起業家が生き残る確率は……

『中小企業白書』によると、個人で事業を興しても、約40%が1年未満で脱落、3年目を超えて5年後まで継続できるのは25%、そして10年後まで生き残っている人は10%という現実があります。

(松尾昭仁著『起業して食える人・食えない人』(以下同書)「はじめに」より)

起業コンサルタントとして長く活動する松尾昭仁さんは、これまでに実に1万人を超える起業家およびその予備軍の人たちと出会ってきました。そしてその中には、数多くの失敗例も含まれています。

失敗例とはつまり、起業はしたものの自転車操業から抜け出せず、「貧乏暇なし」を地で行く人、食べていけずにサラリーマンに戻る人、アルバイトで糊口をしのぐ人、事業をあきらめてしまう人……そんな人たちのことです。

サラリーマン生活に不満や限界を感じる人にとって、起業は魅力的な選択肢です。しかし、冒頭の引用にもある通り、起業は決して甘くないのです。

では、いったいどんな人が起業に失敗する=食えなくなるのか。経験豊富な松尾さんの著書からピックアップしてみましょう。起業を志す人にとっては、きっと反面教師になること請け合いです!

おごられて喜ぶ人は食えない

「返報性の原理」という言葉があります。人は自分によくしてもらったら、相手に対して同等以上のお返しをしなければならないと感じる心理をこのように言います。他人におごられて喜ぶ人は、この原理を知らないか、少なくとも忘れています。

「成功している起業家できっちり割り勘にしようとする人は、見たことがありません」と松尾さん。彼らは、相手がお世話になっている人やお客様であれば当然、そうではない場合でも自分から誘った時は基本的に全額支払います。

なぜなら、おごったあとに、新しい仕事やお客様を紹介してもらえると知っているからです。「投資」という考え方が身についていると言ってもいいでしょう。

このことは人脈に関しても同じです。成功する起業家は、自分の人脈をほかの人にも積極的にオープンにします。返報性の原理で、さらにいい人脈を手に入れることができるからです。反対に、自分の人脈を囲い込んで離さない人は、自分が属さないネットワークにアクセスすることができなくなり、だんだんと成功から遠ざかることになります。

このような理由から、成功する起業家は喜んで他人をおごるのです。おごられて喜ぶ人は、起業家としては食えないでしょう。

形があるものにお金を使う人は食えない

起業したばかりの身にとって「形があるもの」とはなんでしょうか。それは、「社員」や「立派なオフィス」、「オフィスで使う家具・備品」などであり、もっと言えば箔をつけるための「高級車・腕時計」などです。

起業してはりきる気持ちはわかりますが、ビジネスが軌道に乗らないうちにこうしたものにお金を使う人は、成功する可能性が低いと言わざるを得ません。

だからといって、節約すればいいというものでもありません。成功するにはお金を使うことも必要です。問題は「何に使うか」なのです。