取引先から送られてきた資料に、きれいな字で書かれた一筆せんが添えてあったり、とてもていねいな手書きの礼状をもらったりしたら、誰でも好印象を持つものです。
一方で自分の書いた字を見て、「下手な字だ……」と、がっかりすることも。昔に比べれば減っているとはいえ、手書きが必要な機会はまだたくさんあります。またそうした機会は、いつも以上に気を使うときでもあります。
やっぱり、社会人として恥ずかしくない程度には、字が上手になりたい。でも、ペン習字講座に通うのもなかなか時間がとれないし……。どうすればいいでしょう?

字の姿・形がきれいになるということは、まっすぐな線がきれいに書けるかどうかにかかっています」とは、書道教室「書道のはな*みち」を主宰する髙宮暉峰先生。

ということは、「まっすぐな線」が引ければ、字がきれいになるってことですか? それならハードルが低そうです。ならば早速、髙宮先生の著書、『「まっすぐな線」から始めるペン字練習帳』(以下同書)を開いてみましょう。

なぜ「まっすぐな線」が重要なのか

先生はまず、「きれいな字を書くためには、大前提として“きれいな字”とはどのような字であるのかを頭で理解しておく必要がある」と述べています。結論から言うと、「きれいな字」は次の3つの特徴を持っているのだとか。

1. まっすぐな線がきれいに引けている
2. バランスがとれている
3. その上で個性が表れている

なぜ、「まっすぐな線」が重要なのでしょうか。

「中」という字を考えてみます。きれいに書くために決め手となるのが、四画目の縦画です。この縦画が、すっと、ためらいなく、まっすぐ下方に向かって払われていたら、とてもきれいな「中」になります。

ところがこの縦画が左右に反れていたりしたら、仮に三画目まできれいに書かれていたとしても、台無しになってしまいます。

「まずは自分の字が曲がっているかどうか、確かめてみましょう」と髙宮先生。正面からだけでなく、逆さからも見てみるとまっすぐかどうかがはっきりわかるそうです。あらためて見て、曲がっていることに気づく人が意外に多いようです。

もし、曲がっていたりブレていることを自覚したら、「まっすぐな線」を引くことから始めてみましょう。どうすれば、きれいな「まっすぐな線」を引けるようになるのでしょうか。

 きれいな字を書くための体の使い方

「理想とするきれいな字のイメージはあるけど……」「手本を見て練習しても、思うように書けない」
こういった場合は体の使い方に問題があると言ってよいでしょう。(……)文字を書くときの姿勢は、スポーツで言えば、構え、フォームにあたる非常に重要な要素なのです。
(同書10ページより)

髙宮先生は「姿勢を正せば字が変わる」と述べています。ぜひ一度、字を書くときの自分の姿勢をチェックしてみましょう。背筋を自然にまっすぐ伸ばし、ハガキや便箋などの書くものに対して中心を合わせて座るのが正しい姿勢です。机と自分の体の間を適切にあけて、足は自然に床につけます。

まっすぐ姿勢
スポーツもペン字も体の使い方が重要(同書10ページより)

正しい姿勢がとれたら、ペンで、漢字の「十」を書いてみましょう。「十」は線をまっすぐに引けないときれいに見えません。

十
「十」をまっすぐ書けますか?(同書25ページより)

 

さて、書いたとき、手のどの部分が動いたでしょうか。指先だけ動いていませんか。あるいは手首が曲がっていないでしょうか。

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