部下の考えていることがよくわからない、
価値観があわない、
やる気がない部下に困り果てている、
パワハラ扱いされないだろうか――。

そんなあなたも「伝え方」を少し変えるだけで「できる上司」になります。
(『できる人が絶対やらない部下の動かし方』より)

これは、パナソニックや三越百貨店、日本生命など、多数の大企業から「部下育成」の講師として絶大な支持を集める武田和久さんの言葉。しかし、武田さんもかつてサラリーマンだった時代に、部下との関係で悩んだ時期があるそうです。

その中で気づいたのは「人は理屈通りには絶対に動かない」ということ。この気づきから、部下への指示の仕方を変えたことで、見違えるほど部下が自分から動きだすようになったそうです。

武田さんのノウハウを初公開した著書『できる人が絶対やらない部下の動かし方』より、部下との誤解や気持ちのすれ違いをなくす「伝え方」のポイントをみてみましょう。

「すぐにこの資料を作っておいてくれ!」では反発を招く

人が減っているのに、仕事量は増える一方という職場が増加しています。たとえば、人的余裕がないため新入社員に仕事をふることもできない、いわゆる放置プレイが発生する状況も最近の問題となっているようです。

その中で、上司から部下へ仕事を依頼する際、「君は手が空いているだろ、この案件を至急やってくれ!」と頼んだところ、部下から明らかに嫌な顔をされることがあります。

任せる側としては「仕事だろ。なんでもっと快く引き受けてくれないんだ」と、イライラしてしまいます。同じようなことが続くと、「そんなに嫌なら、もう頼まないよ」と上司自身が仕事を抱え込んでしまうケースも少なくありません。

これでは部下の成長だけではなく、上司自身のマネジメント能力をも伸び悩ませることになります。

ここからわかるのは、上司としての「権限」や「立場」を利用した仕事の指示では、部下は「こちらの都合も気にしないで」と反発を感じてしまうということです。そこでポイントとなるのが、信頼をベースとした「相談」というかたちをとり、部下への依頼を行なうことです。

「○○君、この案件なんだけど、どうしたらいいと思う?」「力を貸してくれないかな?」。このように自分より上の立場の人から相談されると、部下は「信頼されている」「認められている」と感じます。

大切にされ、必要とされていることが伝わったとき、部下はやりがいを持って仕事に取り組んでくれるようになります。

「何回言ったらわかるんだ!」では、わかったつもりのまま

上司は忙しい中で、部下に指示や情報共有を行ないながら、目標達成のためのサポートを行ないます。にも関わらず、何度も同じことを聞いて来たり、指示とは異なる働きをする部下が少なくないのではないでしょうか。

その背景には、お互いの認識や理解のズレがあります。

指示をズレたまま理解している部下に「何回言ったらわかるんだ!」と叱責したとしたら、「言われた通りやっているのに」と反発されるでしょう。

多くの上司は「部下にきちんと伝えた。だから、部下はきちんと理解している」と考えがちですが、武田さんによるとそれは大きな勘違いだとか。上司からの「一方的な情報共有」では、間違いなくズレが生じてしまいます。人によって感じ方や受け止め方に違いがあるのは当然だからです。