『文章を書く』ことの苦手を好きにかえる

「文章を書くことがストレスです」
「文章を書くことが苦手で……」
「文章を書くのに時間がかかります」

そんな「文章アレルギー」の人は多いのではないでしょうか? しかし、文章を書けるかどうかは、仕事の成果や周囲の評価に大きく関わります。

そんな文章に関する「困った」にやさしく応えてくれるのが、『そもそも文章ってどう書けばいいんですか?』を著書にもつ、山口拓朗さんです。

この連載では、これまでライターとして3000件以上の取材・インタビューを経験した中から導き出した、「書くことが嫌い」を「書くことが好き」へと変える、文章作成のコツを教えてもらいます。

著者プロフィール

山口拓朗(やまぐち・たくろう)

伝える力【話す・書く】研究所主宰。出版社で編集者・記者を務めたのちに独立。これまでライターとして3000件以上の取材・執筆歴を誇る。現在は執筆活動に加え、講演や研修を通じて、「書かずにうまくなる段取り文章術」「論理的に伝わる文章の書き方」「好意と信頼を獲得するメール文章術」「すらすら書ける文章テンプレート活用法」等、その日から使える実践的ノウハウを提供。また、2016年より中国の5大都市で「SuperWriter養成講座」を定期開催中。

著書に『そもそも文章ってどう書けばいいんですか?』『何を書けばいいかわからない人のための「うまく」「はやく」書ける文章術』(共に日本実業出版社)ほか多数。文章作成の本質をとらえたノウハウは言語の壁を超えて高く評価されており、中国、台湾、韓国など海外でも翻訳されている。

「五感を刺激する文章」を書く5つのテクニック

このエントリーをはてなブックマークに追加

2020/10/07 16:20

(photo by ハピネス/photoAC)

一生モノのスキルになる! 『文章を書く』ことの苦手を好きにかえる方法<連載第32回>

伝える力【話す・書く】研究所を主宰し、「文章の書き方」に関する著書も多い山口拓朗さんに書き方のコツを教わります。今回は、鮮やかにリアリティを伝える「五感」の書き方について。

人間のセンサー「五感」を武器に文章を書こう

この連載の一覧はこちら

何かしらの体験やエピソードを書くときには、五感を書くテクニックが有効です。五感を書くことによって、「映(ば)える」文章になりやすく、その場の情景や光景、様子、自身の体感などを、読む人にリアルに伝えることができます。

ご存知のとおり、五感とは、人間に備わっている代表的な感覚のこと。視覚、聴覚、嗅覚、味覚、触覚の5つがあります。これらを文章で表現することで、より鮮明で臨場感のある文章ができ上がります。

視覚

五感のなかで、最も書きやすいのが視覚です。視覚とイメージは密接に結びついています。ただ「にんじん」と書くよりも、「夕陽を思わせる濃いオレンジ色のにんじん」と書くほうが、より鮮明な「絵」として伝わります。

もうすぐ破裂するのでは? と思うほどパンパンにふくらんだ財布。喜べないのは、その中身が「お金」の束ではなく、「レシート」の束だからだ。
・その黒光りしている岩山は、地面の裏側から突き刺したかのように鋭く尖っていた。ベテランのロッククライマーでも攻略は難しそうだ。

聴覚

聴覚を書くときは、オノマトペ(擬音語、擬声語、擬態語など)を用いるとリアリティが増します。「お腹がすいた」よりも、「お腹がグ〜と5秒ほど鳴った」と書くほうがイメージがわきます。なお、広い意味では、会話文も聴覚描写のひとつです。

・地平線が明るくなると、鳥たちが示し合わせたかのように、チュンチュンと鳴き始めた。自然界のリズムに脱帽だ。
ガチャっと重たい扉を開けて社長が入ってきた瞬間、会場にピリっと緊張感が走った。
・夫の「了解ではございません」という訳のわからない寝言を聞こえてきて、真夜中にもかかわらず、私は思わずプっと吹き出した

嗅覚

五感のなかでも、とりわけ「記憶」や「感情」に直結していると言われているのが嗅覚です。「匂いの描写→思い出」「匂いの描写→気持ち」の順で書くと効果が高まり、読む人の共感を誘いやすくなります。

・5年ぶりの実家。焼きたてパンの香ばしい匂いで目が覚める。一瞬、子どもの頃に戻った気がした。
・すれ違いざまに、レモンのようなさわやかな香りが漂ってきた。この子と話がしたい。僕はそう直感的に思った。

味覚

味覚の描写は「しょっぱい」「辛い」「すっぱい」「甘い」「苦い」「渋い」などの味表現をベースに、触感の描写(こしがある/とろける/サクサク等)や、温度の描写(ほくほく/キンキンに冷えた/ぬるい等)を交えることによって、“食”にまつわる文章のリアリティが高まります。

ライムの酸味と生ハムのしょっぱさが、口の中で絶妙のアンサンブルをくり広げた。ワインが進まないはずがない。
・カリっと硬めの歯ごたえと、存在感のある苦味。高カカオチョコレートは、やっぱりやめられない。
・その肉まんに食らいついた瞬間に、ジューシーな肉汁がじゅわ〜っと口の中にあふれ出した。

触感

触感とは、手触りや、肌触りといった、触った時の感覚のこと。皮膚の感覚だけでなく、広い意味では、頭、首、腕、お腹、お尻、腰、脚など、からだの全体、または一部で感じたことを表現します。

シルクのようにやわらかく、すべすべした素肌だ。
・お鍋を触った手のひらが、その熱さに耐えきれず、思わず「あちっ!」と声を上げてしまった
・35キロを過ぎると、鉛でも入れられたかのように脚が重くなり、ついには我慢できず、歩き始めてしまった。

「神は細部に宿る」という格言は、文章作成にも適用できます。「五感描写=細部描写」です。五感を上手に捉えられるようになると、文章表現の“幅”と“可能性”が一気に広がります。ふだんから五感を意識しながら表現するクセをつけましょう。

このエントリーをはてなブックマークに追加

そもそも文章ってどう書けばいいんですか?

「文章を書くことがストレス」「書くのに時間がかかりすぎる」「そもそも頭のなかにあることを文章にできない」……本書はそうした「文章アレルギー」のある人たちに、マンガを織り交ぜながら、わかりやすく文章の書き方をレクチャーしていきます。

著者:山口拓朗

価格:¥1,400-(税別)

オンラインストアで購入する

テキスト採用など、大量・一括購入に関するご質問・ご注文は、
弊社営業部(TEL:03-3268-5161)までお問い合わせください。

ページのトップへ