人名・地名 おもしろ雑学

日本で一番多い名字は佐藤で、2番目が鈴木といわれています。しかし、「本当?」と思っている人も多いのではないでしょうか。東京の周辺に住んでいる人は違和感がないでしょうが、関西の人だと、一二を争うのは山本と田中だろう、と思っています。

交通が便利になって、東京からだと、離島や山中を除いてほとんどの所に日帰りできるようになりました。でも、日本は狭いようで、まだ地域差は残っています。そんな日本を名字や地名からみつめ直してみたいと思っています。

著者プロフィール

森岡 浩(もりおか・ひろし)

姓氏研究家・野球史研究家。1961年高知市生まれ。土佐高校を経て早稲田大学政治経済学部卒。学生時代から独学で姓氏研究を始め、文献だけにとらわれない実証的な研究を続けている。一方、高校野球を中心とした野球史研究家としても著名で、知られざる地方球史の発掘・紹介につとめているほか、全国各地の有料施設で用いられる入場券の“半券”コレクターとしても活動している。

現在はNHK「日本人のおなまえっ!」解説レギュラーとして出演するほか、『名字の地図』『高校野球がまるごとわかる事典』(いずれも小社刊)、『名字の謎』(新潮社)、『日本名字家系大事典』(東京堂出版)など著書多数。

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日本一の豪農、新潟の伊藤家

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2023/06/20 10:45

新潟県には豪農が多い。確かに新潟平野には広大な水田が広がっており、これらを所有する豪農が生まれるのは当然という気もする。そうした豪農の中で、ひときわ有名なのが沢海(そうみ)の伊藤家である。現在は北方文化博物館となっており、以前からぜひ訪れたいと思っていたが、先日やっとたずねることができた。

新潟駅前から秋葉区役所前行きのバスで50分ほど、阿賀野川の土手上にある「上沢海博物館前」バス停で降りる。

「上沢海博物館前」バス停付近の様子

伊藤家は越後国蒲原郡沢海(現在の新潟県新潟市江南区沢海)の豪農である。宝暦6年(1756)に初代文吉が一町二反歩を譲られて分家独立したことに始まる。

山形県酒田で日本一の豪商と言われた本間家もそうだが、意外ともとは「分家」であったという家は多い。以後代々文吉を名乗り、質屋・金融業・運送業と事業を拡大して、天保8年(1837)には名字帯刀御免となっている。

明治以降は土地を集積、6郡64ヶ町村で1370ヘクタ―ルの田畑を所有、2800人の小作人を抱えていた。戦後の農地解放の際に7代目文吉が財団法人化して博物館として整備公開。8800坪にも及ぶ敷地に部屋数65の純日本式住居で、周囲には土塁を築いて濠をめぐらしている。

また、池泉回遊式庭園には4つの茶室が点在し、1000人の茶会に備えたという。その規模は他の豪農を圧倒するもので、さながら大名の住む城郭のようである。

5月には樹齢150年の大藤が中庭を埋め尽くす「大藤棚」が有名で、満開の時期にはライトアップされて大勢の観光客で賑わう。訪れたときにはすでにフジは終わっており、代わってシロフジが見事だった。

 

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