『文章を書く』ことの苦手を好きにかえる

「文章を書くことがストレスです」
「文章を書くことが苦手で……」
「文章を書くのに時間がかかります」

そんな「文章アレルギー」の人は多いのではないでしょうか? しかし、文章を書けるかどうかは、仕事の成果や周囲の評価に大きく関わります。

そんな文章に関する「困った」にやさしく応えてくれるのが、『そもそも文章ってどう書けばいいんですか?』を著書にもつ、山口拓朗さんです。

この連載では、これまでライターとして3000件以上の取材・インタビューを経験した中から導き出した、「書くことが嫌い」を「書くことが好き」へと変える、文章作成のコツを教えてもらいます。

著者プロフィール

山口拓朗(やまぐち・たくろう)

伝える力【話す・書く】研究所主宰。出版社で編集者・記者を務めたのちに独立。これまでライターとして3000件以上の取材・執筆歴を誇る。現在は執筆活動に加え、講演や研修を通じて、「書かずにうまくなる段取り文章術」「論理的に伝わる文章の書き方」「好意と信頼を獲得するメール文章術」「すらすら書ける文章テンプレート活用法」等、その日から使える実践的ノウハウを提供。また、2016年より中国の5大都市で「SuperWriter養成講座」を定期開催中。

著書に『そもそも文章ってどう書けばいいんですか?』『何を書けばいいかわからない人のための「うまく」「はやく」書ける文章術』(共に日本実業出版社)ほか多数。文章作成の本質をとらえたノウハウは言語の壁を超えて高く評価されており、中国、台湾、韓国など海外でも翻訳されている。

「数字の魔法」で文章の説得力を高めよう!

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2019/11/06 16:59

(photo by紺色らいおん/写真AC)

一生モノのスキルになる! 『文章を書く』ことの苦手を好きにかえる方法<連載第21回>

伝える力【話す・書く】研究所を主宰し、「文章の書き方」に関する著書も多い山口拓朗さんに書き方のコツを教わります。今回は、グッとリアリティが増す「数字の使い方」について。

多くの人が自殺? 約25分26秒に1人のペースで自殺?

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読む人が納得する文章には、しばしば数字が使われています。数字を使うと、読む人の頭に具体的なイメージが浮かび上がりやすくなります。また、その数字を“どう使うか”によっても、文章の説得力や、読む人に与える印象が大きく変わります。

1. 日本では、1年間にかなりの人が自殺しています。
2. 日本では、1年間に2万840人が自殺しています。

1と2は同じ状況について書いた文章ですが、多くの人が1よりも2の文章に説得力を感じることでしょう。1の「かなりの人」という表現が漠然としすぎているのに対して、2の「1年間に2万840人」は具体的で、その多さがリアルにイメージできるからです。

しかし「1年間に約2万840人が自殺しています」という書き方がベストかといえば、そうとも言い切れません。たとえば、以下のような書き方はどうでしょう。

3. 日本では、1日に約57人が自殺しています。

おそらく、1年単位で伝えた2よりも、1日単位で伝えた3の文章のほうが、自殺者数の現実を実感できるのではないでしょうか。

4.日本では、約25分26秒に1人のペースで自殺が発生しています。

さらに工夫を凝らせば、4のような書き方もできます。「えっ、そんなに多いの?」と、改めてその数字が示す“問題の深刻さ”に気づく人もいるでしょう。もちろん、数字を使うかどうか(あるいは数字を“どう使うか”)は、その文章の目的に応じて決める必要があります。

具体的な数字やパーセンテージで示す 1:アンケート調査の結果報告

別の例文を見てみましょう。

1. 30代の女性200名にアンケート調査を実施したところ、多くの人に美白効果が認められました。

「多くの人」と言われても、さっぱりわかりません。半数を超えたら「多い」と思う人もいれば、7割、8割以上でなければ「多い」とは思わない人もいます。「多い」に対する認識が共通でない以上、データとしては使えません。

2. 30代の女性200名にアンケート調査を実施したところ、160人に美白効果が認められました。

「160人」と具体的に人数を示した2のほうが、1よりも説得力のある文章です。あるいは、次のような表現もできます。

3. 30代の女性200名にアンケート調査を実施したところ、その80%に美白効果が認められました。

人数ではなく、パーセンテージ(%)を用いました。「人数で示すのとパーセンテージで示すのでは、どちらが文章の目的を達成しやすいだろうか? 」そこまで考えることができたら及第点です。

具体的な数字やパーセンテージで示す 2:店舗の売り上げ増加の報告

もうひとつ例を見てみましょう。

1. 当店では前年よりもすばらしい売り上げを達成しました。

「すばらしい売り上げ」と言われても、どれくらいなのかが想像できず、読む人に不親切な文章です。あいまいな書き方ばかりしていると、“仕事がデキない人”“仕事ぶりがずさん”“人を煙に巻いている”などと思われて、信頼を落とす恐れもあります。

2.当店では前年比200%の売り上げを達成しました。

1よりは親切な文章です。「前年比200%」ということは、前年の倍の売り上げがあったということです。読む人に与えるインパクトも小さくありません。

一方で、「前年比200%」がものすごく具体的かといえば、そうともいえません。売り上げが「150万円→300万円」と「1500万円→3000万円」と「1億5000万円→3億円」では、規模が大きく違います。パーセンテージを用いた2の文章では、残念ながらその規模を推し量ることができません。

3.当店では前年比200%(1500万円→3000万円)の売り上げを達成しました。

規模までしっかりと伝える必要があるなら、3のようにパーセンテージに加えて、実際の金額も具体的に数字で示したほうがいいでしょう。

数字を使った文章で、仕事の生産性を高めよう

なお、数字で語れるデータは、プレゼン資料やセールス文章の「信憑性」や「信頼性」を高める役割も担っています。具体的な数字で示すことで「ほう、それはすごい!」と、納得感や安心感を強める人もいます。

【納得感や安心感を高める数字の使い方例】

1.  30代の主婦80名に1ヶ月間使用していただいたところ、「期待以上にダイエットできた」が66%、「ほぼ期待通りにダイエットできた」が22%、「期待通りではなかったがダイエットできた」が9%と、実に97%の方から「ダイエットできた」との回答をいただきました。

2.◯◯大学の学生60名に10日間に渡って△△を実践いただきました。すると、「睡眠が深くなった」と回答した人が80%(48人)にのぼりました。

このように具体的なデータ(数字)を盛り込むことによって、読む人の納得度が高まりやすくなります。その結果、プレゼン資料やセールス文章の成果が出やすくなるのです。

もちろん、数字を使ったにもかかわらず、「たいしたことがない」「信頼できない」「信憑性が低い」と思われては意味がありません。数字の効果を最大限に引き出すためには、どういう使い方(提示方法)をすればいいのかよく考えましょう。

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そもそも文章ってどう書けばいいんですか?

「文章を書くことがストレス」「書くのに時間がかかりすぎる」「そもそも頭のなかにあることを文章にできない」……本書はそうした「文章アレルギー」のある人たちに、マンガを織り交ぜながら、わかりやすく文章の書き方をレクチャーしていきます。

著者:山口拓朗

価格:¥1,400-(税別)

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