社会人になると仕事上で戸惑うことや納得のいかないこと、今後の人生に関する悩みなど、どうしたらいいかわからないことがたくさん出てきます。しかし、それらの答えを手取り足取り教えてくれる学校の先生のような人は基本的にいませんし、親からのアドバイスを求めても世代や感覚のギャップが大きすぎて参考にならない場合もあるでしょう。

そこで、新社会人(+社会に出る直前の就活生)に役立つ本を、テーマ別に数冊ずつご紹介。まずは「社会人としての基礎作り編」です。

学校では学年・年齢が一緒なら基本的に同じ立場でいられましたが、会社では周囲に認められた人から上に抜けていきます。仮に自身をまったく成長させなかったら、数十年後に上司となった元同期・元後輩から査定の場でチクチク叱られる――といったことだって起こりかねません。

それを避けるためには自分で学び、力をつけていく必要があります。営業や経理といった職種ごとに必要なスキルは多岐にわたるため、ここでは全業種・職種に共通するような「基本となるスキルが磨ける本」に絞ってご紹介します(各書影をクリックすると、Amazonにジャンプします)。

就職は楽屋から舞台に出たのと同じ。最初からうまくいかないのは当たり前

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『働き始めた君に伝えたい「仕事の基本」』(江口克彦 著)

著者は松下電器産業(現Panasonic)創業者・松下幸之助の側近として23年間働き、参議院議員やPHP総合研究所社長、松下電器理事、内閣官房道州制ビジョン懇談会座長などを歴任した江口克彦氏。

同書は、新卒からベテランが部下に伝えるべきことまで「人生の階段を着実に登っていくための22の指針」をまとめたものです。別の記事で本書をご紹介していますが、もう一点「そもそも、学生と社会人の違いは何か」について本書からみてみましょう。

江口さんは「仕事に就くということは“楽屋”から“舞台”に出てきたようなもの」と演劇に例えています。出演者の控室である楽屋は、先輩・後輩のような多少の規律はあれども客目には触れない「アバウトな世界」。

しかし、一度舞台に上がれば、たとえ脇役でも一生懸命に演じなければならない――この原則は仕事でも同じとし、そのうえで「最初からうまくいかないと悩むのは当たり前」と述べています。

あなたは、雑談をしたりしてなんとなく楽しんでいた楽屋から、約束事は守らなければいけない、時間に遅れたり間違えることは一秒も許されない、演じるべきことを演じないことなどは絶対に許されない「舞台」に出たのです。考え方の違いに戸惑ったとしても、当たり前のことでしょう。

ですから、「どうして自分の考えは通用しないのか」「私は一生懸命、仕事に取り組んでいるのになんとなく周囲としっくりいかない」と悩んだとしても、気にする必要はありません。むしろ、その悩み、迷いこそ健全なのです。悩みつつ、

「ああ、舞台ではこういう約束事があるのか。約束はしっかり守らなければならないんだ」
「楽屋で気楽に振る舞い、気を抜いて面白おかしく過ごしていたけど、舞台では端役で観客によく見えない役であっても、しっかりと演じなければならないのか」
「こういう小さな演技の積み重ねが大事なんだ」

というように前向きにとらえ、「楽屋」と「舞台」の違い、言い換えると「アバウトな世界」と「規律の世界」の違いを「知る努力」をすれば、真剣に考えることはあっても深刻にはならないはずです。ストレスになったり、鬱になることもなくなるでしょう。

(『働き始めた君に伝えたい「仕事の基本」』P.14-15より)

なぜ、企業は口を開けば「コミュ力が大事」というのか