人名・地名 おもしろ雑学

日本で一番多い名字は佐藤で、2番目が鈴木といわれています。しかし、「本当?」と思っている人も多いのではないでしょうか。東京の周辺に住んでいる人は違和感がないでしょうが、関西の人だと、一二を争うのは山本と田中だろう、と思っています。

交通が便利になって、東京からだと、離島や山中を除いてほとんどの所に日帰りできるようになりました。でも、日本は狭いようで、まだ地域差は残っています。そんな日本を名字や地名からみつめ直してみたいと思っています。

著者プロフィール

森岡 浩(もりおか・ひろし)

姓氏研究家・野球史研究家。1961年高知市生まれ。土佐高校を経て早稲田大学政治経済学部卒。学生時代から独学で姓氏研究を始め、文献だけにとらわれない実証的な研究を続けている。一方、高校野球を中心とした野球史研究家としても著名で、知られざる地方球史の発掘・紹介につとめているほか、全国各地の有料施設で用いられる入場券の“半券”コレクターとしても活動している。

現在はNHK「日本人のおなまえっ!」解説レギュラーとして出演するほか、『名字の地図』『高校野球がまるごとわかる事典』(いずれも小社刊)、『名字の謎』(新潮社)、『日本名字家系大事典』(東京堂出版)など著書多数。

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梅雨に因む名字と地名

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2020/06/29 16:06

(photo by 林敢治/Adobe stock)

6月12日にはやばやと梅雨明けした沖縄と、梅雨のない北海道を除いて全国的に梅雨真っ盛り。そこで、梅雨に因む名字や地名をみてみよう。

梅雨に因む名字は、神戸などにある「栗花落」が有名だ。栗の花は5月下旬から6月にかけて咲き、6月中旬から下旬にかけて散る。ちょうどこの頃に梅雨の季節に入るため、「栗花落」と書いて「つゆいり」と読んだ。

この「つゆいり」という読み方はやがて短くなり、現在では「つゆり」と読む。そして「栗花落」の本家ではさらに短く「つゆ」であるという。この名字は古く、戦国時代の摂津国八部郡原野村(神戸市北区)の領主に栗花落氏がいたことが知られている。

では、梅雨に因む地名はないかと平凡社「日本歴史地名大系」で調べてみたら、地名ではないが、大阪の梅田駅近くの曽根崎に露天神社という神社がみつかった。

この「露天神社」という名前の由来には諸説あるようだが、その一つが、梅雨頃に祭事を行ったので「梅雨の天神」から名付けられたという。他には菅原道真の「露と散る涙に袖は朽ちにけり 都のことを思い出ずれば」という和歌に因むともいわれている。

江戸時代中期、堂島新地天満屋の遊女お初と、内本町平野屋の手代徳兵衛が天神の森で心中する事件があり、露天神社はこれを題材にした近松門左衛門の人形浄瑠璃「曽根崎心中」の舞台である。そのため、今ではヒロインお初に因んで「お初天神」として広く知られている。

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