メールは、送るタイミングと読むタイミングが同時ではない「非同期コミュニケーション」です。返信は相手のタイミングとなるため、メールのやりとりの進み具合が相手に依存するのは仕方がありません。
(『外資系コンサルは「無理難題」をこう解決します。』120ページより)

現役外資系コンサタントとして活躍するかたわら、月間10万PVの人気ブロガーとしてビジネスノウハウを発信しているNAEさんは著書の中でこう述べています。

しかし、友達同士のたわいのないやり取りならまだしも、ビジネスの現場では、問い合わせや依頼に対する返信がないと仕事が先に進まず、ただ時間が無駄に過ぎてしまうことに……。そんな、「日常の仕事の困ったこと」を解決する方法を教えてくれるのが、NAEさんの近著『外資系コンサルは「無理難題」をこう解決します。』です。

本書は、「IT企業のコロニー社に勤める泉くんと君島さんが、同じ部署の先輩のアドバイスを受けながら、部長からの『無理難題』に挑んでいく」というストーリーで進んでいきます。今回はCHAPTER3の中から、メールのやりとりを効率化するテクニックを見てみましょう。

読ませる極意は読者目線を持つこと

泉くんは、現在稼働しているシステムの「課題一覧」の提供を、KSJ社の東出さんにメールで依頼することになったのですが……。

君島さん:「東出さん、メールを読まない、読んでも返さないで有名な人だよ」
泉くん:「マジで……。今回は、期限まで時間がない仕事だし、それは困るんだけど……」
君島さん:「だよね。だから前のプロジェクトで教わった『東出さん対策』を教えるね」

メールをスルーされないようにする秘訣は、「読み手目線」に立つことです。読み手目線に立つためには、相手から自分のメールがどう見えるかを意識した「自己レビュー」を徹底することが欠かせません。

たとえば、多忙な上司のメールボックスを想像してみてください。受信ボックスには、数百件の新着メール。1通のメールにかけられる時間は10秒ほどでしょう。そんな状態のときに、内容のよくわからない件名のメールや、本文がスクロールしなくては読み切れないほどの長文メールが送られてきたら、うんざりしてしまうはずです。

ほかのメールに埋もれて「気づかない」、件名で重要度が判断できず「わからないから読まない」と未読スルー。本文を開いても「面倒そうだから、あとで読もう」と判断し既読スルー。このような理由で、相手はメールをスルーしてしまうのです。

そこで重要なのが、件名を見た瞬間に、「これは自分に関係ある」「すぐに返信できる」と思ってもらえるよう、件名に相手に求める行動と用件を端的にまとめることです。

×悪い例……〇〇部予算経費の件について
〇よい例……【Y/Nで返答ください】〇〇部予算経費承認のお願い(8月分)
(本書122ページより)

よい例は、件名だけで本文が想像できるほどに、明快です。また、返答方法も指示されているので、読み手としてはどういった内容で返信するかを考える必要がなく、読み手の負担を少なくすることができます。

用件の書き方で返信の速さが変わる

いつ返信がくるかわからないメールのやり取りで生産性を上げるには、メールの「往復数」を減らすことが定石です。なぜなら、往復数が増えるほど返信待ちが増え、本当にほしい答えをもらうまでに時間がかかるからです。

といっても、往復数を減らすために、1通のメールにいろいろ用件を詰め込むのはNG。なぜなら自分のメールの作成はもちろん、相手側の返信作成にも時間をとってしまうことにつながるからです。

そこでポイントとなるのは、「一言」で返信をもらえるようにすることだとNAEさんはいいます。その方法はメール本文に書く質問をクローズドクエスチョンにするというもの。クローズドクエスチョンとは「はい・いいえ」で答えられる質問のことです。これを使えば、返信は極端な話、YかNの一文字だけで済むのです。

たとえば、すこし複雑な説明が必要になる場面では「まずは、この方向で進めてよいか、ご返信いただけますか?」と書けば、相手はよいかどうかを判断すればいいだけなので返信しやすくなります。また進め方を相談する場面では「A、B、Cのうち、どれがよろしいでしょうか?」と具体的な選択肢を提示すれば、3つのなかから選べばいいので、返信しやすいでしょう。

泉くん:「件名に、用件を工夫してと……」
君島さん:「とにかく、メールまわりのアクションが超鈍いから、返信のハードルを限界まで下げないとね。それに、返信がなくても動けるようにしないと、仕事が進まなくなることもあるよ」

泉くん:「そんなに……」