日本で一番多い名字は佐藤で、2番目が鈴木といわれています。しかし、「本当?」と思っている人も多いのではないでしょうか。東京の周辺に住んでいる人は違和感がないでしょうが、関西の人だと、一二を争うのは山本と田中だろう、と思っています。
交通が便利になって、東京からだと、離島や山中を除いてほとんどの所に日帰りできるようになりました。でも、日本は狭いようで、まだ地域差は残っています。そんな日本を名字や地名からみつめ直してみたいと思っています。
2025/05/27 10:55
大師橋
羽田に行ったことがあるだろうか。多くの人が「ある」と答えるだろう。では、空港以外の「羽田」に行ったことがあるだろうか。近くに住んでいる人を除いて、今度は多くの人が「ない」というのではないだろうか。
実は筆者も電車やバスで素通りするだけで、空港以外の「羽田」には行ったことがなかった。そこで、先日川崎大師を訪れた際に、羽田まで歩いてみた。川崎大師から東に1キロほど歩くと、京急大師線の大師橋駅に着く。ここを左折して北上し、多摩川の河口に近い大師橋を渡ると羽田である。橋のたもとには「羽田の渡し」の碑があった。かつて、川崎大師参詣の際には、ここから舟で多摩川を渡っていた。
さて、「羽田」という地名は、まるで空港に因んでいるかのように見えるが、そんなことはなく江戸時代からある地名だ。もともとは六郷川(多摩川)の左岸に広がる漁師町で、戦国時代には北条氏の軍港でもあった。江戸時代になると新田開発が進み、江戸時代中期以降には農村地帯の羽田村と、漁業関係者の住む羽田猟師町に分かれていた。
地名の由来は、「もともと海老取川を挟んで2つの島に分かれており、海側から見るとだ土地の形が鳥の羽のように見える」「粘土質の低湿地を意味する埴田(はにだ)に因む」「開墾地を意味する墾田(はりた)に因む」「海鳥の羽が落ちる田だった」など諸説ある。
古い時代、粘土質の土のことを「はに」「はね」といった。古くからある地名は、先に音があり後から漢字をあてることが多い。都内には「赤いはね」に因む「赤羽」(北区)や「赤羽橋」(港区)いう地名がある。
東京には赤褐色で粘土質の関東ローム層が広がっており、「はねだ」もこうした粘土質の土地につくられた田に因む「はねだ」に、あとから「羽田」という漢字をあてたものではないだろうか。