人名・地名 おもしろ雑学

日本で一番多い名字は佐藤で、2番目が鈴木といわれています。しかし、「本当?」と思っている人も多いのではないでしょうか。東京の周辺に住んでいる人は違和感がないでしょうが、関西の人だと、一二を争うのは山本と田中だろう、と思っています。

交通が便利になって、東京からだと、離島や山中を除いてほとんどの所に日帰りできるようになりました。でも、日本は狭いようで、まだ地域差は残っています。そんな日本を名字や地名からみつめ直してみたいと思っています。

著者プロフィール

森岡 浩(もりおか・ひろし)

姓氏研究家・野球史研究家。1961年高知市生まれ。土佐高校を経て早稲田大学政治経済学部卒。学生時代から独学で姓氏研究を始め、文献だけにとらわれない実証的な研究を続けている。一方、高校野球を中心とした野球史研究家としても著名で、知られざる地方球史の発掘・紹介につとめているほか、全国各地の有料施設で用いられる入場券の“半券”コレクターとしても活動している。

現在はNHK「日本人のおなまえっ!」解説レギュラーとして出演するほか、『名字の地図』『高校野球がまるごとわかる事典』(いずれも小社刊)、『名字の謎』(新潮社)、『日本名字家系大事典』(東京堂出版)など著書多数。

●サイト(オフィス・モリオカ)
  → https://office-morioka.com/
●ツイッター
  → http://twitter.com/h_morioka
●facebookページ
  → https://www.facebook.com/officemorioka/
●Instagram
 → https://www.instagram.com/office_morioka/

 

「鬼滅の刃」と渋谷金王丸

このエントリーをはてなブックマークに追加

2021/01/25 09:05

(Illustration by Kamiya Ichiro/Adobe stock)

アニメ・映画で「鬼滅の刃」が人気だが、1月14日付の新潟日報に「鬼の墓」がある、という記事が掲載されていた。記事によると、新潟県新発田市下石川に「鬼墓」と書かれた標柱があり、その写真も掲載されている。ただし、この「鬼」とは渋谷金王丸のことであるという。

渋谷金王丸は源義経の父義朝の家臣だった人物で、その詳細はよくわからない。一般的にはのちに刺客として義経の館を襲ったものの失敗し、逆に討たれてしまった土佐坊昌俊(しょうしゅん)と同一人物とされるが、確証はないという。

新発田市の伝承では、金王丸は義朝が尾張国で謀殺された後は越後国に落ちたとされ、下石川を中心に付近にはその末裔という渋谷一族が広がっている。

金王丸の出た渋谷氏は桓武平氏の名族だ。相模国高座郡渋谷、現在の神奈川県大和市渋谷を名字の地とし、後に今の東京・渋谷付近を所領としたことから同地が渋谷という地名になった。渋谷駅の東側にある金王八幡宮は渋谷金王丸を祀ったもので、近くの金王坂という地名も金王丸に因んだものでいる。

金王丸の墓は全国に多数ある。多分に伝説的な人物で、新潟では鬼に化している。

このエントリーをはてなブックマークに追加

ページのトップへ