「この資料、なんだか読みにくいんだよね……」

このような、指摘をよく耳にしませんか。とくにこの春から、社内会議や取引先との商談などの局面で資料作成を任される機会の増えた若手にとっては、悩みの種かもしれません。

2017年4月11日、『できる人が絶対やらない資料のつくり方』(日本実業出版社刊)の出版記念イベントでは、そんな若手のビジネスパーソンに向け、著者である清水久三子さんが資料作りで気をつけるべきポイントについて解説してくれました。

ここでは、そのイベントの一部をお届けします。(文責:日本実業出版社)

 「ノイズカット」と「フォーカス」が、伝わる資料には必要

司会:最初に清水さんの簡単なプロフィールを紹介します。大手アパレル企業を経て、1998年に外資系コンサルタントに入社、企業変革戦略コンサルティングチームのリーダーとしてご活躍され、その中で培われた成功事例が多くのメディアに取り上げられました。2013年に独立され、現在はプレゼン資料作成の分野で抜群の人気をほこるコンサルタントとして活躍されています。

今回は新刊書籍の中から、とくに若手のみなさんが陥りやすい資料作成の誤った進め方、おしい考え方などを明らかにして、「ちょっとした改善法でライバルに差をつけることができる、伝わる資料」を作成するポイントを紹介してくださいます。

それでは清水さんよろしくお願いいたします。

(会場拍手)

清水氏:みなさん、こんばんは。ただ今、ご紹介にあずかりました清水久三子と申します。

実は私、これまでに13冊の本を出版していまして、そのうちの7冊が資料作成やプレゼンテーションといったものをテーマとしています。そういう意味で、「資料作成」は自分の代名詞ともいえ、今回の新刊は集大成という思いで書いた1冊です。

情報量が年々増加する中、大切なのは……

資料作成はいろいろな本が出ていることからもわかるように、ニーズが高く、重要性が高まっているテーマかと思います。その一つの背景として、情報量の変化が非常に大きいと思っています。

みなさん、考えてみてほしいのですが、メディアから受け取る情報量は10年間でどれぐらい増えたでしょうか?

ちょっと手を挙げていただきたいんですが、10年間で10倍くらい、20倍くらい……、50倍、100倍、それ以上。

(50倍に多く手があがる)

それ以上の方はいらっしゃらないですね。実は532倍ぐらいです。テレビや広告、SNSなど、大きくメディアというくくりにおいては、みなさんが思っていらっしゃる以上に増えています。

さらにつけ加えると、みなさんがお仕事で使っている、メールやワード、エクセル、パワーポイントといった企業内で流通する情報量は、8年間で約9倍にもなっています。

このような情報の洪水のなかで、何に気をつけて資料をつくればいいのか、それは「ノイズカット」「フォーカス」です。

「ノイズカット」とは、文章や表、グラフ、図から、伝えたいメッセージに直接関係のない文字や線、色などの余計な情報や演出を徹底的に削除しましょうという考え方です。

みなさんも経験があるかと思うのですが、なんとなくグラフをつくると、たくさんの色づかいや余計な線など、推敲されていない文章と同じように、いろいろなノイズが入ってしまっています。

本当に伝えるべきこと以外は、徹底的にカットしていきましょうというのが資料づくりのポイント1つめです。

「ノイズカット」をしたうえで、次に大切なのが「フォーカス」です。資料で相手に伝えたいことを強調するため、表現にコントラストをつけインパクトを出す。「ここが一番伝えたいことですよ」と、読み手からの視線を集める。これがフォーカスの考え方です。

コントラストを意識したときにやってしまいがちなのが、非常にきつい色、赤や黄色や大きい矢印、そしてよくある爆発マークなどで視線を誘導する方法ですが、これはオススメしません。

これらの方法でコントラストを強めても、使えば使うほど、重要な情報というのは薄れていってしまいます。なので、できるだけノイズを減らして、気づいたら重要なところに視線がいっていた……。そう誘導するのが1番いいフォーカスの仕方なのです。