本書では、言い方・伝え方のNG例とOK例を対比で紹介しつつ「なぜだめなのか」「好かれる人は、なぜこのような言い方をするのか」を解説しています。同書から一部を抜粋して見てみましょう。

自分のための行為には「ありがとう」を伝える

たとえば自分が欠席したミーティングの資料を持ってきてくれた同僚に「よかったらこの資料いる?」と聞かれたとします。あなたにとってそれが必要なものであれば、「この資料ほしかったの。ありがとう」と自然とお礼を伝えていると思いますが、必要なかった場合はどうでしょうか。

資料が「いる・いらない」しか考えることができなければ、「さっき部長にもらったからいい」などと、お礼も言わずに必要ないことを伝えるのみの返事で終わってしまいます。

そうすると問いかけの奥にあった「相手が自分のためにしてくれた行為」に対しては何も反応しないままになってしまいます

「自分にとってその資料が必要かどうか」ではなく、自分のために資料を用意してくれていた相手の気持ちに思い至り、まずは「心配してくれて、どうもありがとう」という感謝を言葉にしましょう。

「わからないことがあったら聞いてね」と言ってくれている先輩に対しても、ベストアンサーは、「ありがとうございます。またわからないことがあったらお願いします」ではないでしょうか。好かれる人は日常的にこうした感謝の言葉を伝えられる人です。

英語の発想であれば「ノーサンキュー」のひと言で問題ないのかもしれませんが、日本語だからこそ、感謝をきちんと言葉にしてつけ加えたいものです。自分のために何かを提案してくれたり、行動を起こしたりしてくれたときには、まずはその行為のほうに気持ちを向けることが大切です。

お礼は何度言っても、どれだけ言っても、言い過ぎということはありません。相手の好意をしっかり受けとめて、お礼の言葉を相手に返すようにしましょう。

(P.18-23より一部編集して抜粋)

ここでは「相手をないがしろにしない言い方」を紹介しましたが、他人から好かれる言い方のコツとして

  • 角を立てない、不快にさせない伝え方
  • 大人としてきちんとした印象を与える話し方
  • 気持ちよく会話が弾む話し方

などがあります。前回の記事では「コミュ力がなぜ求められるのか?」について書いていますが、その一環として「伝え方のノウハウ」を学んでおくと、伝え方の幅が広がります。

目指せ、言い訳&メールマスター! 「大人に見える」言い換え辞典

『ビジネスメール言い換え辞典』
『困ったときの「モノの言い方」言い換え辞典』
(いずれも村上英記 著)

先ほど「モノには言い方ってものがある」と書きましたが、見方を替えれば「世の中、バカ正直がいいってものでもない」ということでもあります。

新入社員・新社会人のみなさんも、就活時にそれを強く実感したのではないでしょうか。ESでは「盛りすぎない程度の味付け」を行い、茶番のようなやりとりに内心「バカバカしい」と思いながらも本音と建て前を使い分け……ということは誰でもやったでしょう。

これは就活だけではありません。企業間の交渉でも、国家が行う外交でも「自社(あるいは自国)の利益になるように本音を上手に言い換え、相手を丸め込んで利益を確保する」のが“大人のやり方”であり、それができなければ自分が食い物にされるだけです。

さすがに「騙し方は必須のスキル!」とまではいいませんが、現実社会を生きていくうえで、言い訳程度に収まる「上手なモノの言い方・ウソの付き方」を身につけて損はありません。