『文章を書く』ことの苦手を好きにかえる

「文章を書くことがストレスです」
「文章を書くことが苦手で……」
「文章を書くのに時間がかかります」

そんな「文章アレルギー」の人は多いのではないでしょうか? しかし、文章を書けるかどうかは、仕事の成果や周囲の評価に大きく関わります。

そんな文章に関する「困った」にやさしく応えてくれるのが、『そもそも文章ってどう書けばいいんですか?』を著書にもつ、山口拓朗さんです。

この連載では、これまでライターとして3000件以上の取材・インタビューを経験した中から導き出した、「書くことが嫌い」を「書くことが好き」へと変える、文章作成のコツを教えてもらいます。

著者プロフィール

山口拓朗(やまぐち・たくろう)

伝える力【話す・書く】研究所主宰。出版社で編集者・記者を務めたのちに独立。これまでライターとして3000件以上の取材・執筆歴を誇る。現在は執筆活動に加え、講演や研修を通じて、「書かずにうまくなる段取り文章術」「論理的に伝わる文章の書き方」「好意と信頼を獲得するメール文章術」「すらすら書ける文章テンプレート活用法」等、その日から使える実践的ノウハウを提供。また、2016年より中国の5大都市で「SuperWriter養成講座」を定期開催中。

著書に『そもそも文章ってどう書けばいいんですか?』『何を書けばいいかわからない人のための「うまく」「はやく」書ける文章術』(共に日本実業出版社)ほか多数。文章作成の本質をとらえたノウハウは言語の壁を超えて高く評価されており、中国、台湾、韓国など海外でも翻訳されている。

誠意を伝える「お詫びメール」に必要な5つのポイント

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2019/05/08 16:15

(photo by acworks/photoAC)

一生モノのスキルになる! 『文章を書く』ことの苦手を好きにかえる方法<連載第15回>

伝える力【話す・書く】研究所を主宰し、「文章の書き方」に関する著書も多い山口拓朗さんに書き方のコツを教わります。今回はお詫びメールに必要な5つのポイントについて。

お詫びメールは、謝ればいいというものではない

この連載の一覧はこちら

あなたは、安易なお詫びメールを書いて、相手を怒らせたことはありませんか? 

お客様などへのお詫びメールでは、不満をもつ相手の気持ちに寄り添いながら、「なぜそのような誤りやミスが起きたのか」という原因や、今後の具体的な対応策を伝える必要があります。もちろん、誠意を伝えるためには丁寧なお詫びのフレーズも欠かせません

【ダメなお詫びメール】 

このたびは、欠陥商品をお送りしてしまい、誠に申し訳ございませんでした。
弊社で責任をもって、正常な商品と交換させていただきます。

どうぞよろしくお願いいたします。


お世辞にも「誠実」とは言い難いお詫び文です。ミスの原因には触れておらず、今後の対応策も具体的には書かれていません。

なにより問題なのは、文面が淡白すぎて、お詫びの気持ちが感じられない点です。これでは相手が「本当に悪いと思っているのか?」と怒りの感情を増幅させる恐れもあります。

相手の怒りを鎮めるお詫びメールとは?

では、相手に快く許してもらうには、どのような内容を書けばいいのでしょうか。一例を紹介します。

【許しを得やすいお詫びメール】

このたびは、欠陥商品をお送りしてしまい、誠に申し訳ございませんでした。
トランクのキャスターが外れていたとのこと。
さぞご不快な思いをされたことと存じます。
深くお詫び申し上げます。

原因ですが、状況から判断して、キャスターの留め具の不具合が考えられます。
(1000個に1個程度の割合で留め具の不良が生じるデータがございます)
発送前の検品が行き届かなかった点についても、重ねてお詫び申し上げます。

つきましては、至急、品質に万全を期した商品をお届けにあがります。
明日23日(水)の13時以降で、ご都合のいい日時をお知らせください。

以後、同じような不手際がないよう、製造精度や検品の質を高めていく所存です。
誠に勝手なお願いではございますが、引き続き、ご愛顧いただければ幸いです。

なお、お手元の欠陥商品につきましては、当日うかがう配送員が引き取ります。
ご迷惑とお手数をおかけいたしますが、よろしくお願いいたします。

このたびは、本当に申し訳ございませんでした。

先ほど紹介した【ダメなお詫びメール】とは雲泥の差です。あなたがお詫びメールを受け取った相手だった場合、快く許せるのは、こちらのほうではないでしょうか。

「お詫びのメール」には具体的な謝罪と改善策を書く

【許しを得やすいお詫びメール】には以下の5つのポイントが盛り込まれています。

ポイント1:誠意ある謝罪

お詫びメールには、それなりの文量が必要です。「大事なのは文量より心」などと考えてはいけません。目の前に相手がいないメールでは、こちらが深々と頭を下げている姿を見せることはできません。言葉を変えながら何度もお詫びして、はじめて誠意が伝わるのです。

【許しを得やすいお詫びメール】では「申し訳ございませんでした」と「お詫び申し上げます」を、それぞれ2回ずつ使っています。くり返しお詫びすることで、誠意が伝わりやすくなります。“深々と頭を下げている姿”を相手に伝えるためには、お詫びの言葉の「量」にこだわらなければいけないのです。

ポイント2:腹を立ててる相手の気持ちに寄り添う

相手の気持ち(怒りや落胆、失望)に寄り添う姿勢も求められます。相手は、「謝ってほしい」のはもちろんのこと、腹立たしい、あるいは、面倒を被った自分の気持ちを理解してもらいたいと思っています。

【許しを得やすいお詫びメール】では「さぞご不快な思いをされたことと存じます」と相手に寄り添っています。お詫びの言葉ばかり並べても、相手に「本当にこっちの気持ちがわかっているのか!」と思われてしまえばアウトです。“あなたのその不快な気持ちは理解しています”ということを文章でしっかり伝える必要があります。

ポイント3:原因を書く

人によっては(あるいは、ケースによっては)、どうしてこのような誤りやミス、トラブルが発生したのか原因を知りたがる人もいます。すぐに原因が特定できない場合は、<迅速に原因を調査する>旨を伝えたうえで、現状で推測できる原因を伝える必要があります。

【許しを得やすいお詫びメール】では「原因ですが、状況から判断して、キャスターの留め具の不良が考えられます。(1000個に1個程度の割合で留め具の不良が生じるデータがございます)」と推測を伝えています。原因を伝えることは、相手への義務と心得ておきましょう。

ポイント4:具体的な対応策を書く

お詫びはしているけど、具体的な対応策が書かれていないお詫びメールもNGです。「お詫び」と「対応策」はセットです。

【許しを得やすいお詫びメール】では「至急、品質に万全を期した商品をお届けにあがります。明日23日(水)の13時以降で、ご都合のいい日時をお知らせください」と、具体的な対応策を示しています。すみやかに具体的な対応策を示すことで、相手の溜飲が下がりやすくなります。

ポイント5:具体的な改善策を書く

同じ誤りやミス、トラブルが再び起きないよう、今後の改善策を伝えることも、お詫びメールの役割のひとつです。

【許しを得やすいお詫びメール】には「以後、同じような不手際がないよう、製造精度や検品の質を高めていく所存です」と書きました。建前上の改善策では、相手の怒りの火に油を注ぐことになりかねません。できる限り具体的な改善策を示しましょう。

お詫びをメールだけに頼るのはキケン!

お詫びをする際、安易な「責任転嫁」や「言い訳」「取り繕い」には十分注意しましょう。弁解や弁明をせず、書き手が責任を負う姿勢を見せることによって、相手の気持ちを和らげやすくなります。

もちろん、こちらに100%非がない場合は、非がない理由を説明する必要がありますが、そのときも、相手の立場に立って、相手の気持ちを害さない書き方をしなければいけません(くれぐれも感情的になって相手を責めないように)。

お詫びメールは、相手との信頼関係を築くチャンスでもあります。その内容(誠意ある謝罪や具体的な改善策など)に相手が感動すれば、逆に、信頼を勝ち取ることもできます。誠意をもって文章を書くことによって、その人自身(その会社)の株が上がることもあります。

なお、お詫びは「必ずメールでしなければいけない」というものではありません。誤りやミス、不手際などの度合いが高い場合や、相手の怒りが激しい場合であれば、真っ先に電話をしたり、相手先を訪問したりする必要もあります。

ひとまずのお詫びメールを書く場合は、「のちほど改めてお電話させていただきます/ご訪問いたします」のような一文を添えることも検討しましょう。お詫びメールを書くスキルを磨くことは、あなたのコミュニケーション能力を総合的に伸ばすことにほかなりません。

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そもそも文章ってどう書けばいいんですか?

「文章を書くことがストレス」「書くのに時間がかかりすぎる」「そもそも頭のなかにあることを文章にできない」……本書はそうした「文章アレルギー」のある人たちに、マンガを織り交ぜながら、わかりやすく文章の書き方をレクチャーしていきます。

著者:山口拓朗

価格:¥1,400-(税別)

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