中学校の公民、あるいは高校の政治経済の授業では「株式」のしくみについて習います。そこで株にまつわる基礎として「業績が良い企業の株価は上がり、業績の悪い企業の株価は下がる」と教えられます。

それ自体は別に間違っていません。業績の上昇は企業の価値を高めます。株主配当の増加や株主優待のラインナップを充実させる余裕が企業側に生まれる(業績悪化だとその反対)こともあるでしょう。そうした結果人気が高まり、それに伴って株価も上昇します。なので「株価は業績を表す指標である」というのは、ある意味では正しいと言えます。

しかし、株価は業績がすべてを決めるわけではありません。期待と失望、欲望に恐怖など「“ドロドロとした思惑”の絡み合いの末に決まるもの」でもあります。それでは、教科書に書かれていない「株価の決まり方」を実例を交えながら見てみましょう。

まずは教科書的な話から

本題に入る前の前提知識として、株価決定の「教科書的なプロセス」をみてみましょう。冒頭で「株価は業績を表す指標である」と書きましたが、企業そのものに関係する条件だけではなく、「金利の上下」「円高・円安」「産業動向」「原油価格」など、株式市場を取り巻く環境要素によっても株価は動きます。

たとえば、中央銀行は市中に出回る資金量を調整するため、金利を上下させることがあります。金利が上昇したら、

  1. 金利が上がることで市中からお金を引き上げられ、資金需要がひっ迫する
  2. 株式市場に流入する資金量が減る
  3. 株価が下がる

といった具合に経済が動きます。こうした環境要素の変動と株価の連動性の例をいくつか挙げると、以下のようになります。

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株価を動かす要素と、予想される動き方(『入門 株のしくみ』(杉村富生著)p.67より)

これら国家レベルの諸要素(例:金利、為替)と企業レベルの諸要素(例:収益率、企業業績)を総称してファンダメンタルズと言います。投資家のなかにはファンダメンタルズを使って相場全体の動きを予測したり、個別企業の妥当な株価を探ったりし、「将来的に○○円まで動きそうなので、いまのうちに買って(or売って)おこう」と判断してアクションを起こす人もいます。

また、経済ではなく政治的な要素も株価を決定づける要素となります。「○○産業は国の成長をけん引する役割を担うに足るものとして考えられる」という動きがあれば、産業全体に国のお墨付きがついたも同然です。そうなると当然期待があつまり株価が上昇します。こうした一連の株はテーマ株と呼ばれ、最近であればフィンテック・人工知能・自動運転・AR/VR・ドローン関連産業などが、テーマ株として人気を集めています。

また、こうしたテーマやファンダメンタルズ、個々の企業が発信する情報などを総じて、投資判断の材料と呼びます。

非投資家が知らない株式市場の世界

人間はお金が絡むと必ず欲が出る生き物です。投資でもギャンブルでも「進んで損をしたい」と思って手を出す人はまずいません。なかには楽しむのが一番の目的という人もいるでしょうが、それでも「あわよくば利益を上げたい」と望んでいます。

その結果損したとしても、少額なら「あーあ、負けた。損したなぁ」と思う程度でしょう。しかし、それが高額になってくるとどうでしょうか。そうした「欲と恐怖によって乱高下した株価」の事例をいくつか見てみましょう。

ケース1:時価総額に抱いた夢と弾けた欲