『文章を書く』ことの苦手を好きにかえる

「文章を書くことがストレスです」
「文章を書くことが苦手で……」
「文章を書くのに時間がかかります」

そんな「文章アレルギー」の人は多いのではないでしょうか? しかし、文章を書けるかどうかは、仕事の成果や周囲の評価に大きく関わります。

そんな文章に関する「困った」にやさしく応えてくれるのが、『そもそも文章ってどう書けばいいんですか?』を著書にもつ、山口拓朗さんです。

この連載では、これまでライターとして3000件以上の取材・インタビューを経験した中から導き出した、「書くことが嫌い」を「書くことが好き」へと変える、文章作成のコツを教えてもらいます。

著者プロフィール

山口拓朗(やまぐち・たくろう)

伝える力【話す・書く】研究所主宰。出版社で編集者・記者を務めたのちに独立。これまでライターとして3000件以上の取材・執筆歴を誇る。現在は執筆活動に加え、講演や研修を通じて、「書かずにうまくなる段取り文章術」「論理的に伝わる文章の書き方」「好意と信頼を獲得するメール文章術」「すらすら書ける文章テンプレート活用法」等、その日から使える実践的ノウハウを提供。また、2016年より中国の5大都市で「SuperWriter養成講座」を定期開催中。

著書に『そもそも文章ってどう書けばいいんですか?』『何を書けばいいかわからない人のための「うまく」「はやく」書ける文章術』(共に日本実業出版社)ほか多数。文章作成の本質をとらえたノウハウは言語の壁を超えて高く評価されており、中国、台湾、韓国など海外でも翻訳されている。

「黒っぽい文章」は、読む人に嫌われる?

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2019/10/02 16:10

photo by TANEJIRO/写真AC)

 

一生モノのスキルになる! 『文章を書く』ことの苦手を好きにかえる方法<連載第20回>

伝える力【話す・書く】研究所を主宰し、「文章の書き方」に関する著書も多い山口拓朗さんに書き方のコツを教わります。今回は、見た目でストレスを感じる読みにくい「黒っぽい文章」について。

人も文章も見た目が9割?

この連載の一覧はこちら

文章を書くときに内容や書き方を気にする人は多いですが、文章の見た目を気にする人はあまりいません。しかし、わたしたちが思っている以上に文章の見た目は重要です。以前『人は見た目が9割』という本がベストセラーになりましたが、人だけでなく、文章にも同じことがいえます。

見た目で「読みにくい」と思われてしまうと、それだけで内容が頭に入りにくくなります。なかには「読みにくいなあ」とストレスを感じて、読むことをやめてしまう人もいます。どれだけ内容や書き方がすばらしくても、読む人にストレスを与えたり、苦労を強いたりする文章は“悪文”です。

「黒っぽい文章」は読みにくく、「白っぽい文章」は読みやすい。文章を書くときには、この原則を意識しておきましょう。

「黒っぽい文章」とは、文字がギュっと詰まって、全体が黒っぽく見える文章のこと。一方、「白っぽい文章」とは、適度に余白があり、視覚的な圧迫感が少ない文章のことです。

わたしたちが文章を書くときには、内容や書き方と同じくらい、見た目に注意を払わなければいけません。

「黒っぽい文章」と「白っぽい文章」を比較すれば一目瞭然

「黒っぽい文章」と「白っぽい文章」の例文を比較します。

【メール文章(原文)】
お世話になっております。株式会社BUNSHOの山田太郎です。
早速ご返信を頂き、誠に有り難うございます。
研修後に実施する懇親会にもご参加頂けるとの事。御多忙の中、調整頂き、心より感謝申し上げます。
研修タイトルですが、社内で協議した結果、「リーダー力向上研修」に決定しました。拝聴できる事を、今から楽しみにして居ます。
なお、事前に配布するレジュメにつきましては、10月21日(水)の正午迄に御送信頂けると助かります。
ご多忙の所、恐れ入りますが、どうぞ宜しくお願い致します。

おそらく、あなたも読みにくいと感じたことでしょう。文章は決して破綻していませんし、言葉足らずな点や、ムダな情報が盛り込まれているわけでもありません。

読みにくい原因は、その見た目にあります。このメール文章は、読む人に圧迫感を与える「黒っぽい文章」に該当します。

では、「白っぽい文章」を目指して修正してみましょう。

【メール文章(修正文)】
お世話になっております。
株式会社BUNSHOの山田太郎です。

早速ご返信をいただき、誠にありがとうございます。

研修後に行う懇親会にもご参加いただけるとのこと。
ご多忙のなか、調整いただき、心より感謝申し上げます。

研修タイトルですが、社内で協議した結果、
「リーダー力向上研修」に決まりました。
拝聴できることを、今から楽しみにしています。

なお、事前に配布するレジュメにつきましては、
10月21日(水)の正午までにお送りいただけると助かります。

ご多忙のところ恐れ入りますが、どうぞよろしくお願いいたします。

「白っぽい文章」に変化した結果、格段に読みやすくなりました。原文との違いは一目瞭然。ストレスなく読み進められるほか、内容も頭に入りやすくなりました。

読みやすい見た目に必要な3つのポイント

修正文(白っぽい文章)が原文(黒っぽい文章)より読みやすく感じるポイントは以下の3点です。

ポイント1:早めの改行

修正文で最も長い行は31文字です。メールの場合、長くても「1行=35文字」を目安にしましょう。文章が横に長くなるほど「読みにくさ」が増し、読む人の心理的負担が大きくなります。

また、1行が横に長くなるほど「同じ行を再び読んでしまう」リスクも高まります。句点(マル)で改行できれば理想ですが、難しい場合は、読点(テン)を打つ位置での改行を検討しましょう。

ポイント2:空白の行の使用

情報の区切りごとに「空白の行」を挟むことによって、見た目の圧迫感が減るほか、「どこに何が書かれているか」を把握しやすくなります。「空白の行」は単なるムダではありません。視覚的なストレスを取り除き、文章の理解度を高めるという、極めて重要な役割を担っているのです。

ポイント3:漢字→ひらがなの変更(一部)

「頂き → いただき」「有難うございます → ありがとうございます」「御 → ご」「事 → こと」「中 → なか」「居ます → います」「所 → ところ」「迄 → まで」「宜しくお願い致します → よろしくお願いいたします」など、原文に使われていた漢字の一部を、ひらがなに変更しました。

漢字が多すぎると、どうしても「黒っぽい文章」になりがちです(印象は硬め)。「ひらがな」を増やすことで読みやすくなるようなら「白っぽい文章」への変更を検討しましょう。受ける印象も和らぎます。もっとも、ひらがなが多すぎると、それはそれで幼稚な印象を与えかねません。さじ加減には十分に注意しましょう。

ちなみに、漢字の使用率は一般的に20〜30%が適正といわれています。原文の漢字使用率は約36%と高めでしたが、修正文では約26%の適正範囲へと低下しました。適正値が感覚的に身につくまでは、自分が書く文章の漢字使用率を小まめにチェックしましょう(漢字使用率を簡単に調べられるサイトもあります)。

なお、修正文では、「実施する → 行う」「決定しました → 決まりました」「ご送信 → お送り」という具合に、二字熟語を用いた表現の見直しも行いました。二字熟語を含む漢語表現の使いすぎも「黒っぽい文章」の原因のひとつと心得ておきましょう。

見た目にも配慮できる人が、本当の文章上手!

メールに限らず、報告書、企画書、提案書などの実用文、さらには、チラシやDM、カタログ、ウェブ文章など、ビジネスシーンのありとあらゆる文章で「見た目」の良し悪しが問われます。

伝わる文章を書ける人は、内容や書き方のみならず、文章の見た目でも、読む人に気配りができる人です。とくにテキスト情報が氾濫する現代社会では、「黒っぽい文章」が煙たがられる傾向にあります。自分の文章は黒っぽいかも……と思ったときは、「白っぽい文章」を目指して修正を試みましょう。

 

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そもそも文章ってどう書けばいいんですか?

「文章を書くことがストレス」「書くのに時間がかかりすぎる」「そもそも頭のなかにあることを文章にできない」……本書はそうした「文章アレルギー」のある人たちに、マンガを織り交ぜながら、わかりやすく文章の書き方をレクチャーしていきます。

著者:山口拓朗

価格:¥1,400-(税別)

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