人名・地名 おもしろ雑学

日本で一番多い名字は佐藤で、2番目が鈴木といわれています。しかし、「本当?」と思っている人も多いのではないでしょうか。東京の周辺に住んでいる人は違和感がないでしょうが、関西の人だと、一二を争うのは山本と田中だろう、と思っています。

交通が便利になって、東京からだと、離島や山中を除いてほとんどの所に日帰りできるようになりました。でも、日本は狭いようで、まだ地域差は残っています。そんな日本を名字や地名からみつめ直してみたいと思っています。

著者プロフィール

森岡 浩(もりおか・ひろし)

姓氏研究家・野球史研究家。1961年高知市生まれ。土佐高校を経て早稲田大学政治経済学部卒。学生時代から独学で姓氏研究を始め、文献だけにとらわれない実証的な研究を続けている。一方、高校野球を中心とした野球史研究家としても著名で、知られざる地方球史の発掘・紹介につとめているほか、全国各地の有料施設で用いられる入場券の“半券”コレクターとしても活動している。

現在はNHK「日本人のおなまえっ!」解説レギュラーとして出演するほか、『名字の地図』『高校野球がまるごとわかる事典』(いずれも小社刊)、『名字の謎』(新潮社)、『日本名字家系大事典』(東京堂出版)など著書多数。

●サイト(オフィス・モリオカ)
  → https://office-morioka.com/
●ツイッター
  → http://twitter.com/h_morioka
●facebookページ
  → https://www.facebook.com/officemorioka/
●Instagram
 → https://www.instagram.com/office_morioka/

 

太宰治の実家津島家

このエントリーをはてなブックマークに追加

2023/07/18 10:52

秋田県を中心に青森県西部にかけて豪雨に見舞われ、大きな被害が出ている。実は、この大雨の少し前に、ちょうどこのルートを通って出かけていた。リゾートしらかみに乗った日も大雨で、電車が大幅に遅延していた。

その日は30分以上遅れたリゾートしらかみを五所川原で降りて、津軽鉄道で金木へ。津軽鉄道は観光列車に乗ったわけでないのだが、車内にはアテンダントの方がおり、津軽弁で周辺の案内やグッズの販売をしている。地方鉄道の生き残りのための方策として有効だろう。

津軽鉄道

さて、津軽鉄道を金木でおりて7分ほど歩くと斜陽館が見えてくる。「やま源」と号した地元きっての豪農・豪商津島家の旧宅である。

津島家は、山城国岩根郡対馬村出の斉門四郎が、戦国時代の天正年間に津軽に移り住んだのが祖と伝える。江戸時代中期頃に源四郎が津島氏に改称し、その二男源右衛門が「やま源」と号して金木で古着屋を始めた。

その子初代惣助は豆腐屋に転じて成功、幕末に継いだ3代目惣助は金融業も兼ねて土地を集積し、明治中期には津軽有数の大地主となったとされるが、近年は江戸時代中期にはすでに豪農であったともいわれる。

3代目惣助の養子源右衛門は衆議院議員・貴族院議員を歴任。その三男文治は金木町長、衆議院議員を経て、昭和22年(1947)には青森県初代民撰知事に当選し、さらに衆議院議員・参議院議員を歴任した。

そして、文治の弟で六男の修治が文豪太宰治である。実家は富豪、自らは東大に学び、兄は政治家という本来恵まれた環境にありながら、そこからドロップアウトした太宰本人は悩んでいた。

なお、太宰の華麗な家系はその後も続く。文治の長男康一はNHK大河ドラマ「いのち」などに出演した俳優で、長女陽の夫が農林水産大臣などをつとめた田沢吉郎。

また、太宰治の長女園子の夫が第二次海部内閣や第二次森内閣で厚生大臣をつとめ自民党津島派を率いた津島雄二で、現在はその息子淳が衆議院議員をつとめている。また、太宰の二女は作家の津島佑子(本名は里子)である。

このエントリーをはてなブックマークに追加

ページのトップへ