人名・地名 おもしろ雑学

日本で一番多い名字は佐藤で、2番目が鈴木といわれています。しかし、「本当?」と思っている人も多いのではないでしょうか。東京の周辺に住んでいる人は違和感がないでしょうが、関西の人だと、一二を争うのは山本と田中だろう、と思っています。

交通が便利になって、東京からだと、離島や山中を除いてほとんどの所に日帰りできるようになりました。でも、日本は狭いようで、まだ地域差は残っています。そんな日本を名字や地名からみつめ直してみたいと思っています。

著者プロフィール

森岡 浩(もりおか・ひろし)

姓氏研究家・野球史研究家。1961年高知市生まれ。土佐高校を経て早稲田大学政治経済学部卒。学生時代から独学で姓氏研究を始め、文献だけにとらわれない実証的な研究を続けている。一方、高校野球を中心とした野球史研究家としても著名で、知られざる地方球史の発掘・紹介につとめているほか、全国各地の有料施設で用いられる入場券の“半券”コレクターとしても活動している。

現在はNHK「日本人のおなまえっ!」解説レギュラーとして出演するほか、『名字の地図』『高校野球がまるごとわかる事典』(いずれも小社刊)、『名字の謎』(新潮社)、『日本名字家系大事典』(東京堂出版)など著書多数。

●サイト(オフィス・モリオカ)
  → https://office-morioka.com/
●ツイッター
  → http://twitter.com/h_morioka
●facebookページ
  → https://www.facebook.com/officemorioka/
●Instagram
 → https://www.instagram.com/office_morioka/

 

高知龍馬空港

このエントリーをはてなブックマークに追加

2007/03/19 09:10

3月13日、全日空1603便が高知空港で着陸の際に車輪が出ず、胴体着陸を敢行した。着陸前に2時間かけて燃料を消費したことと、操縦していた機長の腕が良かったことから大事にいたらなかったが、一歩間違えば大惨事となるところだった。

ところで、このニュースでは事故のあった空港を「高知空港」とのみ報道していたところが多いが、実はこの空港に愛称がある。その名は「高知龍馬空港」、日本で唯一の人名を冠した空港である。「龍馬」とはいわずと知れた幕末の志士坂本龍馬。空港のある南国市と龍馬は直接の関係はないが、同空港が龍馬の出身地高知県の表玄関であるとともに、世界を視野に入れていた龍馬と、太平洋に向かって飛び立つ同空港のイメージが合致することが大きい。2003年11月15日、坂本龍馬の誕生日に日本初の人名を冠する空港として、正式に命名された。

外国では、フランスのシャルル・ドゴール国際空港や、アメリカのジョン・F・ケネデイ国際空港(ニューヨーク)など、政治家の名を冠した空港は多い。イギリスには、ジョン・レノン空港(リバプール)もある。

外国では、ベトナムのホーチミン市など、都市名にも政治家の名前をつけたりするが、日本では、公共交通施設に個人名をつけることは珍しい。鉄道の駅名でも、人名由来の地名が駅名となることはあっても、人名を直に由来するものは少ない。智頭急行の宮本武蔵駅や、JR西日本伯備線の方谷駅(江戸後期の陽明学者・山田方谷に由来する)くらいではないだろうか。

人名を冠することの難しさは、人物の評価が時代によって上下することや、万人が評価する人物は意外と少ない、ということにある。龍馬に続く2番目の人名を冠した空港はなかなか出そうにない。
このエントリーをはてなブックマークに追加

ページのトップへ