『文章を書く』ことの苦手を好きにかえる

「文章を書くことがストレスです」
「文章を書くことが苦手で……」
「文章を書くのに時間がかかります」

そんな「文章アレルギー」の人は多いのではないでしょうか? しかし、文章を書けるかどうかは、仕事の成果や周囲の評価に大きく関わります。

そんな文章に関する「困った」にやさしく応えてくれるのが、『そもそも文章ってどう書けばいいんですか?』を著書にもつ、山口拓朗さんです。

この連載では、これまでライターとして3000件以上の取材・インタビューを経験した中から導き出した、「書くことが嫌い」を「書くことが好き」へと変える、文章作成のコツを教えてもらいます。

著者プロフィール

山口拓朗(やまぐち・たくろう)

伝える力【話す・書く】研究所主宰。出版社で編集者・記者を務めたのちに独立。これまでライターとして3000件以上の取材・執筆歴を誇る。現在は執筆活動に加え、講演や研修を通じて、「書かずにうまくなる段取り文章術」「論理的に伝わる文章の書き方」「好意と信頼を獲得するメール文章術」「すらすら書ける文章テンプレート活用法」等、その日から使える実践的ノウハウを提供。また、2016年より中国の5大都市で「SuperWriter養成講座」を定期開催中。

著書に『そもそも文章ってどう書けばいいんですか?』『何を書けばいいかわからない人のための「うまく」「はやく」書ける文章術』(共に日本実業出版社)ほか多数。文章作成の本質をとらえたノウハウは言語の壁を超えて高く評価されており、中国、台湾、韓国など海外でも翻訳されている。

誤読を生まない「修飾語」「被修飾語」の並べ方

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2020/03/04 16:09

(photo by newgin/photoAC)

一生モノのスキルになる! 『文章を書く』ことの苦手を好きにかえる方法<連載第25回>

伝える力【話す・書く】研究所を主宰し、「文章の書き方」に関する著書も多い山口拓朗さんに書き方のコツを教わります。今回は、並べ方を間違えると誤読をうむ「修飾語」「被修飾語」について。

読む人の誤読を招く「悪文」の原因とは?

この連載の一覧はこちら

あなたが書く文章の修飾語と被修飾語は離れすぎていませんか? 修飾語と被修飾語が離れすぎていると、意味の結びつきがわかりにくくなり、誤解や誤読を招きやすくなります。文章を書くときには、読む人の理解度が低下しないよう、修飾語と被修飾語の配置を適正化しましょう。

【例文1】
無責任な主任の発言
【例文2】
主任の無責任な発言

例文1と2では「無責任な」という言葉の“かかり先”が違います。例文1は「主任」と「発言」のどちらにかかっているかがよくわかりません。一方、例文2の「無責任な」は、明らかに「発言」にかかっています。

もしも、主任がたまたま無責任な発言をしただけなら(いつもは責任ある発言をしているなら)、例文1の書き方では誤解が生じます。「主任=無責任な人」と読めてしまうからです。正確に伝えるためには、例文2のように「無責任な」が「発言」以外にかからない並び順にする必要があります。

「修飾語」と「被修飾語」の配置原則とは?

別の例文をご紹介します。

【例文3】
新しい若手社員向けのA社で開発された研修です。

意味がわかりそうでわからない。フラストレーションを感じる文章ではないでしょうか。どうやら書き手は、以下1〜3のように「研修です」に3つの言葉をかけたかったようです。

1.新しい→研修(=新しい研修)
2.若手社員向けの→研修(=若手社員向けの研修)
3.A社で開発された→研修(=A社で開発された研修)

しかし、例文3の書き方では、そうは読めません。「新しい」が「若手社員」にかかっているように見えます。同様に「若手社員向けの」が「A社」にかかっているように見えます。

修飾語と被修飾語の関係がわかりにくくなったときは、言葉の“かかり先”を明確にしたうえで、以下の原則をあてはめます。

原則1:「<節>を含む修飾語→<句>の修飾語」の順に並べる
原則2:「長い修飾語→短い修飾語」の順に並べる

<節>とは1個以上の述語を含む複文のことで、<句>とは述語を含まない文節(文の最小単位)のことです。

原則1と2に従って、例文3を並べ替えてみます。

【例文3の修正文】
A社で開発された若手社員向けの新しい研修です。

「A社で開発された」が<節>にあたるため、文頭に配置し、そのうえで、修飾語が「長い→短い」の順で、「若手社員向けの→新しい」と並べました。

不自然さが消える形で文章を最適化する

もっとも、原則はあくまでも原則です。最優先すべきは「意味の結びつき」です。原則どおりに並べても、(修飾語がほかの言葉にかかっているように見えるなど)読む人の誤解を招きそうなときは、改善しなければいけません。

同じ言葉にかかる修飾語が複数あるときは、以下の手順で、修飾語と被修飾語の最適化を図りましょう。

1.原則どおりに並べる
2.前後の言葉との“意味の結びつき”を確認する
3.誤読されそうな要素があれば、原則を無視して文章を再構成する

実は、先ほどの「例文3の修正文」も、ものすごく読みやすいかといえば、そうともいえません。「A社で開発された」が「若手社員」にかかっているようにも見えるからです。

もちろん「A社で開発された若手社員」という言葉が不自然なため、読む人の多くが、「A社で開発された」の“かかり先”が「研修」であると判断するでしょう。しかし、読む人に一瞬でも不自然さを感じさせてしまった時点でアウト。何かしらの工夫を凝らして、不自然さを消す必要があります。

【例文3の修正文】
A社で開発された若手社員向けの新しい研修です。

【例文3の修正文をさらに修正】
A社で開発された、若手社員向けの新しい研修です。

「A社で開発された」と「若手社員向けの」の間に読点(、)を打つことにより誤読のリスクを減らしました。

ほかにも、文章を解体・分割する方法があります。

【例文3の修正文】
A社で開発された若手社員向けの新しい研修です。

【例文3の修正文をさらに修正】
若手社員向けの新しい研修です。この研修はA社が開発しました。

このように、文章を分割することで、誤解や誤読を回避できるケースも少なくありません。「修飾語を並べ替える」や「読点を打つ」という処置とあわせて検討しましょう。

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そもそも文章ってどう書けばいいんですか?

「文章を書くことがストレス」「書くのに時間がかかりすぎる」「そもそも頭のなかにあることを文章にできない」……本書はそうした「文章アレルギー」のある人たちに、マンガを織り交ぜながら、わかりやすく文章の書き方をレクチャーしていきます。

著者:山口拓朗

価格:¥1,400-(税別)

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