食事について聞かれることもありますが、「やせたいのなら夕食時に糖質を抜いてはどうですか」とアドバイスするくらいです。たしかに食事も大事ですが、気にしすぎないことです。鈍感もいけませんが過敏もいけません。

それに、仕事でも運動でも、ストイックに好きなことを我慢して、「おれ、がんばってる!」と自分で思っているうちはダメですね。必ず息切れして、続きません。

──ビジネスパーソンは会食やお酒の席が仕事、ということもありますよね。

そうです。そういう機会を犠牲するべきではないと思います。

4.「やけランニング」をしない

お酒ということでいうと、「やけ酒」ってありますよね。仕事がうまくいかないときなんかに、上司とか会社の悪口や、いっこうに前に進まない会話をしながら悪酔いするという。「お酒に逃げる」というやつですが、最近「ランニングに逃げてくる」人が多いんです。「やけランニング」ですね。

──とにかくストレスを発散するために。わかるような気がします。

ストレスを解消して、前向きな精神状態になることができればいいんです。酒の席でも、前向きな、いいお酒を飲むことだってできる。同じようにランニングも、正しく前向きに取り組めば得ることが多いのに、ただやみくもに、苦痛を感じながら走ろうとする人がいます。

つらくて、いずれケガが待っているだけですから、「やけランニング」はやめましょう。

5.やめそうになってもゼロにはしない

──ケガをしなくても、仕事や子育て、親の介護などで時間が取れなくなったり、モチベーションが低下したりして走ることをやめたくなる人も多いと思います。そんなときはどうすればいいでしょうか。

忙しい市民ランナーの皆さんはいつそうなってもおかしくないですね。そういうときには、ぜひ「ゼロにしない」でほしいんです。

飛行機は、着陸してしまうと次に離陸するときに相当なエネルギーが必要です。ランニングも、いったん完全にやめてしまうとなかなか再開できません。着陸せずに低空飛行を続ければいいんですが、真面目な人ほど完全に降りちゃうんですよ。中途半端なことはしたくない、ということで。

──少しずつでいいから続けるということですか?

走るのがキツイ、と感じたら、ウォーキングで十分です。時間がとれないのなら、今回の本で紹介しているようなストレッチや体幹スイッチエクササイズを、短い時間でストレスを感じない程度に続ける。それだけでも全然違いますよ。

僕が長く個人指導している方の中には、「44歳運動経験なし」のまったくのゼロから始めて4年でサブスリーを達成した人や、71歳でトライアスロンにデビューした人もいます。彼らは決して、ハードなメニューをこなしたわけではありません。仕事や家庭を優先したうえでプランを組んで、無理なく前向きに取り組んだ結果です。普通の市民ランナーに比べても、練習で実際に走っている距離は少ないでしょう。

──なるほど。市民ランナーにとって、「ランニング命!」は百害あって一利なし、ということがわかりました。

「上手なランニングの嗜み方」を知っていれば長く続けることができるし、そういう人は例外なく、仕事も家庭も大切にしています。どうか夢中になり過ぎず、楽しくランニングしてほしいと思います。

──ありがとうございました!


青山 剛(あおやま たけし)

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1974年東京都出身。パーソナルコーチングシステム「Team AOYAMA(チームアオヤマ)」代表、(公社)日本トライアスロン連合強化チーム・指導者養成委員。日本体育大学入学後、トライアスロン競技をスタートし、1999年に日本代表に選出される。同年半ばからトライアスリート中西真知子選手のコーチを務め、同選手を2004年のアテネ五輪出場に導く。 現在は、ランニング、トライアスロン、クロストレーニングのプロフェッショナル・コーチとして、競技者だけでなく初心者、子ども、タレント、経営者まで幅広く指導している。
著書に『走らないランニング・トレーニング』(マイナビ出版)、『どんどん走れる体になる! 青山剛のスイッチ・ランニング』(高橋書店)などがある。

ホームページ
http://www.coach-aoyama.com/