地層や石のことを学ぶのは、地球や宇宙のことを面白がるためです。それじゃダメですか。何の役に立つかは、学んでみれば分かります。自分で「役に立つこと」を見つけることが面白いのです。

学芸員が仕掛けるトラップ

博物館施設では時間をかけて学んでもらうことは困難です。そこで、学芸員というのは通りすがりの人に興味を持ってもらうような仕掛けを考えるものです。いわば、自分の専門分野にハマってもらう“トラップ”を作ろうと知恵を絞っています。

そのひとつが、展示や普及イベントなどで「美しい、大きい」といった視覚的な感動を提供することです。私もよく有効な“トラップ”を開発するため、展示の裏から来館者の感動ポイントを偵察しています。

私は、自分の感動ポイントを話して「え、そこ?」とドン引きされる経験を重ねました。おかげで気付きました。一般の方とどれほど感動ポイントがずれているのか、どれほど地球科学の醍醐味を知ってしまったのか。

そして、地球科学の効能もわかったつもりでいます。身近な風景や崖の石などを見ては、いちいち感動するようになってしまいます。地球を俯瞰できるようになります。空間的かつ時間的スケール感が変わってしまいます。それほどまでに地球科学は知的好奇心が刺激する作用が強く、地球科学無しでは満足できないほどの中毒になりやすいのです。

ですから、地球科学の醍醐味を知ってしまった学芸員が書く本にはお気をつけください。教室で使うという想定は考えにくいので、“トラップ”に違いありません。どうやら『本当にわかる地球科学』は、教科書でも参考書でもなさそうです。地球科学が本当に面白いということがわかってもらえるような話題を盛り込んだ読み物のようです。

読者の方が、自分なりの感動ポイントを見つけることで地球科学中毒になってもらうことが、著者の狙いだと考えられます。十分気をつけて読むことをお勧めいたします。


最終回はこれまでの視点とは違い「イトカワと熊本地震でみる地球科学」というテーマで解説していただきました。

これをきっかけに化石や地質、また本連載では直接その内容に触れませんでしたが、天文、自然災害と防災の取り組みなど、地球科学に興味を感じていただけた方は、西本さんが書かれた『本当にわかる地球科学』を読んでみてはいかがでしょうか。

また、前回・前々回でもお知らせしている通り、名古屋市科学館では6月半ばまで特別展を開催中です。名古屋に行く予定のある方、また近隣の方は是非足を運んでみてください。

名古屋市科学館 特別展「恐竜・化石研究所」開催中!

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(画像は、特別展「恐竜・化石研究所」公式サイトよりキャプチャ)

開催期間:2016/3/19(土)~2016/6/12(日)
開館時間:午前9:30~午後5:00(入場は午後4:30まで)
休館日:毎週月曜日(ただし3/21,5/2は開館)、3/22(火)、4/15(金)、5/10(火)、5/20(金)

※その他、会場までのアクセス、入場料等につきましては下記公式サイトをご参照ください。
名古屋市科学館「恐竜・化石研究所」特設ページ