日本で一番多い名字は佐藤で、2番目が鈴木といわれています。
しかし、本当?と思っている人も多いのではないでしょうか。東京の周辺に住んでいる人は違和感がないでしょうが、関西の人だと、一二を争うのは山本と田中だろう、と思っています。
交通が便利になって、東京からだと、離島や山中を除いてほとんどの所に日帰りできるようになりました。でも、日本は狭いようで、まだ地域差は残っています。そんな日本を名字や地名からみつめ直してみたいと思っています。
 
 
  
町家の雛めぐり

2010/03/08 10:37
3月3日付高知新聞で「ひな人形2000体」という記事をみつけた。

カラー写真で紹介されている500体の人形が並んだ「天段のひな」は迫力がある。というのも、500体で1セットなのではなく、各家庭の雛人形を持ち寄っているため、お内裏様やお雛様がたくさんいるのだ。

この催しが行われているのは土佐街道。といっても場所は高知ではない。「日光街道」や「甲州街道」のように、「○○街道」といえば行き先を示しているのが普通だが、土佐街道を歩いていっても、土佐にはたどり着かない。なぜなら、土佐街道があるのは奈良県南部、吉野の麓の高取町なのだ。

土佐街道は、国道169号線に並行して南北に伸びる2キロほどの道で、江戸時代には大和高取藩のメインストリートだった。今でも、上土佐、下土佐という地名があり、神社や郵便局にも土佐の名を冠するところがある。

ここが土佐街道といわれるようになった由来は古い。6世紀の初めごろ、ヤマト王権の都づくりための労役として土佐から人が動員され、そのまま帰れなくなってこの地に住みついたのが由来という。

そういえば、司馬遼太郎「街道をゆく」の第1巻では、奈良の一言主という神様が土佐に流されたといい、土佐にはちゃんと一言主を祀った神社がある、ということを紹介している。

ちなみに、「森岡」という名字も、人口比で一番多いのが高知で、次が奈良。土佐と大和は、古代では意外と近かったのかも知れない。

  
毛利氏発祥の地を訪ねる

2010/03/01 11:58
先日再び厚木市に行き、今度は毛利一族の発祥の地を訪ねてきた。場所的には、愛甲発祥地のすぐ北側である。

毛利氏は戦国時代に中国地方を制圧した大大名で、江戸時代には長州藩の藩主だった。そのため、毛利氏のルーツは中国地方にあると思っている人が多いが、西国の武家には関東地方をルーツとする一族はかなり多い。毛利氏もその1つで、発祥地は相模国愛甲郡毛利、今の神奈川県厚木市の毛利台・下古沢一帯にあたる。

毛利氏の先祖は、朝廷で学問を担当する貴族だった大江氏。鎌倉時代初期、没落気味だった大江一族の分家の大江広元が源頼朝に仕えて鎌倉に降り、幕府成立に大きな力を発揮した。そのこども達は武士となって各地に領地をもらい、相模国毛利に領地を貰った季光が名乗ったのが毛利氏である。

その後、新潟県や広島県にも新しい領地を貰って一族が移り住み、広島県に住んだ毛利氏が、戦国時代になって大名に発展したものだ。戦国大名毛利家は、毛利氏全体からみれば、実は分家の分家といった立場にある。

さて、この付近は厚木駅からもかなり離れており、かつては田園地帯だったが、近年都市化の波が徐々に押し寄せてきている。毛利季光の屋敷跡は三島神社という神社になっているが、なんと本堂には、まもなく売却される旨の張り紙がしてあった。


20100301-misima.jpg
三島神社


境内には大きなクスノキがあり、その下には、「毛利氏発祥の地」という碑が建てられている。売却されてもクスノキと碑だけは残してほしい。


20100301-kusunoki.jpg
境内のクスノキ


20100301-mouri.jpg
「毛利氏発祥の地」石碑

  
ボリビアのオキナワ村

2010/02/22 11:33
何日か遅れでいくつかの地方新聞をみているのだが、2月9日付の琉球新報で、元オキナワボリビア協会会長の訃報が掲載されているのをみつけた。

沖縄は海外への移住が多く、日系アメリカ人でも沖縄出身者の占める割合は高い。南米でもおそらく同じで、沖縄出身の南米移住者は多いと思われる。

ところで、気になったのは訃報に記されていた住所だ。同氏の自宅は、ブラジルのサンタクルス州ワルネス郡オキナワ村とあったのだ。

そこで、さっそくgoogle mapで調べてみた。以前だとボリビアの地図など持っていないので調べることは難しかったが、google mapがあれば、世界中をカバーしているため簡単に調査できる。

まずボリビアを表示してサンタクルス州付近を拡大すると、わりとあっさりとオキナワ村が表示された。カタカナ表記であることから、「村」とはいいながらそれなりに大きな町なのだろう。国道9号線と別の道の分岐点にあり、この地方の交通の要所なのかもしれない。
アメリカの地名でも、入植者の出身地が由来という地名は多い。ニューヨークにしても、もともとはオランダ人が入植したため、ニューアムステルダムと呼ばれていた。そういう意味ではオキナワという地名に驚くことはないのだろうが、地球の真裏に「オキナワ」がある、というのは新鮮な驚きである。

  
上村愛子選手の名字

2010/02/15 10:01
バンクーバー冬季五輪が、日本時間の13日朝に始まった。一部競技は開会式前から予選が行われており、14日朝には、上村愛子選手のメダルが期待された、女子モーグルの決勝があった。

あと2人という時点まで2位に入っていたが、カナダのハイル、米国のカーニーに連続して上回られて惜しくも4位。過去の五輪で7位→6位→5位と順位をあげてきたが、4回目の今回も惜しくもメダルには一歩届かなかった。

さて、「上村」という名字には「うえむら」と「かみむら」の2つの読み方がある。どちらが多いかわかるだろうか。正解は、ほぼ半々だが、若干「うえむら」が多い。

「上村」は新潟と熊本に多い。面白いのは、新潟では圧倒的に「かみむら」だが、熊本ではほとんど「うえむら」。そのため、東日本では「かみむら」が多く、西日本では「うえむら」が主流。

上村愛子は長野県の白馬村の出身。新潟県のとなりの長野県では当然「かみむら」が多いのだが、上村愛子の名字は「うえむら」と読む。実は、上村愛子の生まれは兵庫県の伊丹市なのだ。関西では7〜8割が「うえむら」なので、上村愛子が「うえむら」と読むのはごく当然なのだ。

ちなみに、「上村」の読み方にはさらに不思議なことがある。「かみむら」が多い東日本でも、東北北部や北海道では「うえむら」が多く、「うえむら」が主流の西日本でも宮崎や鹿児島では「かみむら」が多い。ともに、最先端では読み方が逆転するのだ。

残念ながら、なぜこういう不思議な分布になっているのかはわからない。まだまだ名字には謎が多い。

  
高座渋谷の忠犬デコハチ公

2010/02/08 10:08
神奈川県大和市の小田急江ノ島線高座渋谷駅前にある複合ビル「IKOZA」に、ビンクの忠犬ハチ公像が設置された、というニュースが、地元紙などに出ていた。

テレビ番組の企画として作成されたもので、アクリル製ビーズや、粘土のスイーツなどで派手に飾られ、愛称は「デコハチ公」。番組終了後、スタッフが寄贈先を探した結果、渋谷駅と同名の駅ということで同駅が選ばれ、寄贈されたものだ。

同名の駅ということで高座渋谷駅が選ばれたのだが、この渋谷という地名、東京の渋谷のあやかってつけたわけではない。実は、地名としては、高座渋谷の方が先なのだ。

平安時代末期、桓武平氏の一族が相模国高座郡渋谷の地を与えられて、地名から「渋谷」を名字にした。その後、源頼朝に仕えた渋谷金王丸が新たに武蔵国に領地を与えられ、住んだところが「渋谷」という地名になった。

つまり、東京・渋谷のルーツは、今の高座渋谷なのだ。ちなみに、渋谷から青山方面に登っている金王坂も、渋谷金王丸の名前に由来している。

渋谷一族は、各地に領地をもらい、全国に広がった。渋谷という名字の人のルーツをたずねると、ほとんどは高座渋谷に行きつくことになる。

忠犬デコハチ公は、渋谷さんルーツの地で余生を送ることになる。

 
 
森岡 浩
(もりおか ひろし)


姓氏研究家・野球史研究家。1961年高知市生まれ。土佐高校を経て早稲田大学政治経済学部卒。学生時代から独学で姓氏研究を始め、文献だけにとらわれない実証的な研究を続けている。
一方、高校野球を中心とした野球史研究家としても著名で、知られざる地方球史の発掘・紹介につとめている。
著書は『名字の地図』『高校野球がまるごとわかる事典』(いずれも小社刊)、『名字の謎』(新潮社)、『日本名字家系大事典』(東京堂出版)など多数。
高校野球に関するブログ“半地下の書斎から”も好評執筆中。

(著者ホームページ)
http://home.r01.itscom.net/
morioka/index.html

(著者「高校野球ブログ」)
http://officemorioka.blog.so-net.ne.jp/


 
 
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