『文章を書く』ことの苦手を好きにかえる

「文章を書くことがストレスです」
「文章を書くことが苦手で……」
「文章を書くのに時間がかかります」

そんな「文章アレルギー」の人は多いのではないでしょうか? しかし、文章を書けるかどうかは、仕事の成果や周囲の評価に大きく関わります。

そんな文章に関する「困った」にやさしく応えてくれるのが、『そもそも文章ってどう書けばいいんですか?』を著書にもつ、山口拓朗さんです。

この連載では、これまでライターとして3000件以上の取材・インタビューを経験した中から導き出した、「書くことが嫌い」を「書くことが好き」へと変える、文章作成のコツを教えてもらいます。

著者プロフィール

山口拓朗(やまぐち・たくろう)

伝える力【話す・書く】研究所主宰。出版社で編集者・記者を務めたのちに独立。これまでライターとして3000件以上の取材・執筆歴を誇る。現在は執筆活動に加え、講演や研修を通じて、「書かずにうまくなる段取り文章術」「論理的に伝わる文章の書き方」「好意と信頼を獲得するメール文章術」「すらすら書ける文章テンプレート活用法」等、その日から使える実践的ノウハウを提供。また、2016年より中国の5大都市で「SuperWriter養成講座」を定期開催中。

著書に『そもそも文章ってどう書けばいいんですか?』『何を書けばいいかわからない人のための「うまく」「はやく」書ける文章術』(共に日本実業出版社)ほか多数。文章作成の本質をとらえたノウハウは言語の壁を超えて高く評価されており、中国、台湾、韓国など海外でも翻訳されている。

手早く書ける! 「ビジネス文章」に使える万能テンプレート2種

このエントリーをはてなブックマークに追加

2018/08/01 16:57

(photo by akizou/photoAC)

一生モノのスキルになる! 『文章を書く』ことの苦手を好きにかえる方法<連載第5回>

伝える力【話す・書く】研究所を主宰し、「文章の書き方」に関する著書も多い山口拓朗さんに書き方のコツを教わります。今回は文章作成に役立つ「万能テンプレート」活用法について。

読みやすい文章には「型」がある

この連載の一覧はこちら

多くの人が「文章作成=創造性が必要」と考えているようです。たしかに、文章を作るときには創造性が欠かせません。

しかし、プロの物書きでさえ、まったくのゼロから創作しているわけではありません。意識するしないにかかわらず、いくつかのテンプレートを使い分けている人がほとんどです。

この場合のテンプレートとは、文章の展開や構成の型を指します。ベースとしてテンプレートを活用したうえで、彼らは創造性を発揮しているのです。

もちろん、テンプレートは物書きの専売特許ではありません。ビジネスパーソンであれば、ビジネス文章に適したテンプレートを使えばいいのです。そうすることで文章の読みやすさとわかりやすさが増し、それと同時に、文章作成にかかる時間も大幅に短縮できます。

そこで今回は、ビジネスシーンで重宝するふたつのテンプレートを紹介します。

「結論優先型」テンプレート

“まず結論を伝える”が基本となるビジネスシーンでは、「結論優先型」のテンプレートが重宝します。その名の通り、真っ先に結論を書く型です。以下の1→4の流れで書いてきます。

1. 結論
2. 理由
3. 具体例(詳細)
4. まとめ

【原文】

山田係長の営業力は、社内でも抜きん出ており、その実力を疑う人はいません。彼から手ほどきを受ければ、若手の営業力が底上げされることは間違いありません。私の目から見ても、基本的なマナーからセールスのテクニックまで、山田流営業戦術には学ぶべき点が多々あります。したがって、営業部の若手教育係に山田係長を指名します。


この文章で最も重要なパートは「営業部の若手教育係に山田係長を指名します」です。何はさておきこの結論を伝える必要があります。

ところが、原文では、冒頭からしばらくの間、その結論に至る経緯や根拠が書かれています。読んでいて「くどいなあ」と感じる人や、「結局何が言いたいの?」と途中で口を挟みたくなった人もいるはずです。

【修正文】

営業部の若手教育係に山田係長を指名します。【←1. 結論】なぜなら、山田係長の営業力は、社内でも抜きん出ているからです。その実力を疑う人はいません。【←2. 理由】私の目から見ても、基本的なマナーからセールスのテクニックまで、山田流営業戦術には学ぶべき点が多々あります。【←3. 具体例】山田係長から手ほどきを受ければ、若手の営業力が底上げされるとは間違いありません。【←4. まとめ】

真っ先に結論を示したこの修正文であれば、負担なく内容を理解できるはずです。

冒頭で「営業部の若手教育係に山田係長を指名する」という結論を伝えることによって、その後に続く文章も、頭に入りやすくなりました。「2. 理由→3. 具体例」と読み進めるうちに説得力が高まっていく点も、結論優先型の大きな特徴といえるでしょう。

真っ先に結論を書く「結論優先型」は、書き手にとっても“書きやすいテンプレート”といえます。なぜなら、文章の大枠となる結論を先に書くことで、文章に“核”ができるからです。

あとは、その“核”から意識を逸らさずに「2. 理由→3. 具体例」と内容を深めていけばいいのです。文章が脱線しがちな方や、支離滅裂になりがちな方は、結論優先型を使うことで、「理解しにくい文章」が大幅に改善されるでしょう。

「列挙型」テンプレート

ビジネスシーンでは、複数ある情報を文章で伝えなければいけない場面も多々あります。その際に役立つのが「列挙型」のテンプレートです。以下の1→4の流れで書いてきます。

1. 全貌
2. 列挙1
3. 列挙2
4. 列挙3
5. まとめ


列挙する数は伝えるべき情報の内容によって変化します。以下は、取り引き先に送った「会議のリマインドメール」です。

【原文】

来週8日(金)の会議、よろしくお願いいたします。
10時に弊社会議室でお待ちしております。
また、その際に見積書と最新カタログをお持ちいただけますでしょうか。
それと、商品Aの分析データの資料もお持ちください。
そうそう、先日お預けした展示会の商品配置図も、
あわせてお持ちいただけると助かります。
お手数をおかけいたしますが、どうぞよろしくお願いいたします。


このメールを書いた本人に悪気はないはずです。しかし、お世辞にも“親切なメール”とはいえません。

相手に持ってきてもらいた物は「見積書」「最新カタログ」「商品Aの分析資料」「展示会の商品配置図」の4点です。ところが、この原文では、それらの持ち物が、文中に雑然と盛り込まれています。

仮にメール受信者が忙しい人だった場合(あるいは、そそっかしい人だった場合)、いくつかの持ち物を見落としてしまう恐れもあります。

これを読んだ相手が忘れ物をした場合、それはいったい誰の責任でしょうか? 「文面をしっかり読まなかった相手の責任」と考えているうちは、その人の文章上達は見込めません。

相手が情報を見落としたということは、見落とされるような書き方をした書き手に責任があるのです。そう、伝わらない文章の責任は、いつでも書き手側にあるのです。この厳しい前提に立つことが、伝わる文章の書き手になるための必須条件です。

では、どのような書き方をすれば、より正確に情報を伝えることができたでしょうか。以下は列挙型のテンプレートを使った修正文です。

【修正文】

来週8日(金)の会議、よろしくお願いいたします。
10時に弊社会議室でお待ちしております。

当日は、下記4点をお持ちいただけますでしょうか。【←1. 全貌】

1:見積書         【←2. 列挙1】
2:最新カタログ      【←3. 列挙2】
3:商品Aの分析データの資料【←4. 列挙3】
4:展示会の商品配置図   【←5. 列挙4】

以上です。

お手数をおかけいたしますが、どうぞよろしくお願いいたします。【←6. まとめ】


この修正文であれば、読む人が持ち物を忘れるリスクは減ります。

ポイントは<1. 全貌>で「当日は、下記4点をお持ちいただけますでしょうか」と伝えている点です。「なるほど、持ち物は4つあるのね」と理解した読み手は、その続きを安心して読み進めることができます。

<2. 列挙1>以降は、持ち物を列挙していけばOKです。見た目も読みやすいこの列挙型であれば、読む人が必死に文面から情報を拾い集める手間も省けます。読む人に親切な文章といえるでしょう。

なお、列挙型のテンプレートを使うときには、「1. 全貌」のパートで、この文章の全体像を簡潔に示すことが肝心です。この際、「○○のポイントは5つあります」「○○のメリットを3つお伝えします」「6つの○○を説明します」という具合に、列挙する事柄とその数を書いておくと、読む人が文章の全体像を把握しやすくなります。もちろん、その後に続く文章の内容も頭に入りやすくなります。

ビジネス文章は伝わらなければトラブルの元に

仕事で使うメールやビジネス文章では「わかりやすく理解しやすい書き方」が求められます。読む人に伝わらない文章や理解しにくい文章を書けば、誤読や誤解を招きやすくなるほか、運が悪ければ、ミスやトラブルが発生し、結果的に書き手自身の評価を落としてしまうかもしれません。

さまざまにある文章テンプレートなかでも「結論優先型」と「列挙型」は、文章の種類を問わずに使える万能系のテンプレートです。あらかじめ流れ(=展開)が決まっているので、文章作成にかかる時間も減らすことができます。積極的に使って自分のものにしていきましょう。

このエントリーをはてなブックマークに追加

そもそも文章ってどう書けばいいんですか?

「文章を書くことがストレス」「書くのに時間がかかりすぎる」「そもそも頭のなかにあることを文章にできない」……本書はそうした「文章アレルギー」のある人たちに、マンガを織り交ぜながら、わかりやすく文章の書き方をレクチャーしていきます。

著者:山口拓朗

価格:¥1,400-(税別)

オンラインストアで購入する

テキスト採用など、大量・一括購入に関するご質問・ご注文は、
弊社営業部(TEL:03-3268-5161)までお問い合わせください。

ページのトップへ