脳の成長のためには家は散らかってもいい?

本棚の本を全部出して積み木のように重ねたり、ティッシュペーパーを次々と引っ張り出したり。親からすると「もう散らかさないで!」と言いたくなる子どもの行動ですが、これらは、自分が置かれた環境を探索しようとする意味のある行動です。

「アフォーダンス」という言葉を聞いたことはありますか? これはアメリカの知覚心理学者、ジェームス・J・ギブソンによる造語で、与えられた環境のさまざまな要素から人間の新しい行動や感情が生まれる、物と人との関係性を意味しています。

赤ちゃんの行動で言えば、手に取ったものはなんでも口に入れるという行動もアフォーダンスの一種です。また、歩きはじめたばかりの子どもが椅子やテーブルによじ登ろうとするのも、椅子やテーブルの形や環境にアフォーダンスを感じているからです。

「引っ張り出せる」「口に入れられる」「よじ登れる」。子どもは置かれた環境でこれらの可能性を感じて、試しているんですね。これはまさしく、脳がぐんぐん発達している瞬間なのです。

子どもの危なっかしい行動にはいつもヒヤヒヤさせられます。でもそれが脳の発達に必要なことなら、「危ないからやめなさい!」「汚いからだめ!」と叱ることも我慢できそうです。ティッシュペーパーをひと箱全部まき散らかしても、「いま、この子の脳はすごく成長しているんだ」と考えればイライラしなくなる、かもしれません(?)。

子どもの「邪魔をしない」ことがなにより大事!

そうはいっても、危なっかしい子どもの行動を見ていると、反射的に「ダメ!」と言ってしまう親も多いはず。茂木さんはそれも理解したうえで、親の「ダメ!」について「子どもの可能性を見つける『宝探し』という観点においては、決しておすすめできません」と述べています。理由は、自立心が乏しくなったり、自発性に欠ける子どもになってしまったりする恐れがあるからです。

0~5歳は、子どもの「学びたい」という欲求の黄金期です。そして、「歩くことができた!」「絵本を読むことができた!」「ボールをうまく蹴ることができた!」などなど、たくさんの小さな成功体験が、子どもの脳をぐんぐん育てるのだそうです。

そんな黄金期になんでもかんでも「やっちゃダメ!」といわれると、なにに対しても興味が持てない子どもになってしまうかもしれません。0~5歳の「やる気」は意外に削がれやすいのです。

茂木さんは本書で、「子どもの邪魔は決してしないで!」と繰り返し強調しています。子どもの「やりたい」「学びたい」を止めることなく、できるだけ見守って観察する。そうすればわが子の可能性という「宝」を見つけることができる。

「それやっちゃダメ!」と言いそうになったとき、茂木さんのアドバイスを思い出してみてください。「これは宝かもしれない」と考えることができれば、後の掃除や片づけも楽しくできるに違いありません。


茂木さんは同書で、脳科学者ならではの「かしこい脳の育て方」を語っています。家でもできる「アクティブ・ラーニング」のやり方や子どもの才能を開花させるほめ方、脳がぐんぐん育つ遊ばせ方など、奮闘するお父さんお母さんへのヒントが満載です。子育てに正解はありませんが、参考にしてみていかがでしょうか。