人名・地名 おもしろ雑学

日本で一番多い名字は佐藤で、2番目が鈴木といわれています。しかし、「本当?」と思っている人も多いのではないでしょうか。東京の周辺に住んでいる人は違和感がないでしょうが、関西の人だと、一二を争うのは山本と田中だろう、と思っています。

交通が便利になって、東京からだと、離島や山中を除いてほとんどの所に日帰りできるようになりました。でも、日本は狭いようで、まだ地域差は残っています。そんな日本を名字や地名からみつめ直してみたいと思っています。

著者プロフィール

森岡 浩(もりおか・ひろし)

姓氏研究家・野球史研究家。1961年高知市生まれ。土佐高校を経て早稲田大学政治経済学部卒。学生時代から独学で姓氏研究を始め、文献だけにとらわれない実証的な研究を続けている。一方、高校野球を中心とした野球史研究家としても著名で、知られざる地方球史の発掘・紹介につとめているほか、全国各地の有料施設で用いられる入場券の“半券”コレクターとしても活動している。

現在はNHK「日本人のおなまえっ!」解説レギュラーとして出演するほか、『名字の地図』『高校野球がまるごとわかる事典』(いずれも小社刊)、『名字の謎』(新潮社)、『日本名字家系大事典』(東京堂出版)など著書多数。

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塔のへつり

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2021/06/21 10:30

「塔のへつり」という観光スポットを聞いたことがあるだろうか。

福島県会津地方の下郷町にある渓谷で、中央が削られた奇岩が立ち並ぶ不思議な場所だ。かつては極めて交通の便の悪い場所だったが、野岩鉄道が開通し、接続する会津鉄道に廃止となっていた塔のへつり駅が復活したことで、都心からは行きやすくなった。とはいえ、実際には相当の時間がかかり、鉄道で訪れる人はほとんどいない。

塔のへつり駅

「へつり」というのは古語で、一部を削り取ること。中央部がえぐられた奇岩が、塔の一部を削ったようにみえることから「塔のへつり」といわれている。
なぜ、こんな地形になったかを「ブラタモリ」風にいえば、この付近は第三系凝灰岩、凝灰角礫岩、頁岩などが互い違い重なった地層となっており、このうち柔らかい部分だけが谷底を流れる大川によって浸食されてできたものだ。

ところで、この「塔のへつり」、現地では「塔の岪」と漢字で書かれていた。他ではみたことのない「岪」という漢字がJISの第2水準までに入っていないため(第3水準)、駅名も含めて「塔のへつり」とひらがなで書くことが一般化している。

なお、200mにわたって奇岩が続いているというが、現在はつり橋付近以外は立ち入り禁止となっていた。

近くのつり橋
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