『文章を書く』ことの苦手を好きにかえる

「文章を書くことがストレスです」
「文章を書くことが苦手で……」
「文章を書くのに時間がかかります」

そんな「文章アレルギー」の人は多いのではないでしょうか? しかし、文章を書けるかどうかは、仕事の成果や周囲の評価に大きく関わります。

そんな文章に関する「困った」にやさしく応えてくれるのが、『そもそも文章ってどう書けばいいんですか?』を著書にもつ、山口拓朗さんです。

この連載では、これまでライターとして数多くの取材・インタビューを経験した中から導き出した、「書くことが嫌い」を「書くことが好き」へと変える、文章作成のコツを教えてもらいます。

著者プロフィール

山口拓朗(やまぐち・たくろう)

伝える力【話す・書く】研究所所長。山口拓朗ライティングサロン主宰。出版社で編集者・記者を務めたのち、2002年に独立。26年間で3600件以上の取材・執筆歴を誇る。現在は執筆活動に加え、講演や研修を通じて、「1を聞いて10を知る理解力の育て方」「好意と信頼を獲得する伝え方の技術」「伝わる文章の書き方」などの実践的ノウハウを提供。著書に『「うまく言葉にできない」がなくなる 言語化大全』(ダイヤモンド社)、『マネするだけで「文章がうまい」と思われる言葉を1冊にまとめてみた。』(すばる舎)、『1%の本質を最速でつかむ「理解力」』『9割捨てて10倍伝わる「要約力」』『何を書けばいいかわからない人のための「うまく」「はやく」書ける文章術』(以上、日本実業出版社)、『伝わる文章が「速く」「思い通り」に書ける 87の法則』(明日香出版社)、『ファンが増える!文章術——「らしさ」を発信して人生を動かす』(廣済堂出版)ほか多数。

「事実」と「意見」が混同した文章は、なぜヤバいのか?

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2018/10/03 17:11

(photo by Hades/photoAC)

一生モノのスキルになる! 『文章を書く』ことの苦手を好きにかえる方法<連載第8回>

伝える力【話す・書く】研究所を主宰し、「文章の書き方」に関する著書も多い山口拓朗さんに書き方のコツを教わります。今回は文章を書くときに起こりがちな、「事実」と「意見」の混同について。

「意見」を「事実」として書くのは、大問題

この連載の一覧はこちら

あなたは「事実」と「意見」を混同していませんか? ことビジネスシーンにおいて、文章を書くときに「事実」と「意見」を明確に線引きすることは極めて重要です。両者を混同すると、読む人に「いい加減(悪い意味で)」「不正確」「ウソつき」と思われる恐れがあります。混同をくり返せば、信用を落としたり、不信を買うこともあります。

以下は「事実」と「意見」の違いです。

【事実】
・本当にあった
・現実に存在する
・調査・実験・検証などで必ず確認できる
・世の中の多くの人が「そう」だと認識している
・「正しいor 正しくないか」のどちらか

【意見】
・自分の考え(憶測も含む)
・自分の判断
・調査・実験・検証などで確認できないものもある
・世の中の多くの人が「そう」だとは認識していない
・「正しいor 正しくないか」を決められないこともある

文章を書くときには、いつでも、書いている事柄や物事が「事実」か「意見」かを冷静に見極める必要があります。

理由を明確に書くことで、「事実」と「意見」をはっきりさせる

その革靴は2万円と安かった。

この文章に疑問をもった人は、おそらく「事実」と「意見」の境界線が見えている人でしょう。「革靴が2万円」だったのは、紛れもない事実でしょう。一方で、それが「安い」かどうかは書き手の主観的な評価・判断にすぎません。

2万円という価格を安いと感じる人もいるかもしれませんが、高いと感じる人もいるでしょう。それにもかかわらず、まるで「革靴2万円=安い」が事実であるかのような書き方をしています(多くの人が革靴を「安い」と感じるのは3000〜5000円程度でしょうか?)。 

「事実」と「意見」の違いに敏感な人のなかには、この文章を読んだときに「デタラメだ」と感じる人もいるかもしれません。最悪、「この人は自分の意見を、あたかも事実のように書く信用ならない人だ」と思われてしまう恐れもあります。「事実」と「意見」を混同して書くことは、読む人にとってはもちろん、書き手自身にとっても大きなリスクなのです。

では、この文章をどう修正すれば、「事実」と「意見」の混同を避けることができるでしょうか。

【修正文1】
そのリーガルの革靴は2万円だった。リーガルの相場からすると安かった。

【修正文2】
その革靴は2万円だった。私が愛用している革靴のなかでは安いほうだ。

【修正文3】
その革靴は2万円だった。安いと思った。

修正文1〜3にも「安い」という言葉は使われていますが、それと同時にその理由も明確にしています。

・リーガルの相場からすると安かった。→ブランドの相場を調べたのであれば事実
・私が愛用している革靴のなかでは安いほうだ。→体験として事実
・安いと思った。→「思った」と書いてあるので意見

このように、事実は事実、意見は意見として、それぞれ明確に分けて書くことによって読む人が理解・納得しやすい文章になります。

「意見を事実だと思い込むクセ」を直すには……

「事実」と「意見」を混同した書き方は、ときに読者をミスリード(誤解させること)する役割を果たします。これをあえてテクニックとして悪用する人もいますが、そんなテクニックに溺れれば、いずれ、その人は信用を失うことになるでしょう。ビジネスシーンで書く文章で大事なのは、読む人の誤解を招くことなく、事実は事実として、意見は意見として、それぞれ正しく伝えることです。

「事実」と「意見」を混同した例をご紹介しましょう。

残業の多い会社に勤めるかわいそうな彼は〜
※「かわいそう」かどうかはわかりません。【書き手の主観・憶測が強い】

誰からも愛されている東野圭吾の小説は〜
※「誰からも」というわけではありません。【一般化しすぎ】

スティーブ・ジョブズはアメリカ史上最も偉大な経営者である。
※「アメリカ史上最も偉大」と言われると同意し難い人もいるでしょう。【書き手の主観・憶測が強い】

日本は島国ゆえ日本人は魚料理が大好物だ。
※「島国ゆえ」という根拠に疑問が残ります。そもそも「日本人は魚料理が大好物だ」と言い切るのも少し乱暴です。【書き手の主観・憶測が強い】 

上記は、あたかも事実であるかのように意見を語った文章です。ミスリードを誘うやり口もよくありませんが、書き手自身が「意見を事実だと思い込んでいるケース」もやっかいです。本人が無自覚だとしたら、そのクセを直しようがないからです。

「意見を事実だと思い込むクセ」を直すためには、書き手自身が「事実と意見の区別ができていないこと」に気づく必要があります。自覚することができれば、治すことも難しくはありません(「事実」と「意見」を分けて考える意識が芽生えるため)。この記事が、その自覚を促す一助になれば幸いです。

もっとも、「事実」と「意見」が一緒くたになった文章は、世の中に掃いて捨てるほどあります。それらのなかには、書き手が意図して書いたものもあれば、そうでないものもあります。したがって、読む側は、その文章を読みながら、冷静に「何が事実で何が意見なのか」を見極めていく必要があります。そうした眼力を磨くことによって、自分が文章を書くときに「事実」と「意見」を上手に書き分ける能力も磨かれていきます。

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そもそも文章ってどう書けばいいんですか?

「文章を書くことがストレス」「書くのに時間がかかりすぎる」「そもそも頭のなかにあることを文章にできない」……本書はそうした「文章アレルギー」のある人たちに、マンガを織り交ぜながら、わかりやすく文章の書き方をレクチャーしていきます。

著者:山口拓朗

価格:¥1,400-(税別)

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