『文章を書く』ことの苦手を好きにかえる

「文章を書くことがストレスです」
「文章を書くことが苦手で……」
「文章を書くのに時間がかかります」

そんな「文章アレルギー」の人は多いのではないでしょうか? しかし、文章を書けるかどうかは、仕事の成果や周囲の評価に大きく関わります。

そんな文章に関する「困った」にやさしく応えてくれるのが、『そもそも文章ってどう書けばいいんですか?』を著書にもつ、山口拓朗さんです。

この連載では、これまでライターとして3000件以上の取材・インタビューを経験した中から導き出した、「書くことが嫌い」を「書くことが好き」へと変える、文章作成のコツを教えてもらいます。

著者プロフィール

山口拓朗(やまぐち・たくろう)

伝える力【話す・書く】研究所主宰。出版社で編集者・記者を務めたのちに独立。これまでライターとして3000件以上の取材・執筆歴を誇る。現在は執筆活動に加え、講演や研修を通じて、「書かずにうまくなる段取り文章術」「論理的に伝わる文章の書き方」「好意と信頼を獲得するメール文章術」「すらすら書ける文章テンプレート活用法」等、その日から使える実践的ノウハウを提供。また、2016年より中国の5大都市で「SuperWriter養成講座」を定期開催中。

著書に『そもそも文章ってどう書けばいいんですか?』『何を書けばいいかわからない人のための「うまく」「はやく」書ける文章術』(共に日本実業出版社)ほか多数。文章作成の本質をとらえたノウハウは言語の壁を超えて高く評価されており、中国、台湾、韓国など海外でも翻訳されている。

ダチョウ倶楽部に学ぶ「つかみ文章術」

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2020/04/01 16:48

(photo by TomoharuPhotography/photoAC)

一生モノのスキルになる! 『文章を書く』ことの苦手を好きにかえる方法<連載第26回>

伝える力【話す・書く】研究所を主宰し、「文章の書き方」に関する著書も多い山口拓朗さんに書き方のコツを教わります。今回は、一瞬で読む人のハートをつかむ「つかみの書き方」について。

笑いも文章も「つかみ」が9割?

この連載の一覧はこちら

「つかみはOK」といえば、ダチョウ倶楽部の人気ネタのひとつです。「つかみ」とは導入部分のことで、お笑い芸人にとって「つかみ」で笑いを取れるかどうかは極めて重要です。導入部でお客さんのハートをつかむことができれば、笑いが生まれやすくなり、反対にハートをつかみ損ねてしまうと、その後は苦戦を強いられます。

「つかみ」の重要性は、お笑い芸人に限ったことではありません。小説、劇や映画の脚本、スピーチ、プレゼンテーションなど、あらゆることに通じます。もちろん、文章作成にも同じことがいえます。

たとえば、次の2つの文を見比べてみてください。

【例文1】
人の興味を引く自己紹介の方法についてお伝えします。
自己紹介が苦手な方は、どうぞ最後までお読みください。
実は、自己紹介で最も大事なのは「第一声」です。

【例文2】
ずばり、あなたの自己紹介は、人に興味をもたれていません。
少しどころか、まったく興味をもたれていない可能性も“大”です。
実は、自己紹介で最も大事なのは「第一声」です

例文1と例文2の書き出し(1、2行目)を読み比べたとき、どちらが、続きの文章を読みたくなりますか? おそらく、ドキっとさせられた例文2ではないでしょうか。例文1は良くも悪くも平凡です。両者の差が「つかみ」の差です。

その続きにどれだけ有益な内容が書かれていても、「つかみ(=書き出し)」の吸引力が弱ければ、読む人はそこで読むのをやめてしまいます。最後まで文章を読んでもらいたなら、徹底して「つかみ」にこだわり、その吸引力を高める必要があります。

「つかみ」の役割は、読む人の感情を動かすこと

もうひとつ例文をご紹介します。

【例文3】
スマホ利用者が増えています。彼らは朝から晩まで、四六時中スマホを利用しています。

【例文4】
スマホの奴隷になる人が急増しています。彼らは朝から晩まで、四六時中スマホに人生を支配されています。

例文3と例文4の書き出しを読んだとき、続きの文章を読みたくなったのは例文4ではないでしょうか。極めて平凡な書き出しの例文3に対して、例文4では「スマホの奴隷が急増しています」や「四六時中スマホに人生を支配されています」という強い言葉が使われています。思わずドキっとした人、ゾっとした人、あるいは「わたしはスマホの奴隷なんかじゃない!」と、反発したくなった人もいるでしょう。

いずれにせよ、例文4の書き出しを読んだ人は、「この筆者は、どうしてこんなことを言うのだろうか?」と、その理由が気になり、続きを読み進めてしまうのです。例文3と例文4の差も、先ほどと同様に「つかみ」にあります。

「つかみ」の成否は、読者の反応次第

以下は、文章の「書き出し」を読んだときの読者の反応例です。このような反応が得られているようなら、おおむね「つかみはOK」といえるでしょう。続きの文章を読んでもらえる可能性が高まります。

へえ!/スゴい!/なにそれ?/ホント?/いいね!/ドキドキする!/ワクワクする!/おもしろい!/えー!(驚き)/怖い!/気になる!/自分に関係ある話だ!/役立ちそうだ!/新鮮!/ゾっとする!/笑える!/なんだと!

ご覧のとおり、すべての反応に「!」や「?」が付いています。つまり、感情が大きく動いている証拠です。

人は「感情の生き物」です。感情が動くと興味がわきやすくなります。つまり、文章の書き出しでは、よくも悪くも、読む人に「!」や「?」で反応してもらう必要があるのです。

人間の「欲」を刺激すると「!」や「?」が生まれる?

では、どうしたら、読む人に「!」や「?」で反応してもらうことができるのでしょうか? そのアプローチがよくわからないという人は、人間の「欲」について知っておくといいでしょう。以下は、人間がもっているさまざまな「欲」の一例です。

得したい/損したくない/知りたい/体験したい/成長したい/不満・不安・ストレスを解消したい/痛み・悩みから開放されたい/安定したい/便利になりたい/気持ちよくなりたい/自信を持ちたい/時間をかけたくない/ムダを省きたい/お金が欲しい/○○(モノや人)が欲しい/○○(技術など)を高めたい/○○の結果を出したい/効率をよくしたい/カッコつけたい/努力したくない(ラクしたい)/〇〇に縛られたくない/自由でいたい/安心したい/評価されたい/賞賛されたい/優越感に浸りたい/人によく見られたい/仲間になりたい/刺激が欲しい/懐かしさを感じたい/若返りたい・美しくいたい/癒やされたい/モテたい/愛されたい/SEXがしたい

このように人間にはさまざまな「欲」があります。どの「欲」が強いか(弱いか)は人によって異なります。成長欲求が強い人もいれば、承認欲求(人から「褒められたい」「認められたい」と思う欲求)が強い人、物欲や金欲が強い人もいます。大事なことは、自分の文章を読む人が、どういう「欲」を強くもっているかです。強い「欲」が刺激されると、人の感情は大きく動かされます。

【例文2】
ずばり、あなたの自己紹介は、人に興味をもたれていません。

例文2の「書き出し」にドキっとした人は、「損したくない」「○○の結果を出したい」「カッコつけたい」「評価されたい」「賞賛されたい」「優越感に浸りたい」「人によく見られたい」などの「欲」を刺激されたのかもしれません。

【例文4】
スマホの奴隷になる人が急増しています。

例文4の「書き出し」にドキっとした人は、「不安を解消したい」「ムダを省きたい」「効率をよくしたい」「○○に縛られたくない」「自由でいたい」などの「欲」を刺激されたのかもしれません。

もちろん、情報伝達を目的とする実務文の「書き出し」で、読む人の興味を引く必要はありません。一方で、人の心を動かす必要や、共感を誘う必要があるときには、「書き出し」に工夫を凝らしましょう。「つかみ」を制するものは文章を制します。

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そもそも文章ってどう書けばいいんですか?

「文章を書くことがストレス」「書くのに時間がかかりすぎる」「そもそも頭のなかにあることを文章にできない」……本書はそうした「文章アレルギー」のある人たちに、マンガを織り交ぜながら、わかりやすく文章の書き方をレクチャーしていきます。

著者:山口拓朗

価格:¥1,400-(税別)

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