原則主義の会計力

発売日 2011.11.16
著者 金子智朗
判型 A5判/並製
ページ数 216
ISBN 978-4-534-04885-1
価格 ¥2,420(税込)

今までのように決められたルールを忠実に守るのではなく、自由な発想で自社の会計ルールを考えるスキルが経理・財務担当者に求められています。本書は細則主義の日本基準と、原則主義のIFRSという2つの会計基準を比較しながら、会計力を養える1冊です。

≪章立て≫
第1章 あらためて「原則主義」を考える
第2章 原則主義への“正しい”取り組み方
第3章 概念フレームワークから読み取るIFRSの現在と未来
第4章 原則から考える個別論点
第5章 原則主義で求められる姿勢とスキル

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はじめに

第1章 あらためて「原則主義」を考える

 1.1. 細則主義から原則主義になることをイメージする 12

  日本やアメリカの会計基準は細則主義 12

  自主性を重んじる原則主義 13

 1.2. IFRSが原則主義である2つの理由 15

  世界統一基準である以上、すべての国を勘案するのは不可能 15

  不正や粉飾に強い 15

  細則主義では不正はなくならない 17

  明文規定ではなく、専門家の判断を拠り所にする 18

  IFRSの難しさは原則主義にある 19

  “決められない”日本企業はIFRSを導入できるか?20

 1.3. 「投資家」だけを重視すれば本当にいいのか? 21

  経済活動が国内で閉じていないから、統一基準が必要になる 21

  会計基準統一のメリットは「比較可能性の向上」に尽きる 23

  「投資家のためだけの会計基準が最善」かを疑え 23

  投資家のためだけなのは、ある種の“純化”のためだった 24

  IFRSに「資本市場における経済的意思決定」以外の目的を期待しない 26

  日本基準とは対照的に「あるべき姿」をめざすIFRS 27

  「IFRSは日本の商慣行に合わない」は批判の根拠になり得ない 28

  今までにない自由を得たときに困らない人材になる 29

 1.4. 「正解はない」と言い切れる世界 31

  There are no right answers. 31

  「本音で考えればわかる」というスタンス 32

  本音でわかっていても、そのまま表現できるかが重要 33

  財務諸表はそもそも意見表明 34

  求められる真の説明責任 35

  利益の確定から将来の見通しへ 36

 1.5. 原則主義の起源 39

  起源はイギリスのコモン・ロー 39

  言い分を主張させ、当事者の主張が説得的かで判断される 40

  日本人には理解し難いコモン・ローのエピソード 41

  IFRS独特の「離脱規定」はコモン・ローを知らなければ理解できない 43

  理路整然と「言った者勝ち」 44

  EUも一枚岩ではない 45

  大陸型の日本にはIFRSは敷居が高い 46

第2章 原則主義への“正しい”取り組み方

 2.1. たかが制度に過剰対応をしない 50

  過度な負担は本末転倒 50

  何も考えない真面目さは本業に支障をきたすだけ 51

  原則を外さなければいい 52

  数学とIFRSの共通点 52

  IFRSをそのまま適用しようとしているのは日本人くらい 53

  会計制度通よりも、経済的実態を把握できる人が求められる 54

 2.2. 監査法人やコンサルティング会社のいいなりにならないために 56

  インパクト分析はほどほどに 56

  枝葉末節の議論よりも大局観 57

  監査法人に「認めてもらえるか」ではなく「認めさせるか」 58

  「モノは言いようでどうにでもなる」わけではない 59

  誠実性が原則主義を支える精神的要件 60

 2.3. 本質から考えるIFRSの学び方 62

  概念フレームワークの理解が基本中の基本 62

  「結論の根拠」こそ重要 63

  他社事例は参考程度にしかならなくなる 64

  ケーススタディで何を学ぶか 66

第3章 概念フレームワークから読み取るIFRSの現在と未来

 3.1. なぜ概念フレームワークは重要なのか 70

  概念フレームワークの位置付け 70

  さながら数学のよう 72

  概念フレームワーク見直しの動き 74

  アメリカ化するIFRS 75

  IFRSはどこへ行くのか 76

 3.2. 投資家重視からの転換 78

  日本の会計基準の目的 78

  IFRSは投資家のためのもの 79

  IFRSの目的はキャッシュ生成能力の予測 80

  想定利用者を債権者まで拡張されたことによる不整合 81

  キャッシュ生成能力の予測が目的であることに変わりはない 82

 3.3. 質的特性から読み取る新しい概念フレームワークの基本思想 84

  企業会計原則の一般原則にあたる「質的特性」 84

  「目的適合性」はwhat、「表現の忠実性」はhow 85

  「目的適合性」には予見的情報まで含む 86

  「表現の忠実性」を支える3つの特性 87

  IFRSを特徴づける「実質優先」 88

  「慎重性」は意図的に廃止 89

  「補強的特性」の扱いに見るアメリカの影響 90

  「適時性」の位置付けの変化もアメリカの影響 92

  忘れてはならない「重要性」 93

  IFRSでは軽視されている「継続性」 94

 3.4. 財務諸表の構成要素 96

  資産と負債の定義ありき 96

  収益と費用は純資産の変動 98

  公正価値の意味 100

  利益概念に見るIFRSの本質 102

  企業価値算定は否定しているが、念頭には置いている 103

  アカウンティングからファイナンスへ 105

  利益の意味はこれからどうなる?107

  IFRSは管理会計には使えない 108

第4章 原則から考える個別論点

 4.1. 有形固定資産 112

  原則主義では多様な考え方があり得る 112

  有形固定資産の論点 113

  原価モデルは矛盾している 113

  減損はDCF法に基づく公正価値評価 115

  再評価モデルで減価償却する不思議 117

  経済的実態を反映した減価償却 118

  税法基準べったりの日本基準 120

  小論『減価償却とIFRS』のメッセージ 121

  もう1つのキーワードは「判断」 122

  税法基準は認められないのか?123

  定率法にも合理性はある 125

  250%定率法の合理性 128

  ここでも忘れてはならない重要性 131

  定率法を採用したHOYA 131

  改正日本基準の非論理性 133

 4.2. 収益 135

  「収益」の意味 135

  何かと話題の売上計上基準 137

  出荷基準は認められないのか?139

  日本電波工業から読み取るタイムラグの実態 140

  会計士協会が正しいとは限らない 142

  新しい収益認識基準 147

  新しい基準のポイント 149

  出荷基準は認められる?150

  能力に焦点を当てたのは工事契約のため 152

 4.3. 引当金 155

  “将来のバッド・ニュースは何でも引当金”の日本 155

  債務性が求められるIFRSの引当金 156

  コンサルティング会社も「わからない」としているケース 158

  計上額はあくまでも期末時点の債務額 161

 4.4. 連結 163

  連結の論点 163

  IFRSにおける連結概念 165

  非支配持分の扱い 165

  日本基準における非整合性 167

  議決権比率の前提がないIFRSの支配力基準 170

  平行線をたどったIFRSとアメリカの主張 171

  日本ではどのように子会社を判定すべきか 172

  ブランド価値計上の意味 173

  ブランド価値計上は大変か?176

第5章 原則主義で求められる姿勢とスキル

 5.1. 5つの資質とスキルが求められる 180

  原則主義に対応するために一番欠かせないのは主体性 180

  自分で考え、判断するために欠かせない論理的思考力 181

  論理的に主張できるプレゼンテーション力 182

  IFRSを“実務で”使うための英語力 183

  IFRSを体系的に理解するためには数学的素養も 186

 5.2. 180度変わるこれからの人材像 188

  スキルの前にマインド 188

  「答え教えて症候群」になっていないか?190

  公認会計士が一番心配!? 192

  内部統制プロジェクトの忘れられない思い出 194

 5.3. 求められる資質は時代の象徴 195

  IFRSだけの問題ではない 195

  東日本大震災からの教訓 197

  マニュアル依存の危うさ 198

 5.4. コンサルタント選びも慎重に 200

  コンサルタントは3パターンに分けられる 200

  IFRSのコンサルティングに求められるもの 204

  内部統制の教訓を忘れない 205

  コンサルタントも本物が求められる 207

著者プロフィール

金子智朗

かねこ・ともあき


コンサルタント、公認会計士、税理士。1965年生まれ。東京大学工学部、同大学院修士課程修了。日本航空(株)において情報システムの企画・開発に従事しながら公認会計士試験に合格後、プライスウォーターハウスクーパースコンサルタント(現PwCコンサルティング)等を経て独立。現在、ブライトワイズコンサルティング合同会社代表。会計とITの専門性を活かしたコンサルティングを中心に、企業研修や各種セミナーの講師も多数行なっている。名古屋商科大学大学院ビジネススクールの教授も務める(ティーチング・アウォード多数回受賞)。

『MBA財務会計』(日経BP)、『「管理会計の基本」がすべてわかる本』(秀和システム)、『ケースで学ぶ管理会計』『理論とケースで学ぶ財務分析』(以上、同文舘出版)など著書多数。

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