『文章を書く』ことの苦手を好きにかえる

「文章を書くことがストレスです」
「文章を書くことが苦手で……」
「文章を書くのに時間がかかります」

そんな「文章アレルギー」の人は多いのではないでしょうか? しかし、文章を書けるかどうかは、仕事の成果や周囲の評価に大きく関わります。

そんな文章に関する「困った」にやさしく応えてくれるのが、『そもそも文章ってどう書けばいいんですか?』を著書にもつ、山口拓朗さんです。

この連載では、これまでライターとして3000件以上の取材・インタビューを経験した中から導き出した、「書くことが嫌い」を「書くことが好き」へと変える、文章作成のコツを教えてもらいます。

著者プロフィール

山口拓朗(やまぐち・たくろう)

伝える力【話す・書く】研究所主宰。出版社で編集者・記者を務めたのちに独立。これまでライターとして3000件以上の取材・執筆歴を誇る。現在は執筆活動に加え、講演や研修を通じて、「書かずにうまくなる段取り文章術」「論理的に伝わる文章の書き方」「好意と信頼を獲得するメール文章術」「すらすら書ける文章テンプレート活用法」等、その日から使える実践的ノウハウを提供。また、2016年より中国の5大都市で「SuperWriter養成講座」を定期開催中。

著書に『そもそも文章ってどう書けばいいんですか?』『何を書けばいいかわからない人のための「うまく」「はやく」書ける文章術』(共に日本実業出版社)ほか多数。文章作成の本質をとらえたノウハウは言語の壁を超えて高く評価されており、中国、台湾、韓国など海外でも翻訳されている。

「自分にしか書けない」唯一無二の文章を書くコツ

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2022/08/03 18:50

(photo by Calum Macaulay/Unsplash)

一生モノのスキルになる! 『文章を書く』ことの苦手を好きにかえる方法<連載第54回>

伝える力【話す・書く】研究所を主宰し、「文章の書き方」に関する著書も多い山口拓朗さんに書き方のコツを教わります。今回は、「自分しか書けない文章」の書き方について。

世界で唯一無二の「自分」という存在

SNSで自分らしい魅力的な文章を書くための方法のひとつが「自分にしか書けないことを書く」というものです。

「そんなふうに言われても……自分にしか書けないことなんて、私にはありません」と思う人もいるでしょう。しかし、それは間違い、いえ、勘違いです。どんな人でも、その人にしか書けないことがあります。

なぜなら、自分と同じ性格の人、自分と同じ人生を送ってきた人、自分と同じ考えや価値観の人は、この世にひとりもいないからです。世界で唯一無二。それが“自分”という存在です。

魅力的な文章を書きたいなら、まずは、自分が世界で唯一無二の魅力的な存在であることを自覚しましょう。そのうえで、自分の両手が届く範囲の世界について書いていくのです。

「自分の体験」をベースに書こう!

「自分の両手が届く範囲の世界=自分の体験」です。自分の体験というのは「自分にしか書けないこと」の代表格です。体験をベースにして文章を書くことによって、自分らしさや自分の魅力がどんどん輝いていきます。

たとえば、昨今の「日本の経済や景気」について書くことは、それなりの検索能力があれば、難しいことではありません。基本情報や一般論、直近のニュースなどは、インターネット上に無数に転がっています。

しかし、そうした、情報を右から左へと流す付け焼き刃的な投稿をしていているうちは、自分らしさや自分の魅力は輝きません。

一方で、“いつも通っている定食屋の焼き魚定食が30円値上がりしたこと”や“最近、家計が厳しく、お小遣いが3,000円減らされたこと”を書くとき、それは、あなた以外の何者でもありません。あなたの体験というフィルターを通した「あなたなりの経済や景気」を伝えることができるのです。

体験を通じて得た気づきやノウハウ、アイデアなどは、それらすべてが唯一無二の情報です。ほかの誰にも語ることはできません。失敗談やネガティブな体験を含め、あなたがこれまでにしてきた体験や経験のすべては、価値ある情報に変換可能なのです。

「言葉」で書いて「映像」で届ける

「言葉」で書いて、「言葉」で届ける。
「言葉」で書いて、「映像」で届ける。

SNSで自分らしい魅力的な文章を書きたい人が目指すべきは後者です。「嬉しかったです」という文章だけでは、読む人の頭の中にリアルな映像は浮かばないでしょう。

一方で、「人前で飛び跳ねてガッツポーズをしたのは、小学6年生のときの運動会以来かもしれません」という文章は、リアルな映像として頭の中に浮かび上がります。「嬉しかった」という言葉を使わずして、喜びを伝えることに成功しています。

「言葉」を「映像」に変えるポイントは「具体的な描写」です。

そのとき――何を言ったのか/どういう態度や行動を取ったのか/どういう様子や光景だったのか/どういう気持ちだったのか――など、できるだけ具体的に表現しましょう。

五感の言語化にも力を入れましょう。そのとき――何が見えたか(視覚)/何が聞こえたか(聴覚)/何を触ったか(触覚)/どんな味だったか(味覚)/どんなニオイ・香りがしたか(嗅覚)――などを仔細に表現することで、映像化されやすくなります。

“不採用”の報告を受けた瞬間、からだ中の血液が一気に引き、頭がデスクにのめり込むのではないか、と思うくらい、私はうなだれました。その日は食事も喉を通らず、ベッドに横たわり、ぼうっと天井を眺めていました。気づけば、まんじりともせず、抜け殻のような状態で朝を迎えました。

この文章からは、ショックで落ち込む姿が、映像として浮かび上がってきます。

言葉を映像で届けるコツ

「言葉」を「映像」に変えるときのコツは“少し盛る”です。実際に「からだ中の血液が一気に引いたか」や「実際に食べ物を一口も食べなかったか」が問題なのではなく、「そう感じた」という感覚を、拡大解釈しながら言語化することが肝心です。

「スマホをなくしたかも?」と思ったときであれば、「焦りました」と書くよりも、「心臓がバクバクと音を立て、冷や汗でシャツがぐっしょりと濡れました」と書くほうが、その焦りが伝わります。

「楽しい」「悲しい」「不安」「希望」――抽象度の高い言葉だけで「映像」を届けることは不可能です。「ツラかった」と書いても、三日三晩泣き続けた、その「ツラさ」は伝わりません。

写真や動画に比べ、文章は情報量が少ない伝達ツールです。「情報量が少ない」ということは、すなわち「伝わりにくい」ということ。それゆえ“少し盛る”意識が大事なのです。

SNS投稿で意識すべきは、自分にしか表現できないリアリティを追求することです。「言葉」で書いて「映像」で届けることができるようになったとき、自分らしさと自分の魅力が最大限に伝わっていくでしょう。

山口拓朗(やまぐち・たくろう)

伝える力【話す・書く】研究所所長。山口拓朗ライティングサロン主宰。出版社で編集者・記者を務めたのち、2002年に独立。26年間で3600件以上の取材・執筆歴を誇る。現在は執筆活動に加え、講演や研修を通じて、「1を聞いて10を知る理解力の育て方」「好意と信頼を獲得する伝え方の技術」「伝わる文章の書き方」などの実践的ノウハウを提供。著書は『9割捨てて10倍伝わる「要約力」』『何を書けばいいかわからない人のための「うまく」「はやく」書ける文章術』(共に日本実業出版社)、『伝わる文章が「速く」「思い通り」に書ける 87の法則』(明日香出版社)、『ファンが増える!文章術――「らしさ」を発信して人生を動かす』(廣済堂出版)ほか25冊以上。

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そもそも文章ってどう書けばいいんですか?

「文章を書くことがストレス」「書くのに時間がかかりすぎる」「そもそも頭のなかにあることを文章にできない」……本書はそうした「文章アレルギー」のある人たちに、マンガを織り交ぜながら、わかりやすく文章の書き方をレクチャーしていきます。

著者:山口拓朗

価格:¥1,400-(税別)

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