アナウンサー・渡辺由佳が解説「こんなときどう言う?」

「私の言うことって、どうしてうまく伝わらないのだろう」
「あのとき言ったことで、なぜムッとされたのだろう」
言葉は、自分が思っていた通りに受け取られないもの。「それを適切に言い換えるとすれば?」というテーマで好評を博したコラムがリニューアル!

職場に限らず、日常会話でもよくある「こんなときどう言えばいい?」という疑問の答えを、テレビ朝日を退社後、フリーアナウンサーや話し方講座の講師として活躍する渡辺由佳氏が解説します!
(毎月第2・4水曜日更新予定)

著者プロフィール

渡辺由佳(わたなべ・ゆか)

1964年、東京都生まれ。慶応義塾大学法学部政治学科卒業。テレビ朝日にアナウンサーとして入社。報道から社会情報番組まで多数の人気番組を担当。1993年に独立。以後、フリーアナウンサー、話し方講師としての活動を始め、テレビ朝日アナウンサースクールやシェリロゼ(自分磨きスクール)で指導を行なうほか、「ビジネスマナー」「コミュニケーション」「ビジネスメール」をテーマに企業向けのセミナー講師も務める。2016年より大妻女子大学文学部非常勤講師を務める。

著書に、『会話力の基本』(日本実業出版社)、『スラスラ話せる敬語入門』『サクサク書けるビジネスメール入門』(以上、かんき出版)、『気の利いた「ひと言」辞典』(講談社)などがある。

ブログ:渡辺由佳の素敵なことば探し
http://ameblo.jp/sutekinakotoba/

ソーシャルディスタンスをめぐる「言い方のトラブル」をみて考えたこと

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2020/07/08 11:01

(photo by buritora/Adobe stock)

新しい生活様式の一つである「ソーシャルディスタンス」を取るために、カウンターに透明のシートの仕切りをつけたり、席を一つ置きにしたりなど、店舗や施設では様々な取り組みがなされています。

店や施設側は何とかして密な状況を避けようとしているものの、そのルールをきちんと守っている人もいれば、そんなことどこ吹く風とバツ印がついている席にも座っている人もいて、新しい生活様式への取り組みも人それぞれです。

先日、あるデパートの駐車場行きのエレベーターを待っていたときのことです。80代のおばあさんとその娘さんらしき人が並んでいました。そのエレベーターでは、ソーシャルディスタンスを取るために乗れる人数が2人までに制限されていました。

その親子はなかなかエレベーターに乗れず、とうとう1人が先に乗っていたエレベーターに乗ろうとしたら、「2人までですよ!」と中に乗っていた60代ぐらいの女性から言われていました。

そこで娘さんが「では、母だけ乗せてください。私は階段で行きますから」と言うと、先に乗っていた女性は「いいわよ、いいわよ、乗っても。私、向こう向いているから」と言いましたが、娘さんはお母さんだけ乗せて階段に向かいました。

すでに1人が乗っていたエレベーターに、制限を超えてまで乗り込もうとしたことが良くなかったのは間違いありません。ただ、それを一度咎めておきながら、後から「やっぱり乗っていい。私は向こう向いているから」とまで言われても、もう乗る気にはなれないだろうなぁと思いました。

このケースのようにソーシャルディスタンスを守ろうと思えば思うほど、小さなトラブルは絶えないと思います。そもそも、私たちの生活のすべてのシーンで2メートルの距離を取るのは難しいと、誰もが感じているはずです。そんな状況で、お互いが気持ちよく暮らしていくための知恵はないものでしょうか。

例えば、先ほどのエレベーターに乗っていた60代の女性が、「すみません、このエレベーターは2人までなんですけど」と言っていたらどうだったでしょう。

「すみません」というクッション言葉をつけることで、そのあとに続く言葉がやわらぎます。

さらに、「2人までですよ!」と言われると「絶対乗ってくるな!」と言われている感じですが、「2人までなんですけど」と言われると、どうするかは相手にゆだねるニュアンスが出て、言葉のきつさが弱まります。

相手に自分の主張を伝えたいとき「クッション言葉(すみません、恐れ入りますが、申し訳ありませんがetc.)+〇〇なんですけど」という言い方でやわらかくモノを伝えることができます。

「すみません、ここ私の席なんですけど」
「申し訳ありません、もう閉店なんですけど」

新しい生活様式の中で、お互いが気持ちよく暮らせるように、ほんの少し言葉遣いに気を使うだけで、トラブルをうまく回避してくれることもあると思うのです。新型コロナウイルスという目に見えない敵と闘っているからこそ、人間同士の闘いはなるべく避けたいものです。

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