私の改善案を示しましょう。じつは、「交通手段」という言葉を使っていません。

 私は、都内ならどこへでも電車で出かける。それで行けないところはほとんどない。

これでどうですか。言いたいことは全部言えているでしょう? 文章を書くとなると、ちょっとあらたまった言葉を使いがちなんですが、「交通手段」などという難しい言葉を使う必要はないでしょう。

また、原文を見ますと「ほとんど」と「電車」が2回出てきています。改善案では、これらをひとつにして、さらに、「済ますことができている」「のように思われる」という語尾も冗長なので取りました。

言いたいことを整理して、同じ言葉、あるいは同じ意味の言葉を取り去って、さらに、なくてもいい言葉を削ると、読み手に親切で、好感を持たれる文章になります。

「主役」は早く登場させる

第3章のテーマは「分かりやすく書く」です。

文章を書くときに最も大事なのは、読み手の身になって感じたり考えたりする想像力をどれだけ持っているか、ということなんです。そうした想像力が豊かであれば、文章は分かりやすくなるはずです。

次の原文は私が教えている学生が書いた文章です。

【問題】
 私は後ろで支える地味ですが大事で誰かがやらねばならない仕事を行う庶務を志望します。

この文は、何を言いたいのかが、なかなか分かりません。どうぞ、改善してみてください。

【参加者】
 私は庶務を志望します。なぜなら庶務は後ろで支える地味ですが大事で誰かがやらねばならない仕事を行っているからです。

私の案とは少し違いますが、趣旨は同じなので正解です。私は、次のように改善しました。

 庶務は地味ですが誰かがやらねばならない大事な仕事です。私は皆を後ろで支えるその仕事を志望します。

原文は、前半を読んでいるとき、何の話が始まったのだろう?と考えてしまいます。謎かけのようなものです。「仕事を行う庶務」が出てきて、ああ、庶務の話かと、ようやく分かるんですね。

主役を早く登場させて、何の話をしているのかということを読み手にも早く分からせてあげると、読み手は安心して読み進められます。読み手の身になって考える想像力があれば、原文のような文章にはならないと思うんですね。

また、私の改善案では、主語を「庶務」と「私」に分けました。最初に「庶務はどんな仕事か」を説明し、次に「私はその仕事を志望する」としました。こうすれば読む傍から理解できます。

「最後まで読んで考えれば分かる」という文章は親切ではありません。

次の問題です。

修飾語は直前に置く/時系列で書く

【問題】
 入社2年目になって、次第に窮屈だと感じていた仕事の進め方が、合理的だと感じられるようになった。

【参加者】
 窮屈だと感じていた仕事の進め方が、入社2年目になって、次第に合理的だと感じられるようになった。

正解です。原文は、「入社2年目になって、次第に窮屈だ、と感じるようになった」と言っているみたいですよね。でも最後まで読むと、言いたいことは逆のことらしい、と気付きます。この場合「次第に」という修飾語は「合理的だと」の直前に書くべきです。ところが「窮屈だと」の前にあるので、誤解を誘ってしまいます。

また、文章は、時間を追って時系列で書いたほうが分かりやすくなります。この文例の場合には、2年目の話から始めずに、1年目の話から書くということです。小説などではあえて時間を逆転させたりすることはありますが、社会人や学生が書く文章は、簡潔明瞭であることがとても大事ですので、時間を追って書くことを勧めたいと思います。



ワークショップはこの後も「的確に書く」「共感を得る」「話し言葉の影響を避ける」と続きましたが、レポートはここまで。ご興味を持たれた方は『文章力の基本の基本』をどうぞ!