『文章を書く』ことの苦手を好きにかえる

「文章を書くことがストレスです」
「文章を書くことが苦手で……」
「文章を書くのに時間がかかります」

そんな「文章アレルギー」の人は多いのではないでしょうか? しかし、文章を書けるかどうかは、仕事の成果や周囲の評価に大きく関わります。

そんな文章に関する「困った」にやさしく応えてくれるのが、『そもそも文章ってどう書けばいいんですか?』を著書にもつ、山口拓朗さんです。

この連載では、これまでライターとして3000件以上の取材・インタビューを経験した中から導き出した、「書くことが嫌い」を「書くことが好き」へと変える、文章作成のコツを教えてもらいます。

著者プロフィール

山口拓朗(やまぐち・たくろう)

伝える力【話す・書く】研究所主宰。出版社で編集者・記者を務めたのちに独立。これまでライターとして3000件以上の取材・執筆歴を誇る。現在は執筆活動に加え、講演や研修を通じて、「書かずにうまくなる段取り文章術」「論理的に伝わる文章の書き方」「好意と信頼を獲得するメール文章術」「すらすら書ける文章テンプレート活用法」等、その日から使える実践的ノウハウを提供。また、2016年より中国の5大都市で「SuperWriter養成講座」を定期開催中。

著書に『そもそも文章ってどう書けばいいんですか?』『何を書けばいいかわからない人のための「うまく」「はやく」書ける文章術』(共に日本実業出版社)ほか多数。文章作成の本質をとらえたノウハウは言語の壁を超えて高く評価されており、中国、台湾、韓国など海外でも翻訳されている。

「要約力がない」と嘆く人は情報管理ができていない

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2020/08/05 16:46

一生モノのスキルになる! 『文章を書く』ことの苦手を好きにかえる方法<連載第30回>

伝える力【話す・書く】研究所を主宰し、「文章の書き方」に関する著書も多い山口拓朗さんに書き方のコツを教わります。今回は、アウトプットに必須なスキル「要約力」ついて。

要約力が磨かれると、伝え上手になる?

この連載の一覧はこちら

「ダラダラ話すな!」「それで、結論は何なんだ?」「話の要点が見えないぞ!」――あなたはこんな指摘を周囲から受けたことはありませんか?

もしかすると、相手に伝わらない原因は「要約力の低さ」にあるかもしれません。

要約力」とは、情報のポイントをつかみ、場面に応じて、簡潔かつ論理的にアウトプットする能力のことです。要約は以下の3ステップから成り立っています。それぞれのステップに優先順位はありません。

ステップ1:【情報収集】必要十分な情報を集める
ステップ2:【情報整理】情報をグループ分けする+優先順位をつける
ステップ3:【情報伝達】簡潔に相手に伝える

要約のプロセスがうまくいったかどうかは、最終ステップである「情報伝達」に表れます。 いかなるシチュエーションでも、相手に簡潔かつわかりやすく伝えることができ、その結果、伝え手自身の目的を達成することができる人は、要約力の高い人と言えます。

一方で、「情報伝達」の質を高めるために「伝え方だけ」を何とかしようとしても、うまくいきません。なぜなら「情報伝達」は要約プロセスの一部にすぎないからです。理想的なアウトプットをするためには、要約の3ステップすべての質を高めていく必要があります。

【ステップ1:情報収集】ありとあらゆる方法で必要な情報を集める

要約の第一歩は「情報収集」からスタートします。仮に、あなたがダイエット食品(プロテインシェイク)の営業マンだった場合、以下のような情報収集が必要です。

【ダイエット食品について】
・商品の開発経緯(秘話を含む)
・原材料(生産地など)
・加工方法 ・栄養・含有成分など 
・どういう人向けの商品か
・どういう効果があるか
・どの頻度で、どの期間、飲み続ければいいか
・安全性
・リスク
・サポート体制
……など

これらの情報が頭に入っていなければ、的確にアウトプットできません。お客様から質問を受けても、答えに窮してしまったり、しどろもどろになってしまう恐れがあります。食材がなければ料理が作れないのと同様に、情報がなければアウトプット(話す・書く)できません。

情報収集には、ありとあらゆる手法を駆使しましょう。資料やデータをあたる、開発関係者から話を聞く、自分で体験・実験する、お客様の声に耳を傾ける――情報が来るのを待っているのではなく、主体的に情報を取りにいく姿勢が求められます。

【ステップ2:情報整理】サッと情報を取り出せるよう整理整頓しておく

収集した情報は、いつでもアウトプットできるよう整理しておく必要があります。資料がきちんとファイリングされて整理整頓されている状態と、とっ散らかっている状態で、捜し物を見つけやすいのは、言うまでもなく前者です。頭の中もまったく同じで、必要な情報をサっと取り出すためには、インプットした情報を整理整頓しておくことが肝心です。

整理整頓するコツは「グループ分け」と「優先順位づけ」です。たとえば、映画に詳しく、いつでも的確な説明や解説ができる人は、頭の中で映画作品のグループ分けができているはずです。

【映画のグループ分けの種類】
・ジャンル別
・扱うテーマ
・製作国
・キャスト
・監督
・興行収入
・観客(ターゲット)

また、グループ分けした状態で優先順位をつけることもできています。たとえば、クリストファー・ノーラン監督の作品であれば、自分が好きな順に語ることもできれば、ヒットした順に語ることもできれば、一般ウケしそうなオススメ順で語ることもできます。

さらに、「ホラー映画でオススメはある?」「経営者が観ておくといい映画は?」「落ち込んでいるときに観ると元気が出る映画は?」「AIをテーマにしたおもしろい作品は?」など、ありとあらゆる質問に、スピーディかつ明確に答えることもできるでしょう。

しかし、情報の「グループ分け」や「優先順位づけ」ができていないと「えーっと、まあ、映画といっても、いろいろありますからね……。いやー、急にオススメを教えてって言われると難しいなあ……」などと歯切れの悪い返事をすることになるでしょう。

一方、要約力に優れている人は、脳内で情報が整理整頓されているため、そのつど臨機応変にアウトプットすることができます。

【ステップ3:情報伝達】「幹→枝→葉」の順番に伝える

要約力の最終ステップは「情報伝達」です。情報収集も済み、整理もできているのに、伝達で気を抜いては、せっかくの要約プロセスが水の泡です。

情報伝達の基本は「幹→枝→葉」の順に話す、というものです。

【幹】結論・メッセージ
【枝】理由・根拠など
【葉】事例・体験談、やり方などの詳細

たとえば、あなたが企画のプレゼンをするときに「昨今、日本人のライフスタイルやワークスタイルが大きな変化を遂げつつあり、この流れについてこれない会社やビジネスパーソンも多いようです。歴史を見ましても〜」のように、まどろっこしい前置きや背景説明から入ってしまうと、聞く人の興味・関心が薄れてしまいます。

一方、話の「幹→枝→葉」の順で話せる人は以下のような伝え方をします。

A社の課題である○○への対応策として、弊社のオンラインシステム△△の導入をご提案します。【幹】 御社にはもともと在宅スタッフがいるほか、リモートワークのご実績も豊富です。△△を導入いただくことで、仕事効率と生産性をより高めることができます。【枝】 なお、△△の導入により、スタッフの疲労軽減効果も期待できます。地方の支店用には、あわせてオプション□□をご利用いただくことで、商圏に縛られない事業を立ち上げることもできます。【葉】

とくに大事なのは話のです。あなたが、このプレゼンで一言しか言う権利がないとしたら、一体何を言いますか?

あなたにとっての「死んでもこれだけは言っておく!」が、情報伝達における「幹」です。

冒頭で「オンラインシステム△△の導入をご提案します」と結論(幹)伝えることによって、それ以降の話もストレスなく頭に入ってきます。幹となる結論を真っ先に伝えてから「枝→葉」と詳細を掘り下げていく流れは、要約力に優れた人たちに共通するアウトプットスタイルです。

要約力が強化されると「伝わらない」にサヨナラできる!

どれだけすばらしい専門性や情報や情熱を持っていても、それが相手に伝わらなければ意味がありません。伝わらなければ、仕事効率が下がり、生産性も損なわれます。もちろん、遅かれ早かれ、あなたに対する周囲の評価も下がっていくでしょう。

くり返しになりますが、わたしたちのアウトプット力を下支えしているのは要約力です。「情報収集→情報整理→情報伝達」の全プロセスの精度を高めていくことが、「伝わらないアウトプット」から脱出する唯一の道と心得ておきましょう。

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「要約の3ステップ」についての詳しい解説は『9割捨てて10倍伝わる「要約力」』(山口拓朗著)にあります。興味がある方はぜひこちらをお読みください。

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