本当にわかる地球科学』の共著者であり、名古屋市科学館主任学芸員の西本昌司さんによる短期集中連載。前回は「ブラタモリ的な視点でみる地球科学」として、El Capitanと恐竜の化石を引き合いに地球科学の面白さを語っていただきました。

第2回となる今回は視点を移し「壮大な視点で捉える、地球科学の面白さ」について語っていただきます。

宇宙から俯瞰(ふかん)すること

宇宙飛行士の言葉を聞くと、宇宙から地球を見たときのなんともいえない感動があることがわかります。たとえば、2005年に日本人として初めてISSで船外活動を実施した野口聡一氏は、次のように述べています。

窓越しに景色としての地球を「見る」のと、目の前にある地球を物体として「感じる」のとでは、リアリティが違う。なにしろ自分が生まれて以来見てきたすべての人々、すべての生命、すべての景色、すべての出来事は、目の前にある球体で起きたことなのですから。それは知識ではなく実感です

(東京大学教養学部第二次立花隆ゼミ・SCI「対談-野口聡一×立花隆-第3回」より抜粋)

眼前に広がる眺望に、言葉ではとても表現できない感動があることが伝わってきます。

おそらく、地球に対する畏敬の念のような感情が湧き上がってくるのでしょう。もしくは「自分の経験すべての基となってきた風景そのものを、宇宙から見下ろす」という行為が、不思議な感覚をもたらすのかもしれません。自分との関係を意識しながら実際に見る、つまり視覚と知識・経験をリンクさせることが、深い感動の源になっているのです。

また、実際に地球を俯瞰することは宇宙飛行士でなければできませんが、宇宙まで行かなくても、飛行機や山の上から大地を見下ろすことはできます。たとえば、飛行機から自分の故郷や長く住んだ街を見ると、地上で風景を眺めるのとは違う感動を覚えますし、高い位置から俯瞰することで、普段暮らしている場所の位置関係や大きさなどを理解できます。

それどころか、今やどこにも出かけなくとも、航空写真でできた地図や衛星画像を見ることができます。それを通じて、人間の小ささや地球の大きさを感じることもあるでしょう。