お客様の97%は、初対面のあなたが勧める商品やサービスなど、もともと興味がありませんし、ましてや買う気などハナからないのです。まったく買う気のない人に営業をかけても、断られるのはあたりまえです。
(はじめにより)

『必ず買う「3%のお客様」の見つけ方』(日本実業出版社)の著者・西良旺子さんは、33歳の時、学歴・職歴なしで株式会社リクルートに入社しました。雑誌「ホットペッパー(当時の誌名は「サンロクマル」)」の広告営業を担当し、わずか2年後には関西エリア通期MVPを3期連続受賞。他にも受注件数全国第1位、「新規受注件数キャンペーン」などでも1位をとるなど、数々の実績を出し続けました。

その華々しいキャリアには、理由があります。それは、必ず買う「3%のお客様」にターゲットを絞り営業をかけたからです。たとえば、坊主頭の人に整髪料を勧めたとしても当然断られるのは誰にでもわかります。しかし、実績をあげることのできない営業マンの多くは、そのように「商品を必要としていない97%のお客様」にアタックし続けているのです。成績があがらないのは当然です。

そのようなムダな営業をやめて、残り「3%のお客様」にターゲットを絞れば、興味深々で話を聞いてくれ、あなたの説明や提案に納得し、喜んで商品を買ってくれる可能性が高いはずです。

重要なのはその「3%のお客様」の見極め方ですが、その前に、自分がどういう営業マンであるのかを知ること。それが売れる営業マンになるための大切な心構えだと、西さんはいいます。つまり、「自分」を知っていると顧客に対する「アプローチ」が変わり、「結果」が変わるということです。それを可能にするために、本書の第1章「あなたはどのタイプの営業マン? まずは自分自身を知ろう」から代表的な4つのタイプをみてみましょう。

アプローチに勇気がいる「人見知りタイプ」

人と話すのが大の苦手。とくに初対面の人に話かけるのに勇気がいるのが「人見知りタイプ」です。「そんな人、営業マンなんて務まらないのでは?」と思うかもしれません。

しかし、人見知りタイプは「相手を不快にさせたらどうしよう」といつも相手を気遣っているからこそ、うまく話せないのです。また、自分を取り繕うことが苦手ですし、嘘をついたり人を騙したりといったこともできません。これは裏を返せば「信用できる人間」だともいえます。

このタイプは下手に演技をしようとせず、「人間ウォッチング」と「聞き役」に徹しましょう。丁寧に人間ウォッチングをすると、どんな相手でも「よいところ」を見つけられます。見つけたら、思い切って褒めましょう。褒められれば相手も悪い気はしません。また、話をするのが苦手でも、うなずきや相づちをし「聞き役」に徹することで、少しづつお客様の信頼を得られます。

顧客のリストアップや継続フォローが苦手な「ルーティンタイプ」

このタイプは、スケジュールを立てるのが苦手なため、行動するのが後手後手になります。そこで西さんがすすめるのが、訪問顧客のリストアップのために日々の営業活動を欠かさず記録することと、未来のスケジュールを前倒しでどんどん決めていくことです。

たとえば定期的に訪問するところなら、訪問時に次回の約束をその場で決めて、スケジュール帳に書き込んでしまう。とにかく、予定は前倒しでどんどん入れてしまうことが大切です。

また、顧客フォローのためには、情報をこまめに記録することが大事です。顧客ごとに表を作成し、担当者名や商談の内容、次回までの宿題などを記録します。さらには商談がいまどの段階にあるのかをメモしておきましょう。「ほぼ決まり・五分五分・アプローチをかけたばかり」などと記載しておけば、次回の準備もしやすくなります。

商談やプレゼンにストレスを感じる「遊び心少な目タイプ」

このタイプの人はお客様と普通に話すことは苦にならないのですが、商談やプレゼンの段階になると、具体的な進め方がわからないために苦手意識を持ち苦痛を感じます。

その場合は、ゼロから考えようとせず、商談のマニュアルを入手したり、先輩の事例を参考にして、いろいろなケースを想定し、自分の商談にあうようにアレンジすればいいでしょう。ただし、1番大事なのはお客様自身が何をのぞんでいるのか、です。十分にヒアリングして聞き出すことも大切です。

また、同僚、上司で企画力や発想力のある人に相談する方法があります。そういう人たちは常に「こんな提案をしたらおもしろいな」「これは、相手が喜んでくれるはず!」などと考えているはずです。

当然ながら、新聞や本、TV、ネットから、多くの人に支持されていることを学び、それを商談やプレゼンに活かすのです。アンテナをはりさまざまな情報を持っておきましょう。

クロージングが苦手な「交流大好きタイプ」

「交流大好きタイプ」は社交的で、一見、営業マンに向いているように見えますが、クロージングの段階になると「買うのか」「契約するのか」をお客さまから聞き出すことが苦手です。このタイプは、商品、あるいは営業マンとしての自分に自信がないため、まずはお客様と仲良くなってしまおうと考えます。しかし、お客様と仲良くなればなるほど、いざビジネスの話(お金の話)になると、聞きづらくなります。

お客様に「結局は契約が目当てだったんだな」「売れば終わりなんだろう」と思われるのが怖いのです。

しかし、営業マンである以上、最後はクロージングしなくてはいけません。自分は営業マンなんだという意識を強く持ち、お客様と一定の距離を置いて、ビジネスライクに付き合うことが大切です。また、クロージングする際、「OK」か「NO」の二択ではないということを頭に入れておくことです。あくまでも、その商品をいまのタイミングでは必要がないだけで、関係性に「NO」を出されたわけではありません。

断ったお客様が別のお客様を紹介してくれる場合もあります。また、何年も経ってから、別の商品を違うニーズで契約してくださる場合もあります。NOの返事をもらったときの態度、言葉が大事です。

最終的に成約しなかったとしても、「自分(自社)は○○が得意なので、○○でお困りのことがあればご相談ください。これからもよろしくお願いします」と具体的に伝えておきましょう。クロージングはあなたをアピールするタイミングでもあると思えば、怖くありません。

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売れる営業マンは、自らのタイプを把握し、その長所と短所を活かした営業スタイルでお客様と関わっています。そのうえで、本書は「必ず買う3%のお客様」の見つけ方をはじめとした、売れる営業マンのためのノウハウが満載の1冊です。