アナウンサー・渡辺由佳が解説「こんなときどう言う?」

「私の言うことって、どうしてうまく伝わらないのだろう」
「あのとき言ったことで、なぜムッとされたのだろう」
言葉は、自分が思っていた通りに受け取られないもの。「それを適切に言い換えるとすれば?」というテーマで好評を博したコラムがリニューアル!

職場に限らず、日常会話でもよくある「こんなときどう言えばいい?」という疑問の答えを、テレビ朝日を退社後、フリーアナウンサーや話し方講座の講師として活躍する渡辺由佳氏が解説します!
(毎月第2・4水曜日更新予定)

著者プロフィール

渡辺由佳(わたなべ・ゆか)

1964年、東京都生まれ。慶応義塾大学法学部政治学科卒業。テレビ朝日にアナウンサーとして入社。報道から社会情報番組まで多数の人気番組を担当。1993年に独立。以後、フリーアナウンサー、話し方講師としての活動を始め、テレビ朝日アナウンサースクールやシェリロゼ(自分磨きスクール)で指導を行なうほか、「ビジネスマナー」「コミュニケーション」「ビジネスメール」をテーマに企業向けのセミナー講師も務める。2016年より大妻女子大学文学部非常勤講師を務める。

著書に、『会話力の基本』(日本実業出版社)、『スラスラ話せる敬語入門』『サクサク書けるビジネスメール入門』(以上、かんき出版)、『気の利いた「ひと言」辞典』(講談社)などがある。

ブログ:渡辺由佳の素敵なことば探し
http://ameblo.jp/sutekinakotoba/

マウンティングをしたがる人への対処法は3つある

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2020/08/26 15:50

(photo by metamorworks/Adobe stock)

今回は「日常会話のマウンティングにどう対処したら良いか」を考えてみたいと思います。

マウンティングをする人には、大きく2つのタイプがあるように思います。まず1つは「意識はしてないが、そう受け取られかねないことを天然で言ってしまう」タイプ。その例として、私が8月初旬に知人の男性と話したときのエピソードを挙げてみます。

その男性は「中学生の娘の友達が大島や新島のほうに家族旅行に行くらしいから、うちも軽井沢の〇〇ホテルに1泊ぐらいで行こうかと思っていて」と話していました。

でも、そこで挙げられたのは軽井沢でも屈指の高級リゾートとして知られるホテル。聞いた私は〈中学生の子供をそんな超高級ホテルに連れて行くんだ……!〉と驚くと同時に〈もしかしてこれも一種のマウンティング……?〉と思ったものです。

そしてもう1つは「相手を見下して優越感を得る」など、何らかの目的のために意識的にしかけてくるもの。言うまでもなく、性質(たち)が悪いのはこちらのタイプです。

ただ、天然であれ意図的であれ、自慢話やマウンティングは積極的に付き合いたいものではありません。そうした話を角を立てずに回避するにはどうすればいいのか、ポイントを3つに絞ってみてみましょう。

マウンティングの対処法1:返答ポイントをずらす

まず1つ目は「話のポイントをずらした返答をする」ことです。

先ほどの(恐らく天然で)軽井沢のリゾートの話をした男性から聞いたとき、私は「子供にとっては中2の夏休みは今年だけだから、どこかに行きたいと思いますよね」と子供目線のコメントを返し、超高級ホテルについてはスルーしました。

ここでもし「〇〇ホテルなんて素敵ですね! 私も一度行ってみたいです」と返そうものなら、延々自慢話に付き合わされる可能性がありました。この手の話は、よほどヨイショしたい相手でもない限り、あまり深入りしたい話ではありません。

とりわけ今年の夏休みは、コロナ感染のリスクも考慮してどこにも行かなかったという人も多いでしょう。子供がいるなら、旅行に行かないことを納得させるのは大変だったと思います。ですので、ホテルから子供の思い出作りに話の中心をずらすことで、マウンティングとなりうる話題から遠ざかることができました。

もし、マウンティングされた話に付き合いたくないなと思ったら、上記のように話のポイントをずらした返答をするのをお勧めします。

マウンティングの対処法2:相手の本音を言葉に出す

女性同士の会話でよく聞く「あーあ、私ってなんでこんなイケてないんだろう」と女友達の前で嘆くタイプ。大概が内心で自分よりもかわいくないと思ってる相手との会話で出てくる話で、「そんなことないよ! 〇〇ちゃんは私よりかわいいし、モテるじゃない」と相手に言わせるための自虐コメントです。

いうまでもありませんが、そんな友達にこのようなお人よしのコメントを返していたら、いつまでもマウンティングの餌食にされてしまいます。

ですから、たまには「え!? 〇〇ちゃん、心にもないことを。本当は、私より自分のほうがかわいいと思ってるんでしょ!」など〈あなたの本音はお見通しよ!〉というコメントを返してみるのもいいでしょう。多少の友好度合いと引き換えになるかもしれませんが、その人からのマウンティング攻撃はそれなりにおさまるはずです。

そもそもマウンティングの対象にされやすい人の傾向として

  1. 誰に対しても人当たりがいい人
  2. 自己主張が少ない

が挙げられます。

誰に対しても気を遣う、いわゆる「八方美人タイプ」は他人に嫌われることこそ少ないですが、マウンティングをしたがる人にとっては、格好のターゲット。どんなにマウンティングをしても反論される恐れが少ないので安心してできるからです。

そうした人にとって、たまには「自己主張」をすることが自分の身を守ることにもつながります。思い切って〈あなたの本音はお見通しよ!〉と言わんばかりの返事をしてみましょう。

マウンティング対処法3:SNS上のマウンティングにはリアクションしない

最近、SNS上でのさりげないマウンティングも目につきます。それこそありとあらゆるジャンルでマウンティング合戦が繰り広げられていますが、私が最近目にしたところだと「妻の誕生日会をこんな素敵なレストランでしている!」「結婚記念日をミシュランガイドに載るような店でお祝いしている」といった投稿です。

妻に感謝して、誕生日や結婚記念日のお祝いをするのは結構なことです。とはいえ「その感謝をSNS上の知り合いたちと分かち合う必要はまったくないのでは……?」とも思うのです。

仮に「とても美味しい店だったから、みなさんに紹介したい!」というのであれば〈目的は書かずにお店とそのメニューだけ紹介しておけば事足りるのでは……?〉と思いますし、逆にお祝い事をメインでシェアしたいのなら、それだけ書けば、見た人に変に妬まれることもなく「いいね!」と祝ってもらえると思うのです。

私もfacebookでそうした投稿を見たとき、以前までは「いいね!」を押していました。若干の迷いはありながらも、押さなかったら自分の心が狭いような気もしていたからです。

しかし、義理で「いいね!」を押すのも後味が悪く、そのうち〈なんでこんな投稿するんだろう?〉と思うぐらいなら「いいね!」を押さないがよほどいいように思えてきました。どう考えても「いいね!」とは思っていないのですから。

もちろん、そうしたマウンティング意図の有無にかかわらず、書きたい人は勝手に書いていいと思います。ただ、見る側の人は義理や複雑な感情を押し殺してまで、「いいね!」を押したり、お付き合いする必要もないでしょう。もしあなたが、SNS上の投稿をみて複雑な気持ちを抱えるのならば、精神衛生の観点からもリアクションしないことをお勧めします

これらの対処法が、マウンティングをしたがる人たちに一矢報いたり、かわしたりするきっかけになれば幸いです。

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