今、ビジネスシーンで注目されているキーワードがあります。「ディスラプション」です。これは、今までのルールを壊し、新しい常識をつくることを指す言葉なのですが、私は、効率を追求することは、「小さなディスラプション」の繰り返しだと考えています。(はじめにより)

こう主張しているのは、『仕事の速い人が絶対やらない段取りの仕方』の著者である伊庭正康氏です。

たとえば、「当たり前のように作成している会議の資料をなくす」という提案もディスラプションの1つ。「資料をできるだけ速く作成する」のではなく「資料そのものをなくす」ことがポイントです。ムダをなくすための思い切った具体策を実行することで、仕事のスピードは格段に上げることができるのです。

といっても、今まで行なってきた仕事の「当たり前」を変えようとするのは、難しく感じるものです。そこで今回は第4章「資料・メール作成の時間を圧縮させる」に焦点を当て、クオリティの高い仕事を短時間でこなすためのコツをみてみます。

資料の作成は5分で済ませる

報告書や企画書、これらをイチから作成していませんか? 資料の作成は「差し替え」で対応することで、作業の負担を軽くすることが可能になります。そこで使うのは「ワンソース・マルチユース」という、1つの素材を多重利用するという手法です。

具体的には、企画書や報告書のマスターとなる文章の骨格を作成しておき、必要に応じて「一部差し換え」ることで、しっかりとした資料を短時間で作成できるようになります。

たとえば企画書であれば、書き出しの定型文や、提示すべき項目の型を用意することで、作成の手間が驚くほど変わるはずです。資料の価値は工程の手間ではなく、「わかりやすさ」だということを意識し、この方法を取り入れてみましょう。

社内の連絡メールは本文を省く

「T/O」メールをご存知でしょうか? タイトルオンリーで済ませるメールのことで、今ではグローバルスタンダードの方法として広まっています。

社内でやり取りするメールなら、この「件名だけ」で済ませるのが賢い選択です。なぜなら、

  • 作成するほうもラク(入力を圧倒的に削減できる)
  • 受け取るほうもラク(受信トレイだけで内容がわかるので、開封の手間が不要)

というように、書き手と受け手、両方の負担を減らすことができるからです。伊庭氏自身も会社員時代に実行し、この効果は絶大だったとか。

「本文を書かないなんて……」と、一見すると非常識のように思う人もいるかもしれませんが、社内の連絡メールに余計な時間をかけないのが本来の鉄則のはずです。送信の手間、開封の手間を考えると、すぐに実行すべき方法だといえます。

「音声入力」でスキマ時間を有効活用する

スマホに搭載されている音声入力機能を使ったことがありますか? 技術が進化した今、ちょっとしたメールの返信なら音声入力で対応可能です。この機能を使うことで、信号やエレベーターの待ち時間など、ちょっとした隙間時間を有効活用できるようになります。

「一人でつぶやくなんて恥ずかしい……」と思う人もいるかもしれませんが、使ってみるとその便利さに驚くはずです。簡単な内容なら、10~25秒あればメールの作成ができてしまいます。さらにパソコンを立ち上げられないときや、歩いているときなど、場所や状況に縛られることもなくなります。

つぶやくと文字になって現れる、覚えておくと便利な「音声入力フレーズ」を以下にあげます。ぜひ今日から、快適な音声入力ライフを始めてみてください。

  • 「 」 …… かぎかっこ、かぎかっことじる
  • ( ) …… かっこ、かっことじる
  • 。、・ …… まる、てん、なかぐろ
  • 改行する際 …… かいぎょう
  • 10:00-11:00 …… じゅう、ころん、ぜろぜろ、ハイフン、じゅういち、ころん、ぜろぜろ
  • ※ …… こめじるし

(162ページより)

メールの「やり取り」の回数を増やさない

何往復ものメールのやり取りは極力避けたいものです。度重なる修正や同じ内容の確認といったやりとりは、1日数通だとしても積み重なれば大きなムダにつながります。

そこでこの段取りをシンプルにするために「お任せします」「お任せいただいてよろしいですか?」の2つのフレーズを使ってみましょう。

際限なく続きそうなとき、メールの内容を「この条件でかしこまりました。後は、お任せいただく流れでいかがでしょうか」などと返信し、責任を引き受けるのです。逆に「ここからは、お任せしますのでお進めください」と、相手に仕事をゆだねてみるのもいいでしょう。

このように責任の所在を明確にすることで優柔不断な相手とのメールのやり取りを止めることができます。また、「信頼感」をお互いにもって仕事を進めることは、プラスになるはずです。

ただし、どちらの場合も、後で「そうじゃなかった」とならないために「Must(絶対に必要なこと)・Want(あれば嬉しいこと)・NG(これだけは避けたいこと)」の3点はしっかりと確認しておきましょう。

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「打合せの資料はできるだけ丁寧に」「メールの返信は内容が固まってから」。これらは、よかれと思っての行動ですが、あえて視点を変えることで、自身だけでなく周りの人の手間やムダを減らす方法がみつかります。

一生懸命頑張っているのに、なぜか上手くいかない。いつも期限に間に合わず、常に仕事に追われている……。『仕事の速い人が絶対やらない段取りの仕方』は、そのような人に様々な仕事を効率化する、「ディスラプション」を提案してくれる1冊となるはずです。