハウを提供。また、2016年より中国の5大都市で「SuperWriter養成講座」を定期開催中。

著書に『そもそも文章ってどう書けばいいんですか?』『何を書けばいいかわからない人のための「うまく」「はやく」書ける文章術』(共に日本実業出版社)ほか多数。文章作成の本質をとらえたノウハウは言語の壁を超えて高く評価されており、中国、台湾、韓国など海外でも翻訳されている。

「自己重要感」と「ベネフィット」のない文章では、相手は動かない

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2018/07/18 16:03

(photo by はむぱん/photoAC)

一生モノのスキルになる! 『文章を書く』ことの苦手を好きにかえる方法<連載第4回>

伝える力【話す・書く】研究所を主宰し、「文章の書き方」に関する著書も多い山口拓朗さんに書き方のコツを教わります。今回は「自己重要感」と「ベネフィット」のふたつの工夫で、「相手からイエスを引き出す文章」を書く方法について。

文章のゴールは、読む人から「イエス」をもらうこと

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私たちが仕事で書く文章には、何かしらの目的があります。その目的を達成しやすくするためには、読む人が、(書き手の望み通りに)行動したくなる“言葉がけ”をする必要があります。

一例を挙げましょう。あなたが、同僚から仕事の手伝いを頼まれたとします。以下のメール1と2のどちらの依頼文に「イエス」と返事したくなりますか?

【メール1】
渡辺さん、すみません、○○プロジェクトの進行でテンパってしまいました。少し仕事を手伝ってもらえませんか?

【メール2】
渡辺さん、恥ずかしながら、○○プロジェクトの進行がうまくいっていません。つきましては、プロジェクトの経験が豊富な渡辺さんのお力を拝借したく、ご連絡差し上げました。お忙しいところ申し訳ございませんが、一度相談に乗ってもらえませんでしょうか。

あなたが渡辺さんだった場合、「イエス」の返信をしたくなるのはメール2ではないでしょうか。メール1は<忙しくて手が回らないから、何でもいいから(誰でもいいから)手伝ってくれ>と言わんばかりの書き方です。人を単なる“頭数”としか考えていないような印象を受けます。言葉遣いにも敬意が感じられず、謙虚な姿勢もうかがえません。

一方、メール2の場合、自分(=渡辺さん)のことを必要としている気持ちが伝わってきます。また、「プロジェクトの経験が豊富な〜」の文面は、言われて悪い気がするものではありません。<自分のことを高く評価してくれていることだし、必要としてくれているなら一肌脱いでもいいか>という気持ちになるのではないでしょうか。言葉遣いも丁寧ですし、謙虚な姿勢も文面ににじみ出ています。

このように、同じ“お願い事”でも、言い方を工夫するのとしないのとでは、相手に与える印象はもちろん、得られる結果にも大きな差が生じます。つまり、書き方の差は、そのまま仕事の成果の差に置き換えられるのです。

自己重要感=相手の価値を認めていることを伝える

特筆すべきは、メール2に読む人の「自己重要感」を高めるフレーズが盛り込まれている点にあります。「自己重要感」とは、平たくいえば「自分は価値ある存在である」と感じる気持ちのこと。心理学の見地からも、相手の自己重要感を満たしてあげることが、円滑なコミュニケーションを図るうえで有効とされています。

逆に、「相手に軽く見られている」「相手にあまり評価されていない」と感じたとき(=「自己重要感」を満たしてもらえないとき)、人はその相手に対して「否定」「反抗」「無視」などの行為を取りがちです。それが依頼を受ける場面であれば、快諾はおろか、何かしらの理由をつけて断ろうと考える人もいるはずです。

こと仕事のシチュエーションで、相手の気分を損ねて得することなど何もありません。とくにお願い(依頼)をする文章を書くときには、何はともあれ、相手の気分を損ねない書き方をしなければいけません。それどころか、相手の気分をできる限りよくして、快く「イエス」の返事をもらうことが、書き手に課せられたノルマではないでしょうか。

「ベネフィット」がなければ、興味をもたれない

さて、「自己重要感」と同様に、文章を書くときに意識しておきたいキーワードが「ベネフィット」です。ベネフィットとはマーケティング用語で「あるお客さんが、その商品(サービス)から得られる恩恵や利益のこと」を指します。ここでは、対象を消費者に限定せず、もう少し広義に「文章を読む人が得られる恩恵や利益」と考えて話を進めます。

たとえば、あなたがお客様に営業レターを書くとします。あなたがお客様だった場合、以下の1〜3のどのレターに興味をもちますか。

【レター1】
このシステムは弊社が全幅の信頼を寄せるA社と共同開発したものです。その操作性と機能性、そして、得られる効果には絶対の自信をもっています。

【レター2】
このシステムを導入することによって、社員一人あたりの月の残業時間を平均で15時間短縮することができます。その結果、一営業所で年間約1,200万円のコストカットが実現できるでしょう。

【レター3】
開発期間に5年を費やしたこのシステムが、今後、業界のスタンダードになることは間違いありません。いち早く導入することをおすすめします。

おそらく興味をもつのはレター2ではないでしょうか。「社員一人あたりの月の残業時間を平均15時間短縮」「一営業所で年間約1,200万円のコストカット」という具体的なベネフィットが盛り込まれているからです。

一方、レター1と3は、お客様の興味や関心を引くベネフィットが書かれていません。書かれていることは自慢話の類や、お客様が興味や関心をもちそうにない情報ばかりです。

・弊社が全幅の信頼を寄せるA社と共同開発したものです
 →【読む人の気持ち】それが何か? A社って……よく知らないし。

・その操作性と機能性、そして、得られる効果には絶対の自信をもっています
 →【読む人の気持ち】操作性や機能性ってどんな? 得られる効果って何? そこが知りたいんだけど……。

・開発期間に5年を費やしたこのシステムが、今後、業界のスタンダードになることは間違いありません
 →【読む人の気持ち】ふーん、だから何か?

・いち早く導入することをおすすめします
 →【読む人の気持ち】そう言われても、導入するメリットがよくわからないんですけど……。

レター1や3のように「自慢話」や「余計な背景説明」「読む人に無関係な話」「読む人の興味・関心からずれた話」ばかりの文章では、人の心を動かすことはできません。読む人は「自分(自社)にとってどんないいことがあるか?」ということにしか興味・関心がないからです。

これは、営業レターに限った話ではありません。とくに企画書や提案書、販促・集客目的の文章など“達成したい目的が明確な文章”では、読む人が得られる恩恵や利益、つまり、ベネフィットを盛り込む必要があります。そのベネフィットが魅力的であればあるほど、読む人が「採用したい」「欲しい」「買いたい」と思う確率が高まります。

「自己重要感」と「ベネフィット」の二大ウェポンを意識しよう

「自己重要感」と「ベネフィット」。このふたつは、読む人の心を動かす際の二大ウェポン(武器)です。このふたつを意識して文章を書けるようになると、読む人が興味・関心をもつ確率が飛躍的に高まり、仕事の成果につながりやすくなります。

少なくとも<書きたいことを書いている>だけでは、読む人の心を動かすことはできません。(書き手の望み通りに)読む人に動いてもらいたければ、「自己重要感を満たす“言葉がけ”」と「相手が喜ぶベネフィット」を意識して盛り込みましょう。

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そもそも文章ってどう書けばいいんですか?

「文章を書くことがストレス」「書くのに時間がかかりすぎる」「そもそも頭のなかにあることを文章にできない」……本書はそうした「文章アレルギー」のある人たちに、マンガを織り交ぜながら、わかりやすく文章の書き方をレクチャーしていきます。

著者:山口拓朗

価格:¥1,400-(税別)

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弊社営業部(TEL:03-3268-5161)までお問い合わせください。

何を書けばいいかわからない人のための「うまく」「はやく」書ける文章術

仕事で使う実務的な文章からインターネット上のHPや販売ページの文章、Facebookやブログの投稿記事まで、文章を「うまく」「はやく」書きたい人を救います。5つのSTPEに分けて、あらゆるシーンでの「文章」をスラスラ書けるようになる1冊です。

著者:山口拓朗

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