人名・地名 おもしろ雑学

日本で一番多い名字は佐藤で、2番目が鈴木といわれています。しかし、「本当?」と思っている人も多いのではないでしょうか。東京の周辺に住んでいる人は違和感がないでしょうが、関西の人だと、一二を争うのは山本と田中だろう、と思っています。

交通が便利になって、東京からだと、離島や山中を除いてほとんどの所に日帰りできるようになりました。でも、日本は狭いようで、まだ地域差は残っています。そんな日本を名字や地名からみつめ直してみたいと思っています。

著者プロフィール

森岡 浩(もりおか・ひろし)

姓氏研究家・野球史研究家。1961年高知市生まれ。土佐高校を経て早稲田大学政治経済学部卒。学生時代から独学で姓氏研究を始め、文献だけにとらわれない実証的な研究を続けている。一方、高校野球を中心とした野球史研究家としても著名で、知られざる地方球史の発掘・紹介につとめているほか、全国各地の有料施設で用いられる入場券の“半券”コレクターとしても活動している。

現在はNHK「日本人のおなまえっ!」解説レギュラーとして出演するほか、『名字の地図』『高校野球がまるごとわかる事典』(いずれも小社刊)、『名字の謎』(新潮社)、『日本名字家系大事典』(東京堂出版)など著書多数。

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金子さんのルーツ

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2009/10/19 09:06

先日、JR八高線の金子駅に行ってきた。

八高線は、中世に栄えた武蔵七党の本拠地を南北に横断する鉄道で、沿線には児玉党や丹党の本拠地がある。今回訪ねた金子駅も、武蔵七党の一つ村山党の一員だった金子氏の本拠地である。

武蔵七党とは、平安時代後期に関東地方西部に栄えた同族武士団のこと。七党とはいいながら、実は九つの党があったことが確認されている。

村山党は、今の東京都東村山市付近を本拠地とした桓武平氏の一族で、多摩西部から埼玉県秩父地方にかけて広がっていた。その中の1つが、武蔵国入間郡金子(現在の埼玉県入間市金子)をルーツとする金子氏である。

一族の金子家忠は、源平合戦で源義経に従って活躍し、その功によって鎌倉時代には全国各地に所領を得た。このため子孫は全国に散らばっており、各地の金子さんは、この金子家忠の子孫というものが多い。武蔵金子に住んでいた直系は、戦国時代まで武将として一定の力を保っていたが、豊臣秀吉の小田原攻めで滅んでいる。

さて、JR金子駅は、駅前でも田園風景だ。八高線はローカルなため、まだベッドタウン化していない。ただし、「金子」という地名は駅から少し離れたところで、そこには中学校や郵便局、JAなどが立ち並んでいる。そして、集落から少し山に上ったところに、金子神社があった。



金子神社


ごく小さな無名の神社だが、この日もお参りをしている地元の人がいた。特別に何かがあるわけではないが、いかにも、中世に名字の生まれた集落であることを感じさせるところだった。
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