メリハリが難しいテレワーク、どう切り替える?
新型コロナウイルスの影響で不要不急の外出を控えるなか、テレワーク、時差通勤、遠隔教育を始める人が増えました。
テレワークによって「通勤時間がなくなりストレスが減った」という意見もある一方で、
・メリハリをつけるのが難しくリフレッシュできない
・「やろう!」と思っていたことはたくさんあるのに、ついダラダラして進まない
・家族と一緒の部屋で仕事をしているので集中力が続かない
・不安感からついTVやSNSでコロナ関連のニュースを見てしまい、仕事が止まる
などといった悩みもよく聞きます。
今まで「通勤」「対面での仕事」「職場で同僚と一緒にデスクで仕事を頑張る」という、ある意味「意思」や「やる気」を出さなくても良い「強制力」によって、仕事の生産性を上げてきました。その強制力が急になくなり、自分でなんとか頑張らないと回らない状態に放り出されてしまったのが今なのです。
そこで、朝活の第一人者であり『「朝1時間」ですべてが変わるモーニングルーティン』の著者・池田千恵さんに、テレワークでも生産性を落とさないタスク管理の習慣について聞いてみました。
「朝1時間のタスク分け」で1日のパフォーマンスをUP!
慣れないテレワークで生活のリズムが狂ってしまい、仕事やプライベートでやりたいことがなかなか進まないとき、意思が弱い、時間の使い方が悪いと自分を責めてしまう人も多いです。しかし、スーパーマンでない限り「意思」や「やる気」で物事を進めることは難しいもの。行動科学の専門家によると、運動や勉強、または何かの習慣を「意思」や「やる気」だけで継続できる人は、世の中のたった2%だそうです。
今まで慣れ親しんだ仕事のやり方を大きく変えなければいけない今こそ、「意思」や「やる気」に頼らず、「仕組み」としての生産性向上策を日常に組み込むことが大切になってきます。
そこで私が提案するのは、「朝1時間」を30分:30分の1セットに分けてルーティン化することです。
30分:30分の内訳は、次のようなものです。
【後半30分】なりたい自分を目指す未来づくりのために使う
現在と未来の両方のモヤモヤを、「朝1時間」で集中してスッキリさせることにより、仕事も効率が劇的にアップし、先が見えない世の中でも、将来についてしっかりと考えることができるようになります。
「意識低い系」ほどモーニングルーティンが必要な理由
最近はYoutubeで芸能人や有名人が美容や健康に良い朝の習慣を「モーニングルーティン」としてアップしていることから、「モーニングルーティン」というと「意識高い」人がやっていることに思われがちですが、むしろ「意思が弱い・意識が低い」を自覚している人ほど、「朝1時間」をルーティン化することをおすすめします。なぜなら、「ルーティン」とは、半自動的に結果がでるようなパターンをラクに実施するための「時間割」だからです。
朝のスッキリとした頭で、邪魔が入らない状態のうちに一度時間割を決めれば、あとは決めたタスクを迷いなく進めるだけなので、余計な情報に惑わされて作業を中断してしまう誘惑も断ち切ることができます。
タスク整理は簡単な3ステップ
では具体的にどのようにすれば良いでしょうか。主なステップは3つです。
2.1を次の4色に色分けする
3.後半30分で色分けして見つかった「緊急ではない×重要なこと」に取り組む
書き出したタスクは、4色ボールペンを活用し、以下のように分類していきます。
・緊急×重要:刈り取りの緑
・緊急×重要でない:間引きの青
・緊急でない×重要でない:塩漬けの黒
緊急でない×重要なものは、忙しさに流されておろそかにしがちなのですが、サボると将来へ大きく影響してしまう最も重要なものです。日々の取り組みが大切で将来花が咲き、実をつけるイメージなので「種まき」と名付け、重要度を示す赤で色をつけます。
緊急×重要なものは、今目の前の生活や仕事に直結するものという意味で「刈り取り」と名付け、刈り取りをイメージさせる緑で色をつけます。
緊急×重要でないものは、やらなくても本当は大きな影響はないけれど、目の前の状況のせいですぐに取りかからなければいけない気持ちになるものです。急ぎでない電話やメールなどはこれにあたり、空いた時間でまとめてこなせばいいものです。「間引き」と名付け、青で色をつけます。
緊急でない×重要でないことは、そもそもやっている意味がないまま思考停止で続けているものなので「塩漬け」と名付け、黒で色をつけます。
「朝1時間」でリスト化が済んでおけば、頭の中でぼんやりしている「やるべきこと」が見える化でき、すべきことが自動的に決まってくるため、急な相談や突然のトラブルで仕事が中断したとしてもすぐに「すべきこと」に戻ってくることができます。「朝1時間」でタスク化が終わっていれば、すべきタスクを粛々と進めるだけなので、考える作業を中断されたことによるイライラは少なくなります。
第1〜第4優先までをはっきりと色分けすると「優先度が一番低い」タスクが明確になるので、「間引き」や「塩漬け」を消すことができなくても自分の意思の弱さを嘆く必要がなくなります。反対に「優先度が一番高い」タスクをたったひとつ消すことができただけで「一番大切なことを今日はやりきった!」と感じるため、1日の満足度も高まります。
自分を奮い立たせる習慣こそ「モーニングルーティン」
「朝1時間」のタスク管理を習慣化することができると、朝があなたの「ピークマネジメント」の時間となります。「ピークマネジメント」とは、アスリートが試合の本番に自分を最高の状態に持って行くために、いつもの「勝ちパターン」を儀式として行うことをいいます。
自分が「のってくる」状況を意識的につくる儀式として朝1時間をタスク管理に充てていきましょう。タスク管理で「この行動で私はうまくいった」というパターンを繰り返すことによって、自分で自分に良い暗示をかけることができます。
何も考えずに自然と身体が動いてしまうような習慣となれば、余計な雑念にとらわれずに行動の幅が広がります。心理学者ミハイ・チクセントミハイは周囲のざわめきが気にならないくらい思いきり物事に集中している状態を「フロー状態」と名付けました。朝の1時間でタスクを段取りする行為を「フロー状態」でつくることができれば、朝イチから「このタスクを今日1日でクリアするぞ!」という気持ちが高まります。
毎日の「モーニングルーティン」を理想の状態に整えることが、先が見えない時代に最も確実に自分を変える方法なのです。
さらに詳しい方法については『「朝1時間」ですべてが変わる モーニングルーティン』をご覧いただけますと幸いです。ぜひ、お読みください。
池田 千恵(いけだ ちえ)
朝イチ業務改革コンサルタント。外食ベンチャー企業、外資系戦略コンサルティング会社を経て、2009年に『「朝4時起き」で、すべてがうまく回りだす! 』(マガジンハウス)を刊行。
ベストセラーとなり、「朝活の第一人者」と呼ばれるようになる。「朝1時間」の業務改革による生産性向上、働き方改革のための手法を企業に指導しているほか、個人に向けてはキャリアに迷ったとき自分の将来を真面目に楽しく語り、学びたい人向けの朝活コミュニティ「朝キャリ」を主宰。