『文章を書く』ことの苦手を好きにかえる

「文章を書くことがストレスです」
「文章を書くことが苦手で……」
「文章を書くのに時間がかかります」

そんな「文章アレルギー」の人は多いのではないでしょうか? しかし、文章を書けるかどうかは、仕事の成果や周囲の評価に大きく関わります。

そんな文章に関する「困った」にやさしく応えてくれるのが、『そもそも文章ってどう書けばいいんですか?』を著書にもつ、山口拓朗さんです。

この連載では、これまでライターとして3000件以上の取材・インタビューを経験した中から導き出した、「書くことが嫌い」を「書くことが好き」へと変える、文章作成のコツを教えてもらいます。

著者プロフィール

山口拓朗(やまぐち・たくろう)

伝える力【話す・書く】研究所主宰。出版社で編集者・記者を務めたのちに独立。これまでライターとして3000件以上の取材・執筆歴を誇る。現在は執筆活動に加え、講演や研修を通じて、「書かずにうまくなる段取り文章術」「論理的に伝わる文章の書き方」「好意と信頼を獲得するメール文章術」「すらすら書ける文章テンプレート活用法」等、その日から使える実践的ノウハウを提供。また、2016年より中国の5大都市で「SuperWriter養成講座」を定期開催中。

著書に『そもそも文章ってどう書けばいいんですか?』『何を書けばいいかわからない人のための「うまく」「はやく」書ける文章術』(共に日本実業出版社)ほか多数。文章作成の本質をとらえたノウハウは言語の壁を超えて高く評価されており、中国、台湾、韓国など海外でも翻訳されている。

逆にマナー知らず! 使いがちな二重敬語と改善例

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2020/11/04 16:23

(photo by FineGraphics/photoAC)

一生モノのスキルになる! 『文章を書く』ことの苦手を好きにかえる方法<連載第33回>

伝える力【話す・書く】研究所を主宰し、「文章の書き方」に関する著書も多い山口拓朗さんに書き方のコツを教わります。今回は、意外と気づかないうちに使っている「二重敬語」について。

「慇懃無礼」や「マナー知らず」と思われていませんか?

この連載の一覧はこちら

同じ種類の敬語をふたつ重ねた言葉を「二重敬語」といいます。メールを書く際、相手への気遣いや敬いの気持ちが強すぎて、二重敬語を使ってしまう人がいます。あるいは、二重敬語を使うことがクセになってしまっている人もいます。

「別に敬語を重ねるくらいいいのでは?」と思うかもしれませんが、「過ぎたるは及ばざるがごとし」という言葉もあります。人によっては、二重敬語を「慇懃無礼(言葉や態度が丁寧すぎて、相手を見下しているさま)」と捉える人もいます。せっかくの気遣いが相手をイラっとさせているとしたら本末転倒です。

もちろん、相手から「敬語の使い方を知らない人だ」と思われてしまうのも本意ではないでしょう。敬語を正しく使うことは、社会人としての“たしなみ”と心得ておきましょう。

二重敬語のパターンを知ろう

二重敬語を防ぐための方法のひとつが、二重敬語にどういうパターンがあるのかを知っておく、というものです。そのパターンの中に、ふだん自分がよく使っているものがあれば、意識的に使用を控えましょう。

【二重敬語】 A社の山田さんが草案をお書きになられる。

「書く」の尊敬語は「お書きになる」です。ところが、「お書きになる」のあとに「〜れる」という尊敬も重ねています。これが二重敬語、つまり、過剰な敬語です。

【修正文】 A社の山田さんが草案をお書きになる。

「〜れる」を外すことで、適切な敬語になりました。

以下は二重敬語を使った文章と、その修正文です。

【二重敬語】 社長がご覧になられました。
【修正文1】 社長がご覧になりました。
【修正文2】 社長が見られました。
※「見る」の尊敬語は「ご覧になる/見られる」。

【二重敬語】 品川の現場についてお聞きになられましたか。
【修正文】 品川の現場についてお聞きになりましたか。
※「聞く」の尊敬語は「お聞きになる」

【二重敬語】 下村部長のおっしゃられる通りです。
【修正文1】 下村部長のおっしゃる通りです。
※「言う」の尊敬語は「おっしゃる/言われる」です。

【二重敬語】 朝食は召し上がりになられましたか。
【修正文1】 朝食は召し上がりましたか。
【修正文2】 朝食はお食べになりましたか。
※「食べる」の尊敬語は「召し上がる・お食べになる」

【二重敬語】 のちほどオフィスにうかがわせていただきます。
【修正文】 のちほどオフィスにうかがいます。
※「行く」の謙譲語は「伺う(うかがう)」です。

【二重敬語】 お客様が、お帰りになられました。
【修正文1】 お客様が、お帰りになりました。
【修正文2】 お客様が、帰られました。
「帰る」の尊敬語は「お帰りになる/帰られる/お帰りなさる」

【二重敬語】 佐藤様がお見えになられました。
【修正文】 佐藤様がお見えになりました。
※「来る」の尊敬語は「お見えになる/お越しになる/いらっしゃる/来られる」です。

【二重敬語】 局長がお呼びになられています。
【修正文】 局長がお呼びになっています。
※「呼ぶ」の尊敬語は「お呼びになる」

【二重敬語】 企画書を拝見させていただきました。
【修正文】 企画書を拝見しました。
※「見る」の謙譲語は「拝見する」です。「拝読」「拝聴」「拝観」なども同様です。

【二重敬語】 伝言をお承りしました。
【修正文1】 伝言を承りました。
【修正文2】 伝言をお受けしました。
※「受ける」の謙譲語は「承る」です。同じく、謙譲語には「お受けする」「いただく」などがあります。

【二重敬語】 サンプルをご用意されてください。
【修正文1】 サンプルをご用意ください。
※「ご〜ください」が尊敬語です。「ご〜ください」に尊敬語「される」を重ねると二重敬語になってしまいます。

【二重敬語】 昨日、商品Aをお求めになられました。
【修正文1】 昨日、商品Aをお求めになりました。
※「お〜なる」が尊敬語です。「お〜なる」に尊敬語「られる」を重ねると二重敬語になってしまいます。

盲点とも言える「二重敬語」にも注意しよう

意外と気づいていないのが、会長、社長、専務、常務、部長、課長、係長など、役職を示す「敬称」の二重敬語です。役職を示す敬称の場合、その言葉自体に“敬い”が含まれています。 したがって、これらの敬称に「様」や「殿」を添えて「社長様」「社長殿」とするのは誤りです(二重敬語です)。

「関係各位様」という表現も見かけますが、これについても、同様の理由で誤りです。

もちろん、言葉の正しさは時代によって変化するものです。以下に挙げた二重敬語は、すでに表現が慣例化しているため、使用して問題ありません。

・拝見いたす(「拝見する」+「いたす」)
・お召し上がりになる(「召し上がる」+「お~になる」)」
・お伺いする(「伺う」+「お~する」)

なお、二重敬語ではありませんが、接続助詞「て」を使って、ふたつの敬語をつなげる言葉を「敬語連結」といいます。

お手伝いして差し上げます。(お手伝いします + 差し上げます)

敬語連結は、敬語同士の結びつきが適切であれば許容されています。ただし、どうしても、回りくどい表現になりがちです。よほどの必然性がない限り、「お手伝いいたします」のように、簡潔な敬語表現に置き換えましょう。

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そもそも文章ってどう書けばいいんですか?

「文章を書くことがストレス」「書くのに時間がかかりすぎる」「そもそも頭のなかにあることを文章にできない」……本書はそうした「文章アレルギー」のある人たちに、マンガを織り交ぜながら、わかりやすく文章の書き方をレクチャーしていきます。

著者:山口拓朗

価格:¥1,400-(税別)

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