『文章を書く』ことの苦手を好きにかえる

「文章を書くことがストレスです」
「文章を書くことが苦手で……」
「文章を書くのに時間がかかります」

そんな「文章アレルギー」の人は多いのではないでしょうか? しかし、文章を書けるかどうかは、仕事の成果や周囲の評価に大きく関わります。

そんな文章に関する「困った」にやさしく応えてくれるのが、『そもそも文章ってどう書けばいいんですか?』を著書にもつ、山口拓朗さんです。

この連載では、これまでライターとして3000件以上の取材・インタビューを経験した中から導き出した、「書くことが嫌い」を「書くことが好き」へと変える、文章作成のコツを教えてもらいます。

著者プロフィール

山口拓朗(やまぐち・たくろう)

伝える力【話す・書く】研究所主宰。出版社で編集者・記者を務めたのちに独立。これまでライターとして3000件以上の取材・執筆歴を誇る。現在は執筆活動に加え、講演や研修を通じて、「書かずにうまくなる段取り文章術」「論理的に伝わる文章の書き方」「好意と信頼を獲得するメール文章術」「すらすら書ける文章テンプレート活用法」等、その日から使える実践的ノウハウを提供。また、2016年より中国の5大都市で「SuperWriter養成講座」を定期開催中。

著書に『そもそも文章ってどう書けばいいんですか?』『何を書けばいいかわからない人のための「うまく」「はやく」書ける文章術』(共に日本実業出版社)ほか多数。文章作成の本質をとらえたノウハウは言語の壁を超えて高く評価されており、中国、台湾、韓国など海外でも翻訳されている。

誤った言葉や表現で文章の信頼性を下げてませんか?

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2023/02/09 12:44

(photo by Jens/pixabay)

一生モノのスキルになる!
『文章を書く』ことの苦手を好きにかえる方法  <連載第60回>

伝える力【話す・書く】研究所を主宰し、「文章の書き方」に精通する山口拓朗さんに書き方のコツを教わります。今回は「文章の信頼性」について。

正しい言葉や表現を使おう

正しい言葉や表現を使えている人と使えていない人とでは、文章の信頼性に差が生まれます。とくに仕事で使う文章で「間違った言葉・表現」を使ってしまうと、読む人が「この人は大丈夫かな?」と不安や疑念を抱くこともあります。今回の記事では、間違えやすい言葉や表現をクイズ形式で紹介します。


Q1 次の【1】と【2】どちらが正しい言葉でしょうか? 

 
Q1-1【1】過半数を超える
            【2】過半数に達する

A1-1 「過半数」とは〈全体の半分より多い〉という意味。したがって「過半数を超える」は、同じ意味の言葉を重ねる二重表現です。正解は【2】

Q1-2【1】汚名挽回する
            【2】汚名返上する

A1-2  汚名を挽回したら“汚名の上塗り”になってしまいます。「汚名挽回」に違和感を抱かない人は、おそらく「名誉挽回」と混同しているのでしょう。正しい表現は「汚名を返上する」や「お名を雪(すす)ぐ」です。正解は【2】

Q1-3【1】取り付く島もない
            【2】取り付く暇もない

A1-3 「取り付く島もない」とは、航海中の船が嵐などに巻き込まれた際、近くに着岸できるような島がなく“どうすることもできない様子”を表す言葉で、〈頼れるところがない〉〈相手からつっけんどんにされる〉という意味です。「島」と「暇」を聞き間違えて「取り付く暇もない」と使う人が増えていますが誤りです。正解は【1】

Q1-4【1】寸暇を惜しまず働く
            【2】寸暇を惜しんで働く

A1-4 「寸暇」とは〈わずかな時間〉のこと。「寸暇を惜しんで」は〈わずかな時間を無駄にすることすら惜しんで物事に没頭にする〉という意味です。〈苦労をいとわず〉という意味の「骨身を惜しまず」と混同して「寸暇を惜しまず」と書かないよう注意しましょう。正解は【2】


Q2  次の【1】と【2】どちらが本来の意味でしょうか? 

 
Q2-1「役不足」
【1】本来の能力より重い(手に余る)仕事や役割を与えられること
【2】本来の能力より軽い仕事や役割を与えられること
 
Q2-2「煮詰まる」
【1】議論が行き詰まって、結論が出せない状態のこと
【2】考えや意見が出尽くして、結論に近づいている状態のこと
 
Q2-3「話のさわり」
【1】広まりつつある意味:話の導入部分のこと
【2】話の要点や印象深いところ。聞かせどころ
 
Q2-4「流れに棹(さお)さす」
【1】傾向や時流に逆らって、物事の勢いを失わせる行為をすること
【2】好都合なことが重なり、勢いが出て物事が順調に運ぶこと
 
Q2-5「穿(うが)った見方」
【1】疑ってかかるような見方をすること
【2】物事の本質を的確に捉える見方をすること

A2-1〜5 正解はすべて【2】


Q3  以下の問いにそれぞれ答えましょう          

 
Q3-1 「味わう」のはどれ?
   【1】苦汁
   【2】辛酸
   【3】苦渋

A3-1  苦渋「くじゅう」には「苦渋」と「苦汁」のふたつがあります。苦渋は〈苦しみ悩むこと〉という意味で、心理面にフォーカスしているのが特徴です。通常、「苦渋を味わう」の形で使われます。一方の苦汁は〈辛く苦しい経験をする〉という意味で、経験にフォーカスしているのが特徴。「苦汁をなめる」や「苦汁を飲む」の形で使われることが多い。それぞれ「苦渋をなめる」や「苦汁を味わう」とは書きません。正解は【3】

Q3-2「きく」のはどれ?  
  【1】目鼻 
   【2】目星
   【3】目端

A3-2 「目端(めはし)」とは“目の端”のことで、「目端がきく」は〈機転がきく/抜け目がない〉という意味。「目鼻がつく」(=〈物事がおおよそでき上がり、見通しが立つこと〉の意味)と混同して「目鼻がきく」と言う人がいますが、「目鼻がきく」という言葉はありません。なお、「目鼻がつく」と似た言葉に、〈大体の予想・見当がついた〉という意味の「目星がつく」があります。正解は【3】

Q3-3 「心血を」に続く言葉は?  
  【1】傾ける
   【2】注ぐ
   【3】込める

A3-3 「心血」は「注ぐ」ものであり、「傾ける」ものではありません。「このプロジェクトに心血を注ぐ」という具合に使います。ちなみに、「傾ける」には「全力を傾ける」「情熱を傾ける」などの表現があります。正解は【2】

Q3-4 「招聘(しょうへい)する」の正しい意味はどれ?   
【1】目上の人を招いてもてなすこと
  【2】お金を渡す代わりに来てもらうこと
  【3】礼儀の限りを尽くして、丁寧に人を招くこと

A3-4 正解は【3】

Q3-5 「忸怩(じくじ)たる思い」の正しい意味はどれ?    
【1】傷つきながらも悔しさに耐えること
    【2】自身の言動を反省して、恥ずかしく思うこと
    【3】心残りで残念に思うこと

A3-5 正解は【2】


もちろん、言葉は生き物です。本来の意味から姿を変えた言葉や表現が現在のスタンダードになっているものもあれば、今後スタンダードになっていくものもあるでしょう。大多数の人が使っているにもかかわらず「本来の使い方と違う!」と目くじらを立てても仕方ありません。

一方で、まだ本来の意味で使っている人が大多数の言葉や表現に関しては、本来の言葉(=大多数の人が使っている言葉)を使えるようにしておきましょう。間違った言葉や表現を使うことによって周囲から「この人は言葉を知らない(正しく使えていない)」と思われて信頼性を下げてしまう恐れもあります。

「どちらもよく見かけるけど、どちらが正しい言葉なんだろう?」と思ったときは、しっかり調べて、現時点における「正しい言葉・表現」を使えるようにしておきましょう。


山口拓朗(やまぐち・たくろう)

伝える力【話す・書く】研究所所長。山口拓朗ライティングサロン主宰。出版社で編集者・記者を務めたのち、2002年に独立。26年間で3600件以上の取材・執筆歴を誇る。現在は執筆活動に加え、講演や研修を通じて、「1を聞いて10を知る理解力の育て方」「好意と信頼を獲得する伝え方の技術」「伝わる文章の書き方」などの実践的ノウハウを提供。著書は『マネするだけで「文章がうまい」と思われる言葉を1冊にまとめてみた。』(すばる舎)、『1%の本質を最速でつかむ「理解力」』『9割捨てて10倍伝わる「要約力」』『何を書けばいいかわからない人のための「うまく」「はやく」書ける文章術』(以上、日本実業出版社)、『伝わる文章が「速く」「思い通り」に書ける 87の法則』(明日香出版社)、『ファンが増える!文章術——「らしさ」を発信して人生を動かす』(廣済堂出版)ほか多数。

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