あなたは経理部に配属された新入社員。簿記の知識は少しあるものの実務経験はなし。覚えることはたくさんありそうだけど、先輩は忙しそうで話しかけづらいし、何から勉強をはじめればいいのやら、先行きはとても不安で一杯……

本記事では、『経理部長が新人のために書いた経理の仕事がわかる本』(近藤仁著)の内容の一部を参考に、あなたの上司である「経理部長」の「1年でここまでは身につけてほしい」という視点で、新人が心がけるべき仕事への取り組みかたと基本的なスキルを解説します。

研修期間中に「自分の会社」を理解しよう

経理の仕事は、意欲があれば、そして順を追って学んでいけば確実に成長を実感できる職種です。専門知識が身につき、やりがいあふれる仕事でもあります。

経理は会社を経営するうえでの必要不可欠な「技術」です。最近はよく企業再編や、M&A(企業の合併・買収)等が話題になりますが、こうした場面においては、会社の業績を正確に把握するための「経理の技術」はさらに高度なものになっています。経理部門で働くことはこうした技術を身につけ、「経営」を理解する絶好のチャンスなのです。

そのチャンスを生かすために、新人は「自分の会社はどのような会社なのか」「どのような組織形態で動いているのか」を最初に理解しなければなりません。経理の技術も、それぞれの会社に合った使い方があるからです。まず経営理念やビジョンを把握したうえで、組織や各種の規程について勉強していきましょう。

入社1ヶ月、会社の雰囲気に慣れてきたら……

経理の基本は「簿記」「仕訳」といわれますが、ほとんどの会社は新人に手取り足取り簿記を教えるような余裕はなかなかありませんので、多少は自分で基本を勉強してみましょう。仕事の内容を早く理解できるようになります。

そのほかには、自社の給与体系に対して関心を持っておくことも大事です。年収と一口に言っても、まず賃金と賞与に分かれますし、その賃金も様々な手当が含まれています。加えて、給与には「育成や評価」といった人事処遇制度も関わっていますので、視野を広げることができるでしょう。

『経理部長が新人のために書いた経理の仕事がわかる本』P.13より

そのほかの業務として、交通費などの各種精算や伝票の起票、帳簿への記入や小口の出納などを任されることもあるでしょう。仕訳をきったり、勘定科目を覚え始めるのもこの頃です。

入社3ヶ月、ビジネスの流れを理解する

経理の仕事がわかる本

自分が任された経理の仕事をこなすなかで、会社全体のビジネスの流れを理解するように努めます。

販売や総務・人事などの他部門と「伝票」や「給与」などを通じてやり取りを深めていくことで、今月の売上はいくらだったのか? 給与がどれだけ支払われたのか? など、会社全体のお金の流れが、ぼんやりながらも見えてくるはずです。

具体的には、さまざまな経費の分類や管理、売掛金、買掛金の管理、給与計算や源泉徴収のための業務に関わり始めます。

入社1年、「会社の数字」をまとめあげるルールをマスターしよう

経験を重ねるにつれて、「経理の技術」も少しずつ高度なものになっていきます。会社の倉庫に行けば在庫があり、製造ラインでは機械が稼働していますが、それらの動きを「金額」という数字を使ってまとめあげるのが「経理」です。1年でその「まとめあげ方」のさまざまなルールを覚えることが必要です。

それが、2年目以降に中心的に関わるようになる「年次決算」業務の準備になりますので、以下の内容を具体的にマスターしておくといいでしょう。

  1. 税法にのっとった「固定資産」の管理と処理の方法
  2. 利益管理や決算のための「原価計算」
  3. 本業以外の儲けと損失「営業外損益」を理解する

「決算業務」、そしてさらなるステップアップへ

さあ、1年が経ちました。ここまでくれば、あなたのキャリアは順調なスタートを切ったといえるでしょう。周囲の先輩たちは決算業務で多忙を極めています。今はそのすべてを理解し、業務をこなすことができなくとも、勉強をはじめておくだけで2年目以降に大きく役立ちます。

また「会計」や「税法」の勉強を通じてレベルアップし、業務遂行力をつけておくのもよいでしょう。そうした知識・実務経験をもとに経理部門を引っ張っていける存在になれば、経営者に正しい助言や提言をできる存在、そして経営の中心を担う立場へとステップアップしていけるはずです。


『経理部長が新人のために書いた経理の仕事がわかる本』はオムロン株式会社の元経理部長が書いた、実際の職場での仕事のすすめ方に応じて経理・財務の知識を学べる「経理実務の入門書」です。「何をどのような順番で覚えていけばいいか」が明確に書かれているので、新人の指導書にもピッタリの超ロングセラーです。