『文章を書く』ことの苦手を好きにかえる

「文章を書くことがストレスです」
「文章を書くことが苦手で……」
「文章を書くのに時間がかかります」

そんな「文章アレルギー」の人は多いのではないでしょうか? しかし、文章を書けるかどうかは、仕事の成果や周囲の評価に大きく関わります。

そんな文章に関する「困った」にやさしく応えてくれるのが、『そもそも文章ってどう書けばいいんですか?』を著書にもつ、山口拓朗さんです。

この連載では、これまでライターとして3000件以上の取材・インタビューを経験した中から導き出した、「書くことが嫌い」を「書くことが好き」へと変える、文章作成のコツを教えてもらいます。

著者プロフィール

山口拓朗(やまぐち・たくろう)

伝える力【話す・書く】研究所主宰。出版社で編集者・記者を務めたのちに独立。これまでライターとして3000件以上の取材・執筆歴を誇る。現在は執筆活動に加え、講演や研修を通じて、「書かずにうまくなる段取り文章術」「論理的に伝わる文章の書き方」「好意と信頼を獲得するメール文章術」「すらすら書ける文章テンプレート活用法」等、その日から使える実践的ノウハウを提供。また、2016年より中国の5大都市で「SuperWriter養成講座」を定期開催中。

著書に『そもそも文章ってどう書けばいいんですか?』『何を書けばいいかわからない人のための「うまく」「はやく」書ける文章術』(共に日本実業出版社)ほか多数。文章作成の本質をとらえたノウハウは言語の壁を超えて高く評価されており、中国、台湾、韓国など海外でも翻訳されている。

「事実」と「意見」が混同した文章は、なぜヤバいのか?

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2018/10/03 17:11

(photo by Hades/photoAC)

一生モノのスキルになる! 『文章を書く』ことの苦手を好きにかえる方法<連載第8回>

伝える力【話す・書く】研究所を主宰し、「文章の書き方」に関する著書も多い山口拓朗さんに書き方のコツを教わります。今回は文章を書くときに起こりがちな、「事実」と「意見」の混同について。

「意見」を「事実」として書くのは、大問題

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あなたは「事実」と「意見」を混同していませんか? ことビジネスシーンにおいて、文章を書くときに「事実」と「意見」を明確に線引きすることは極めて重要です。両者を混同すると、読む人に「いい加減(悪い意味で)」「不正確」「ウソつき」と思われる恐れがあります。混同をくり返せば、信用を落としたり、不信を買うこともあります。

以下は「事実」と「意見」の違いです。

【事実】
・本当にあった
・現実に存在する
・調査・実験・検証などで必ず確認できる
・世の中の多くの人が「そう」だと認識している
・「正しいor 正しくないか」のどちらか

【意見】
・自分の考え(憶測も含む)
・自分の判断
・調査・実験・検証などで確認できないものもある
・世の中の多くの人が「そう」だとは認識していない
・「正しいor 正しくないか」を決められないこともある

文章を書くときには、いつでも、書いている事柄や物事が「事実」か「意見」かを冷静に見極める必要があります。

理由を明確に書くことで、「事実」と「意見」をはっきりさせる

その革靴は2万円と安かった。

この文章に疑問をもった人は、おそらく「事実」と「意見」の境界線が見えている人でしょう。「革靴が2万円」だったのは、紛れもない事実でしょう。一方で、それが「安い」かどうかは書き手の主観的な評価・判断にすぎません。

2万円という価格を安いと感じる人もいるかもしれませんが、高いと感じる人もいるでしょう。それにもかかわらず、まるで「革靴2万円=安い」が事実であるかのような書き方をしています(多くの人が革靴を「安い」と感じるのは3000〜5000円程度でしょうか?)。 

「事実」と「意見」の違いに敏感な人のなかには、この文章を読んだときに「デタラメだ」と感じる人もいるかもしれません。最悪、「この人は自分の意見を、あたかも事実のように書く信用ならない人だ」と思われてしまう恐れもあります。「事実」と「意見」を混同して書くことは、読む人にとってはもちろん、書き手自身にとっても大きなリスクなのです。

では、この文章をどう修正すれば、「事実」と「意見」の混同を避けることができるでしょうか。

【修正文1】
そのリーガルの革靴は2万円だった。リーガルの相場からすると安かった。

【修正文2】
その革靴は2万円だった。私が愛用している革靴のなかでは安いほうだ。

【修正文3】
その革靴は2万円だった。安いと思った。

修正文1〜3にも「安い」という言葉は使われていますが、それと同時にその理由も明確にしています。

・リーガルの相場からすると安かった。→ブランドの相場を調べたのであれば事実
・私が愛用している革靴のなかでは安いほうだ。→体験として事実
・安いと思った。→「思った」と書いてあるので意見

このように、事実は事実、意見は意見として、それぞれ明確に分けて書くことによって読む人が理解・納得しやすい文章になります。

「意見を事実だと思い込むクセ」を直すには……

「事実」と「意見」を混同した書き方は、ときに読者をミスリード(誤解させること)する役割を果たします。これをあえてテクニックとして悪用する人もいますが、そんなテクニックに溺れれば、いずれ、その人は信用を失うことになるでしょう。ビジネスシーンで書く文章で大事なのは、読む人の誤解を招くことなく、事実は事実として、意見は意見として、それぞれ正しく伝えることです。

「事実」と「意見」を混同した例をご紹介しましょう。

残業の多い会社に勤めるかわいそうな彼は〜
※「かわいそう」かどうかはわかりません。【書き手の主観・憶測が強い】

誰からも愛されている東野圭吾の小説は〜
※「誰からも」というわけではありません。【一般化しすぎ】

スティーブ・ジョブズはアメリカ史上最も偉大な経営者である。
※「アメリカ史上最も偉大」と言われると同意し難い人もいるでしょう。【書き手の主観・憶測が強い】

日本は島国ゆえ日本人は魚料理が大好物だ。
※「島国ゆえ」という根拠に疑問が残ります。そもそも「日本人は魚料理が大好物だ」と言い切るのも少し乱暴です。【書き手の主観・憶測が強い】 

上記は、あたかも事実であるかのように意見を語った文章です。ミスリードを誘うやり口もよくありませんが、書き手自身が「意見を事実だと思い込んでいるケース」もやっかいです。本人が無自覚だとしたら、そのクセを直しようがないからです。

「意見を事実だと思い込むクセ」を直すためには、書き手自身が「事実と意見の区別ができていないこと」に気づく必要があります。自覚することができれば、治すことも難しくはありません(「事実」と「意見」を分けて考える意識が芽生えるため)。この記事が、その自覚を促す一助になれば幸いです。

もっとも、「事実」と「意見」が一緒くたになった文章は、世の中に掃いて捨てるほどあります。それらのなかには、書き手が意図して書いたものもあれば、そうでないものもあります。したがって、読む側は、その文章を読みながら、冷静に「何が事実で何が意見なのか」を見極めていく必要があります。そうした眼力を磨くことによって、自分が文章を書くときに「事実」と「意見」を上手に書き分ける能力も磨かれていきます。

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そもそも文章ってどう書けばいいんですか?

「文章を書くことがストレス」「書くのに時間がかかりすぎる」「そもそも頭のなかにあることを文章にできない」……本書はそうした「文章アレルギー」のある人たちに、マンガを織り交ぜながら、わかりやすく文章の書き方をレクチャーしていきます。

著者:山口拓朗

価格:¥1,400-(税別)

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