『文章を書く』ことの苦手を好きにかえる

「文章を書くことがストレスです」
「文章を書くことが苦手で……」
「文章を書くのに時間がかかります」

そんな「文章アレルギー」の人は多いのではないでしょうか? しかし、文章を書けるかどうかは、仕事の成果や周囲の評価に大きく関わります。

そんな文章に関する「困った」にやさしく応えてくれるのが、『そもそも文章ってどう書けばいいんですか?』を著書にもつ、山口拓朗さんです。

この連載では、これまでライターとして3000件以上の取材・インタビューを経験した中から導き出した、「書くことが嫌い」を「書くことが好き」へと変える、文章作成のコツを教えてもらいます。

著者プロフィール

山口拓朗(やまぐち・たくろう)

伝える力【話す・書く】研究所主宰。出版社で編集者・記者を務めたのちに独立。これまでライターとして3000件以上の取材・執筆歴を誇る。現在は執筆活動に加え、講演や研修を通じて、「書かずにうまくなる段取り文章術」「論理的に伝わる文章の書き方」「好意と信頼を獲得するメール文章術」「すらすら書ける文章テンプレート活用法」等、その日から使える実践的ノウハウを提供。また、2016年より中国の5大都市で「SuperWriter養成講座」を定期開催中。

著書に『そもそも文章ってどう書けばいいんですか?』『何を書けばいいかわからない人のための「うまく」「はやく」書ける文章術』(共に日本実業出版社)ほか多数。文章作成の本質をとらえたノウハウは言語の壁を超えて高く評価されており、中国、台湾、韓国など海外でも翻訳されている。

誤解をまねく文章は「前提の共有」をしていない!

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2021/06/09 15:31

一生モノのスキルになる! 『文章を書く』ことの苦手を好きにかえる方法<連載第40回>

伝える力【話す・書く】研究所を主宰し、「文章の書き方」に関する著書も多い山口拓朗さんに書き方のコツを教わります。今回は、話の「前提」を共有する重要さについて。

仕事で一番最初にすべきは「前提の共有」!

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メールを含むビジネス文章でたびたび起る誤解。その原因のひとつが「前提」の省略です。仕事をするうえで物事の前提を共有しておくことは重要です。

たとえば、人材育成をする際に「即戦力を育てる」のと「長期的な戦力を育てる」のとでは、作成するカリキュラムは大きく変化するはずです。そういった前提が、先々の判断や行動を決めるのです。

仕事で文章を書くときに前提の認識がズレると、成果達成しにくくなるほか、思わぬミスやトラブルを引き起こしかねません。コミュニケーションにおいて前提の共有は必須なのです。

以下は、仕事のプロジェクトを進める前に共有するべきおもな前提です。

  • このプロジェクトの目的・目標は?
  • このプロジェクトのルールや手順は?
  • このプロジェクトの予算・期限は?

こういった前提を省いてしまう原因としては“思い込み”があります。つまり「そんなこと(前提)、わざわざ言わなくてもわかっているだろう」と、書き手が勝手に判断してしまうのです。これでは誤解を招くリスクが高まるのも当然です。

前提が変われば、仕事の成否も変わる!?

文章を書くときには、そのつど、文章を読む人の前提認識レベルを見極める必要があります。少しでも「相手は前提を認識していないかも?」と感じたら、必要な説明を省いてはいけません。

【原文】
ご報告します。今回のネット販売会ですが、昨年よりアクセス数も多く、2日間で1,500個を販売しました

【修正文】
ご報告します。今回のネット販売会ですが、昨年よりアクセス数も多く、2日間で1,500名を販売しました。一方で、全販売数の割7が商品Bで、主力の商品Aは3割(450個)にとどまりました。目標に掲げていた「商品Aの700個販売」は達成できませんでした。

このネット販売会の最大の目的は「商品Aの700個販売」でした。原文では、この重要な前提に触れていません。書いた本人が前提を理解していないのか、あるいは、前提を書き忘れたのか。どちらなのかはわかりませんが、いずれにしても、これでは相手に「今回のネット販売会=成功した」と誤解を与えかねません。

一方の修正文は、前提を正しく理解しており、アクセス数と購入者数は多かったものの「成功とは言い難い」ことがわかります。当初の目標(前提)を示すことで、読む人が誤解する余地をなくしています。

前提をしっかり書くことは、前提を忘れてしまっている恐れのある人にとっても大きな“助け舟”にもなるのです。

提案・企画では「背景説明」が重要

「前提」と似た言葉に「背景」があります。前提同様、背景を省略してしまうと誤解を招く恐れがあります。とくに提案や企画を伝えるときには背景説明は必須です。

以下は、社員Aさんによる社内への提案です。

【提案】
社内に、社員全員が気軽に使える仮眠室を設置してはいかがでしょうか?


 提案内容は明快ですが「どうしてそれをする必要があるのか?」についての記述がありません。この提案に至った背景が書かれていない状態です。以下の文章を添えることで提案内容の説得力が高まります。

【提案の背景】
昼食後に眠気に襲われている社員は少なくありません。眠気のある状態で作業をすれば効率と生産性が低下します。現に、先月起きたふたつの事故も昼食後の時間帯で、該当社員からは「眠くて集中力が低下していた」というコメントが出ています。また、仮眠が脳の効率を高めることは、さまざまな研究結果で明らかです。カリフォルニア大学の研究によると〜

 このような背景がわかれば、提案内容の意義をより強く感じることができるでしょう。もっと言えば、こうした背景こそが、実は提案や企画の採否を左右する重要な要素なのです。

前提と同様に「わざわざ言わなくてもわかっているだろう」という“思い込み”は禁物です。背景を説明しなければ、提案や企画の必要性を理解してもらうことは至難の業でしょう。

あなたが書こうとしているその文章に、必要な前提や背景説明は盛り込まれていますか? 前提や背景を伝えることで、やり取りにムダやロスがなくなり、仕事の効率と生産性も高まっていくはずです。

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そもそも文章ってどう書けばいいんですか?

「文章を書くことがストレス」「書くのに時間がかかりすぎる」「そもそも頭のなかにあることを文章にできない」……本書はそうした「文章アレルギー」のある人たちに、マンガを織り交ぜながら、わかりやすく文章の書き方をレクチャーしていきます。

著者:山口拓朗

価格:¥1,400-(税別)

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