まずは「仕掛かり中」にすることが大事

もう1つのテクニックとして、「ベビーステップ」をおすすめします。皆さんにも想像がつく通り、赤ちゃんの1歩のように小さくてもいいから踏み出す、ということですが、意外なほどに大きな効果を発揮します。

具体的にどうするか。私自身の方法を例に説明します。

クライアント様から講演の依頼を受けると、まずは資料作りをしなければなりません。テーマによっては難しく、気が重いときもありますが、そんなときはいつもベビーステップから入ります。

私は常にB5サイズの小さなノートをバッグに入れています。このノートに、ほとんどの場合移動中に、講演のタイトルから書き出していきます。作業時間は、あえて15分間に限定します。なぜかというと、「まず、取りかかること」をターゲットにしているからです。「このタイミングで、ここまではやっておかないといけない」というようなことは考えません。着手に対する心理的なハードルを下げて、プロセスに集中するためです。

タイトルを書いたら、想像できる話の内容とスライドの流れを書いていきます。そうすると、最初は見えなかった講演の大枠が、書き出すことによって少しずつ見えてきます。15分という時間でも、集中すれば意外に多くのことが考えられます。

これが私のベビーステップです。ベビーステップでも着手さえすれば、「慣性の法則」のように、仕事を動かすのにそれほど力はいりません。

その後はPCを使って、専用のフォルダを1つ作り、必要な資料をコピペして放り込んでいきます。そしてとりあえず、フォントなどは不揃いで粗くていいから、ファイルの編集にとりかかります。このときはもう、作業を進める勢いがついています。

このように、どんな仕事でもまずはベビーステップで「仕掛かり中」にすることが大事なのです。動き出してしまえば、モチベーションは後からついてきますから。

とにかく、少しだけでいいからまず一歩踏み出す。その歩幅は、気が重いとか面倒くさいとか感じるまでもないような、ごく狭いものでいいのです。未着手の状態より、よほど前に進みやすくなります。

「ちょっとだけ動かして、仕掛かり中にする」。これがベビーステップの極意です。チャンクダウンとあわせて、試してみてください。

「先延ばしグセ」の改善に、少しでもお役に立てたらうれしいです。

(次回は9月5日月曜日に公開予定)


プロフィール

古川武士(ふるかわ たけし)

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習慣化コンサルティング株式会社、代表取締役。関西大学卒業後、日立製作所などを経て2006年に独立。3万人のビジネスパーソンの育成と500名の個人コンサルティングの現場から「習慣化」が最も重要なテーマと考え、日本で唯一の習慣化をテーマにしたコンサルティング会社を設立。オリジナルの習慣化理論・技術を元に、個人向け習慣化専門学校、講座、企業への行動変容・習慣化の指導を行っている。

主な著書に、『30日で人生を変える「続ける」習慣』『新しい自分に生まれ変わる「やめる」習慣』『マンガでわかる 「続ける」習慣』『マンガでわかる「やめる」習慣』(以上、日本実業出版社)、『「早起き」の技術』(大和書房)などがあり、中国・韓国・台湾でも広く翻訳されている。