PayPal、LinkedIn、Dropbox、Tesla Motors、Airbnb……。革新的なアイデアとサービスで世界を席巻するこれらのスタートアップは、「未来を変えたい、創造したい」と夢想する起業家たちの熱意と行動から生まれた。

彼らは天才なのだろうか。彼らは、世界を変えるための才能と知性とエネルギーを生まれながらにして持ち合わせた、特別な存在なのだろうか。

この問いに答えてくれるのが、ピーター・ティールやリード・ホフマンといった起業家たち200名に直接取材し、そのスキルと本音に迫った書籍『クリエイターズ・コード 並外れた起業家たちに共通する6つのエッセンシャル・スキル』だ。

欠くことのできない「6つのスキル」

本書を読めば、彼ら(本書では「クリエイター」と呼ぶ)は決して「特別な人間」というわけではないことがわかる。その卓越性は彼らが持つスキルにあり、それは私たちのような普通の人間も学習すれば実践できるものだと、著者のエイミー・ウィルキンソンは言う。

ビジネスチャンスを見つけ、商品を考案し、起業する能力は誰にもある。(中略)新世代の夢見る人たちは、それを実行しているにすぎない。何でもないアイデアを驚異的なビジネスに変える。「クリエイターズ・コード」の解読に成功し、本書で紹介する6つの大切な要件を備えている「クリエイター」である。その姿を見れば、ちょっとした勇気と鍛錬によって、誰でも起業家になれることがわかる。(13ページより)

「6つの大切な要件」とは、著者が、5年におよぶインタビューと調査、研究から導き出した、起業家たちが共通して持つ以下のスキルだ。

1.ギャップを見つける
常に注意を払いながら、ほかの人が気づかないチャンスに目をつける。
2.光に向かって進む
常に将来に目を向け、自分が進むべき方向、まず注目すべき点をわかっている。
3.OODAループを飛行する
思い込みを持たず、激しい変化のスピードに合わせて「観察(Observe)」「情勢判断(Orient)」「意思決定(Decide)」「行動(Act)」できる。
4.賢く失敗する
小さな失敗を重ねなければ、致命的なミスを避けられないことを理解している。
5.知恵のネットワークを築く
多面的な問題解決のために、多様な人材の能力を結集しそれぞれの発想を活用する。
6.小さなギフトを贈る
親切に相手をサポートし、情報を共有し、作業に協力し、仲間にもチャンスを提供する。

ここでは、上記のうち2つのスキル──「ギャップを見つける」「賢く失敗する」を、本書に登場する稀有な起業家たちのエピソードや言葉を引きながら紹介したい。

イーロン・マスクが見つけたギャップ

PayPalの前身であるX.comやロケットの製造開発会社SpaceXの創業者であり、Tesla MotorsのCEOとしても知られるイーロン・マスク。彼は幼い頃から既存の考えに疑問を持ち、両親を質問攻めにするような子どもだった。大学入学後は教員やクラスメイト、友人や恋人にも「人類に影響を与えるものトップスリーは何だろう?」などといった議論を吹っかけていたそうだ。