「初対面の相手とも、気楽に話せたら」「気の利いた雑談で、職場を明るく出来たら」というように、雑談に対して苦手意識をもつ方は多いのではないでしょうか。しかし簡単なようでいて、実は奥が深いのが「雑談」の難しい点です。楽しく話すつもりが、間違った方法で相手の地雷を踏んでしまうことも――!?

記事では人気国語講師で大人らしく和やかに話す 知的雑談術』の著者である吉田裕子先生が、人と話すときに要注意な雑談NGポイントを3つ紹介します。

「雑談上手」は、仕事もできる!?

みなさん、周りの人と雑談をするのは好きですか? 仕事に雑談は必要ないという方もいるかもしれませんね。

しかし、たかが雑談、されど雑談。

雑談力を身につけると、仕事の可能性や人間関係の幅が広がります。とくに営業やサービス系の仕事につく人にとっては、雑談力があるかどうかで仕事のしやすさが大きく変わってくるはずです。

雑談ができると、新しい人と出会えます。ちょっと一緒になったぐらいの人ともコミュニケーションを取れるようになれば、縁や人脈がつながります。実際に私も、講演会でたまたま隣の席に座った相手と盛り上がり、その後、十年単位で友人としての付き合いが続いている、という経験があります。

それに、自分の過ごすコミュニティを居心地の良いものにすることができます。例えば、事務的でカタい空気の職場。ここで、仕事のやりとりにさりげなく雑談を加えれば、和やかな雰囲気が生まれ、相互理解や協力を引き出しやすくなります。

自分の世界を広げ、豊かな人間関係を築く。その道具として、雑談力をぜひ身につけたいところです。

とはいっても、「雑談がうまくなりたい!」と張り切ると、空回りをしてしまいがちです。あなたは無意識のうちに、相手の地雷を踏んでいませんか? ここではそんなよくあるNG例を取り上げてみます。

地雷1 無意識のマウンティング

雑談の1つとして、雑学を披露したり、経験談を話したりすることがあります。そこで振り返っていただきたいのが、「無意識にマウンティングをしていないか?」という点です。

「マウンティング」とは、「自分はあなたよりも上だ」と誇示する言動です。

例えば、旅行に行った思い出を語るときに、

  • いかに高級なホテルに泊まったか
  • いかに良いレストランに行ったか

をアピールする話し方をする人がいます。それは、雑談でなく自慢話。人の自慢話をわざわざ聞きたい人はいません。

また、避けるべき禁句が、「知らないんですか?」です。

  • えーっ、そんな基本的なことも知らないんですか?
  • 私は当然知っていますが、あなたは知らないんですか?

と聞こえかねない言葉です。「教えてやる」「仕方がないから説明してあげるよ」といった態度に陥っていないでしょうか。

地雷2 土足でプライバシーに踏み込む

人にはそれぞれ「ここからは私のプライバシーだ」と考える範囲があります。「誰にでも何でも話せる」というオープンな人もいますが、職場では「プライベートなことは一切話したくない」というポリシーの人もいます。

居心地よく雑談を楽しむには、「求める距離感が人によって違う」という認識が重要です。

マズイのは、

「自分はここまで話したんだから、そちらも言えって」
「これくらい聞くのは当然でしょ」

と自分のプライバシー観を人に押しつけてしまうことです。土足でプライバシーに踏み込んではならないのです。

いきなり立ち入った質問をするのは避け、他愛のないことを質問しながら、その人の求める間合いを探りましょう。そして、質問するときには、

「言いたくなかったら言わなくて大丈夫だから」
「言える範囲で大丈夫なんだけど」

などと、相手のプライバシーに配慮する姿勢を忘れないようにしてください。

地雷3 下品な悪口

悪口は時に雑談を盛り上げるスパイスにもなるのですが、自身の評判を下げたり、人間関係の悪化につながったりすることも……。悪口があまり下品にならないよう、注意したいことをまとめました。

■人と出来事を切り離す

「人柄はいいのにこの点は惜しい」「あの部分だけ直せばいいのにもったいない」という語り方をして、攻撃的な印象になるのを避けましょう。

■別のコミュニティで愚痴を言う

会社の愚痴は友人に言い、大学時代の友人の愚痴は中学時代の友人に言う、というように、悪口をこぼす先をずらすようにします。

■自分の欠点・落ち度も語る

「私も忙しいときに話しかけられると、ちょっとイライラするけれど、さすがに課長の『君の相手をしている時間はない』っていう言い方はないわー」
「たしかに、会議の直前で声をかけたのは悪かったけれど、『君の相手をしている時間はない』っていう言い方はひどいと思った」

というように、自分の側にも欠点・落ち度がある、として語るほうが、バランスの取れた人物に見えます。

■解決すべき課題として言う

「部長って結構、キツい言い方のときあるよね」

これだけで終われば、単なる悪口です。でも、それに続けて、

「後輩から見れば、自分もああいう風にキツい言い方になっているときがあるかもしれないな。こういうのってパワハラって言われかねないし、どうしたらやめられるかな」
「どういうときに話しかければ、怒られにくいか、知ってる?」

と、解決策の議論・相談をする方向に持っていくことで、建設的な会話になります。

■共通の敵にする

単にある個人の悪口として語らず、少し対象を広げることで、聞き手にとっても共感しやすい話になることがあります。例えば「山田部長、すぐ意見変わりすぎ!」とせずに、「どうして、上の人って判断をすぐに変えがちなんだろう」という言い方にするのです。