時間簿をつけることで、たとえば「1時間に1度以上メールチェックしてその都度対応している」という非効率に気づくことができれば、改善すべき対象が判断できます。それをふまえて、「午前と午後2回ずつにして、まとまった時間で対応しよう」などの改善策が取れるわけです。

したがって、時間簿を振り返ることが、そのままCheckとActになるといえます。

Check(評価)とAct(改善)

とはいえ、私たちは一般的に「振り返り」が苦手です。苦手というか、続きません。PDCAを回そうとしても、時間がたつとDoで止まってしまうのは珍しいことではありません。ただし、これには理由があるのです。

それは、「振り返り」といっても、そもそも振り返る項目が具体的に決まっていないからです。決まっていないのに抽象的に「振り返りましょう」と呼びかけても、何をどう振り返っていいのかがわからないからできないのです。

これを解決するために、「振り返り」には「KTP」という枠組みを用います。KTPはプロジェクト・マネジメントから出てきた概念で、シンプルかつ効果的で、無理なく続けることができる優れたフレームワークです。

K=Keep(よかったこと・このまま続けること)
P=Problem(問題だったこと・改善すべきこと)
T=Try(次回挑戦すること)

振り返るのは、この3つだけです。これ以外に項目を並べ立てるのは、本質を外しているといえます。枝葉末節にこだわると、義務感のほうが大きくなり、続けることができなくなります。

具体的には、下のような簡単なワークシートに毎日書いていきます。たくさん書こうとすると心理的に負担になるので、1行でかまいません。

KPT

たとえばK欄には、「朝8時に出社して8時10分から業務に取りかかることができた」とか「メールチェックを午前と午後2回ずつまでにすることができた」などと入れていきます。些細なことでも書くことが大事です。

 P欄は、おそらく苦労せずに書けるでしょう。真面目な人ほど、反省点がたくさん浮かびますから。しかし、あれもダメだったこれもダメだったではモチベーションが続かないので、ここはあまりたくさん書き連ねないほうがいいかもしれませんね。

そしてTには、次の日どうするのか、どう改善するか、ということを記入します。

PDCAをムリなく習慣化する3つの秘訣

以上のような「計画~振り返り」を続けていけば、1日の高密度化が始まり、ムダな残業も減っていくはずです。

このサイクルを習慣化するための注意点として、以下の3点を付け加えておきます。

1つは、計画を立てることとKPTを、1日のどのタイミングでやり、何分で終わらせるかを明確に決めておくことです。たとえば朝、始業前に、前日のKPTを3分で書いて当日の計画を5分で立てる。合計8分、多めにいって10分あればできます。絶対に10分以上は時間をかけない、と決めておいてもいいでしょう。

もう1つは、上司と部下、あるいはチーム内で、KPTを使って1週間の仕事を振り返ることです。「前週の仕事はこうだったかから今週はこうしたい」ということを共有するわけです。

「報告」というプチ強制力も、「続ける」ことのモチベーションになります。私が主催する高密度化セミナーでも、受講者に「チャレンジシート」という週報を出してもらっていますが、非常に効果的です。

最後は、繰り返しになりますが、振り返るのはKPTだけです。本質を外した振り返りや報告は、義務感と苦痛を生み出すだけですから。

 (次回は8月22日月曜日に公開予定)


 プロフィール

古川武士(ふるかわ たけし)

photo2

習慣化コンサルティング株式会社、代表取締役。関西大学卒業後、日立製作所などを経て2006年に独立。3万人のビジネスパーソンの育成と500名の個人コンサルティングの現場から「習慣化」が最も重要なテーマと考え、日本で唯一の習慣化をテーマにしたコンサルティング会社を設立。オリジナルの習慣化理論・技術を元に、個人向け習慣化専門学校、講座、企業への行動変容・習慣化の指導を行っている。

主な著書に、『30日で人生を変える「続ける」習慣』『新しい自分に生まれ変わる「やめる」習慣』『マンガでわかる 「続ける」習慣』『マンガでわかる「やめる」習慣』(以上、日本実業出版社)、『「早起き」の技術』(大和書房)などがあり、中国・韓国・台湾でも広く翻訳されている。