先にも書いたとおり、日銀の目的は国内の経済環境をコントロールし、経済発展を促すことにあります。そのため、私たちが普段訪れる民間の銀行とは極めて密接な関係にあり、ときには「銀行の銀行」としての役割を果たすこともあります。下図の例をみてみましょう。

資金供給オペレーション(『イラスト図解 銀行のしくみ』p25.より、一部加筆)
資金供給オペレーション(『イラスト図解 銀行のしくみ』p25.より、一部編集)

上図は「資金供給オペレーション」と呼ばれる、市場に資金を供給する流れを示したものです。

年末を例に考えてみましょう。年末にはクリスマスプレゼントの購入や年末年始の準備、お年玉など、お金がたくさん必要になるので、多くの人が銀行からお金をおろします。

しかし、銀行は預かっているお金をそのまま金庫においているわけではありません。普段は預かったお金を運用や融資などに回していますので、年末をはじめ「預金者が引き出すためのお金が銀行の手元にない」という事例もしばしば発生します。

年末年始に限らずともそうした手元の資金不足が見込まれるとき、日銀は市場で銀行がもつ債権などを購入し、銀行が日銀に持っている預金口座にお金を振り込みます。この、銀行が日銀に持っている預金口座を「日銀当座預金」(日銀当預)といいます。

銀行同士といえどもお金を預けているわけなので、日銀当座預金にお金を預けている場合、当然金利が発生します。これが当座預金金利と呼ばれるもので、今回マイナス金利として一躍話題になったのも、ここの金利のことを指します。なので、今回の話は銀行と日銀の間の話であり、「私たちが銀行にお金を預けていると、直接目減りしていく」というわけではありません

また、「マイナス金利ってことは預金していると目減りするってことでしょ? なら、預けないで地下金庫にでも入れときゃいいのでは?」と疑問に思う人もいるでしょう。

実は、銀行に課せられた義務として「保有する預金のうち一定の割合を、ある程度の期間日銀の当座預金に預け入れなければならない」というものがあります。これを準備預金制度といい、これによって銀行がいわゆる「タンス預金」に徹することはできないようになっています。

マイナス金利に込められた意味と金融政策

さて、日銀当座預金の金利をマイナスにしたということは、どういう意味を持つのでしょうか? ここで、日銀の役割をもう少し詳しくみていきましょう。

日銀は、日本の中央銀行として金融政策に携わる立場にあり、「日本銀行券」として紙幣を独占的に発行する権利を有しています。この権利を背景として市場に出回る資金の総量を調整し、経済をコントロールしていくのが日銀の重要な役割である金融政策の基本であり、金利の引き下げなど、資金流通量を増やす政策を金融緩和、その逆を金融引締と言います。

再三触れているように、日銀の目的である経済の発展を目指すためには、物価をはじめとするさまざまな金融環境を安定させる必要があります。そのため日銀は、金融庁やその下部組織が行なう金融規制・監督の動きと連動しながら金融政策に取り組んでいます。